安倍・翼賛体制<本澤二郎の「日本の風景」(3652)
<保守合同・55年体制のなれの果て=宇都宮徳馬予言的中>
歴史も人生も、偶然の連鎖に違いないが、中には周到な策略を駆使して、野望が実現することもありうる。昨日、恩師・宇都宮徳馬さんが、時に口にした北村徳太郎(片山内閣運輸大臣・芦田内閣大蔵大臣)のことを調べていたら、1955年の保守合同に大反対した叫び声を、ある外国の研究者の論文から見つけ出すことが出来た。宇都宮さんの面倒で、読売入社を果たしたナベツネは、ボケてなければ詳しく記憶しているだろう。
政党政治家の存在が消滅して、政権に一本化される翼賛体制・独裁政治を、日本の軍国主義時代の戦前史で確認できるが、吉田茂リベラルの自由党と岸信介ら戦前の戦争勢力と一本化すると、再び戦後の日本においても、翼賛体制が復活するとして、断固として反対した宇都宮予言に脱帽である。
すでに7年以上も前から、日本に安倍・翼賛体制が確立していた。安倍にその地位をプレゼントした人物は、靖国参拝で有名になった小泉純一郎である。このことに言論人・学者・文化人は、しかと脳裏に叩き込んでもらいたい。外国の日本研究者にも警鐘を鳴らそうと思う。
戦争犯罪人が、米CIAの支援によって、難なく巣鴨刑務所から抜け出して、政権を担当する直前の保守合同から、今年で65年になる。岸の遺言通り、民意が反映しない小選挙区制でもって、孫である安倍晋三のもとで、見事開花させた。ワシントンの謀略でもあった。
欧米メディアのいう「STRONG NATIONALIST」(国粋主義者)は、まぎれもなく岸譲りである。戦闘的リベラリスト・宇都宮徳馬の慧眼に、改めて敬意を表したい。
言論と議会が、正常に機能しなくなっていることを、痛切に感じないわけにはいかない。戦前の戦争勢力の復権なのだ。権力の乱用は、いわば当たり前、東京五輪計画は、ナチス・ヒトラーの真似事であることも理解できるだろう。「次期戦闘機輸出計画も浮上している」と共同通信が本日配信した。
<改憲軍拡の自民党+公明党創価学会+維新+無力野党>
政治体制としての、悪しき翼賛体制において、民主主義が正常に機能するどころか、死滅するしかない。このことも、宇都宮の遺言である。
国家主義は強国論を前提としている。日本国憲法は、再び戦争をする政治体制を抑え込んだ絶対平和主義の憲法で、それゆえに国際社会では友好・協調主義を原理としているもので、この一線からはみ出そうとする改憲軍拡に反対する素晴らしい世界に冠たるものだ。
過去の自民党には、清和会や中曽根右翼に対抗するリベラル派閥の宏池会が君臨して、自民党の右翼化を阻止してきたのだが、悲しいかな日本は、とうの昔に岸時代に回帰、財閥のための暴政が具体化、それによって彼らは500兆円もの資金を貯めこんで、現在のコロナ危機に沈黙どころか、血税を懐に入れようと画策している。
中央銀行である日銀を株屋に仕立て上げ、年金基金さえも博打株に投入して、財閥株の上昇に悪用して恥じない。世界的な投資家で知られるジム・ロジャーズも「安倍と黒田が日本を破滅に追い込んでいる」と警鐘乱打している。
<「国民の生命財産守る」=口先だけ=コロナ禍が証明>
安倍の短い舌を操る官僚は、岸・商工官僚の後裔である経済産業省だ。財閥の代表機関・経団連会長もした人物の縁者・今井に頼っている。
長期政権下、頭角を現したという官房長官の菅義偉の頭を、目下、叩きのめしている安倍側近とは、この今井という。
「国民の生命財産を守る」という安倍の口癖は、単なる口先だけであることに、国民もようやく気付いてきた。
最近、急に東京のコロナ感染者が増加している。原因はPCR検査が増えているためで、それでも1日最大で500件に過ぎない。ということは、外国では1日数万件の検査に対して、日本は数百、数千件に過ぎないのである。検査をしないことで、感染者を低く抑えているわけだ。
日本人の感染者が少ない理由を、国民も気付き始めているが、いかにも遅すぎる。この間、肺炎で多くの日本人が亡くなっている。この中に感染者は相当いる。したがって、病院で感染する市民も少なくない。安倍が各戸に2枚のマスクを配布するという。もう4か月も経つというのに、市民はマスクのない生活を強いられている。これが翼賛体制下の日本の現状である。
民主政治を破壊する翼賛体制に参画しているのが、平和党から戦争党に変身した公明党創価学会である。維新の右翼政党も、外側から支援している。
安倍ナショナリストの口先に騙されてはならない。
<戦争犯罪を風化させる国家主義旋風>
政界をゆるがしたロッキード事件で、ロ社は中曽根―児玉ルートに20億円以上流し込んだが、当時の三木内閣の法務大臣・稲葉修は、これに蓋をかけて田中角栄5億円事件に絞って、中曽根を助けた。悪運の強すぎた中曽根は、そうして政権に就くことが出来た。
晩年、稲葉は大いに後悔したが、後の祭りだった。そんな稲葉とは、よく改憲問題で議論したものだが、彼も保守合同とその後の岸内閣誕生に抵抗した政治家だった。理由を聞くと、それは「戦争責任を風化させてしまう」というもので、これも今日において図星である。
岸・戦争内閣の下で、60年の日米安保改定に日本国民は、総動員体制で反対したが、米CIAの操り人形のような岸は、自衛隊を投入しようと図ったものの、時の防衛庁長官の赤城宗徳が反対した。岸は、右翼暴力団のドンで知られる児玉の配下のやくざを投入したりして強行した。
いま安倍は「60年安保改定は日米同盟の基盤だ」とはやし立てている。
戦争責任の風化に懸命である。しかし、日本国民はそれほどいい加減で、馬鹿ではない。
「コロナは天の啓示だ」と清和会OBの口癖である。日本国民は、この機会に宇都宮さんの「戦後の翼賛体制」という予言的中をしっかりと受け止めて、反撃に立ち上がるべきではないだろうか。
2020年4月12日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)
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