本朝徒然噺

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六義園&歌舞伎座三月大歌舞伎(夜の部)へ

2006年03月25日 | キモノでお出かけ
<お出かけ先>駒込・六義園&歌舞伎座(三月大歌舞伎 昼の部)
<着物>青地にしだれ桜と蝶の柄の小紋+白地の小紋羽織
ソメイヨシノが開花してまもない時期だったので、満開の桜の柄の着物にしました。
桜の着物は、開花前にはつぼみが混じった花の柄、開花後から満開前までは満開の花の柄と、時期を先取りするのがよいと言われています。
桜が満開になったら、花の邪魔をしないように桜の柄は避けるか、花びらだけを散らしたような柄にするのが粋だと言われています。
この日は、ソメイヨシノはまだ咲き始めでしたが、一足早く開花する「エドヒガン」が満開でした。そのため、六義園でエドヒガンのしだれ桜を見るときには長羽織を着て、花の邪魔にならないようにしました。歌舞伎座に着いたら長羽織を脱いで、華やさが出るようにしました。
<帯>白地に有職文様の織り名古屋帯
着物が総柄なので、帯は無地場の多い控えめのものにしました。
<帯揚げ>ピンクのちりめん
<帯締め>ピンクと水色の丸組み


東京・駒込の六義園にあるしだれ桜が満開になっていたので、見に行きました。
このしだれ桜は、ソメイヨシノではなく「エドヒガン」という種類です。ヒガンザクラなので、ソメイヨシノよりも一足早く見ごろを迎えます。
この日は、東京のソメイヨシノはまだ2~3分咲きというところでしたが、六義園のエドヒガンは満開になっていました。

六義園のしだれ桜

六義園を出た後、歌舞伎座へ向かいました。
十三世片岡仁左衛門追善興行(夜の部)を観るためです。

夜の部で上演される「追善狂言」は「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)」。
十三世の当たり役だった「猿曳き与次郎」を、十三世のご長男、我當丈が演じます。
与次郎の妹・遊女お俊を演じるのは、十三世のご次男、秀太郎丈。
お俊の恋人・井筒屋伝兵衛を演じるのは、松嶋屋(片岡家)と常々共演している坂田藤十郎丈。
そのほか、中村吉之丞丈や市川團蔵丈などベテランが揃って、舞台に華を添えます。

藤十郎丈演じる伝兵衛は、團蔵丈演じる官左衛門の企みにより、お俊の身請けのための金として贋金をつかまされてしまいます。
そのことを知って憤った伝兵衛は、官左衛門を殺してしまいます。

人を殺してしまった伝兵衛が、いずれ捕えられて罰を受けるのは必定。そのため、お俊と伝兵衛は心中を覚悟で逃げていくことを決めます。
廓を出て兄・与次郎と母が暮らす家へ身を寄せていたお俊のもとへ、伝兵衛がやってきます。

人殺しの伝兵衛にお俊を渡すわけにはいかないと思っていた与次郎ですが、二人が死まで覚悟して添い遂げようとしていることを知って心を打たれ、二人を送り出します。
旅立つ二人のために、与次郎は猿回しを披露しながら祝言をあげてやります。
二人に「逃げて生き延びてくれ」と言いつつも、生きて妹に会うことは二度とないであろうと覚悟している与次郎。しかし、その悲しみをかくして、二人のために精一杯の祝言をあげるのです。
猿を操りながら与次郎が語る浄瑠璃に、何ともいえない哀感がこもっていて、心を打たれました。


夜の部のほかの演目は「二人椀久(ににんわんきゅう)」と「水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)」。
「二人椀久」を踊るのは中村富十郎丈と尾上菊之助さん。大ベテランと若手のコンビでしたが、バランスのとれた素晴らしい踊りに仕上がっていて感動しました。

「水天宮~」は、明治維新直後の江戸を舞台に、貧しい士族の一家を描いた人情物語です。
貧しさに絶望して一時は一家心中まで図るのですが、周囲の人々の人情に助けられて命をとりとめます。さらに、日頃から信仰していた水天宮さまの御利益によって盲目の長女の目が見えるようになって、めでたしめでたしの幕切れとなります。
零落士族の筆屋幸兵衛を演じるのは松本幸四郎丈。そのほか、坂東彦三郎丈、河原崎権十郎丈、松本幸右衛門丈、中村歌六丈、大谷友右衛門丈、そして片岡秀太郎丈とベテラン勢がそろい、それぞれの持ち味が存分に発揮された舞台でした。
秀太郎丈は、1幕目の「近頃河原の達引」の遊女役とはがらりと変わって、裕福な士族の若妻を演じていました。秀太郎丈は、いつも幅広い役をこなしていて、本当にすごいなあ……と思います。
幸兵衛の娘を演じる中村壱太郎さんと中村米吉さんの熱演も印象的でした。

見ごたえのある演目ばかりだったのですが、ちょっと残念だったのは、1幕目の「近頃河原の達引」と大喜利の「水天宮利生深川」の内容が微妙にかぶっていたことです。
「近頃~」は、貧しい与次郎の家を舞台に盲目の母が登場するし、「水天宮~」もまた、貧しい幸兵衛の家を舞台に盲目の娘が登場します。
一方は悲しい結末、もう一方はハッピーエンドという違いこそあれ、設定が似すぎているためにお芝居の魅力を相殺してしまうおそれがあるのではないかな……と、ちょっと残念な気がしました。
2幕目の舞踊「二人椀久」も、「近頃~」に続いて遊女物だし、全体的にちょっとずつかぶっていた感じです。
逆に昼の部は、時代物ばかりが3本並んでいたし……。
昼夜の演目の配置を、もうちょっと考えたほうがよかったんじゃないかなあ……と思いました。



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