ウッドフォード氏と高山氏
オリンパスでは損失隠し問題を指摘した英国人社長を解任するという社会常識に反することが
2011年10月に生じた。その後、社長に就任した高山社長は、損失隠しが明確になったあとも
ウッドフォード氏を非難する発言を記者会見のたびに続けた。この高山さんの姿勢は人間の節度として
疑問を感じざるを得ないものだった。なぜなら自身は数々の不正な取締役決議に関与。
ウッドフォードが問題を指摘すると解任に動き、その後、損失隠しが表面化しても
ウッドフォード批判を止めなかった。2012年4月 ようやく高山氏が退任。
高山氏は少なくとも損失隠しを自ら発表したあとは、ウッドフォード批判を慎むべきであったし
一日でも早く辞めるべきだった。
この問題をめぐっては解任されたウッドフォード氏が損害賠償の訴訟をイギリスで起こしていたが、
2012年5月に和解がウッドフォード氏から発表された(約1000万ポンド 12億円と推定)。
損失解消のスキーム
含み損を抱えた商品を外部のファンド(ケイマン)に「高い値段」で売却する<飛ばし>
ファンドが発行する債券と簿価で等価交換というもの
国内3社の買収730億円(06-08年):水増し価格で買収。この水増し分。
135億円に達する運転資金を貸し付け金として投入 7割が回収不能か。
そして2008年2月英医療機器メーカー
ジャイラス買収にからみ助言会社に690億円の手数料(取得費用などとして630億円:実際は損失穴埋めに使用)
数字がいろいろなのは換算レートの違いのためか
2008年9月 ジャイラスが助言会社に報酬として優先株を発行 1億7698万ドル(190億円)
2008年10月 オリンパス役員会はこれを5億3000万―5億9000万ドルで買い戻す決議をしている
2010年3月末に オリンパスが6億2000万ドル(660億円)で買い取り
この国内3社の水増し分とジャイラス優先株代が 損失の穴埋めに利用されたとされる。
歴代取締役・監査役・監査法人の責任
オリンパスの事件ではトップの独走を見過ごした歴代取締役、監査役の責任も指摘された。
誰が悪い人なのか ということだが。
買収先企業の「のれん代」(買収価格と純資産の差額)の架空計上では、企業価値算定で公認会計士が協力した疑い:不正経理に
公認会計士が加担した疑いもある。
監査法人については
大変興味深いのは 当時の監査法人のあずさ監査法人とのやり取りだ。日経の2012年1月30日付け記事によれば
あずさは繰り返し、疑問点への調査を試みている。そして最後はジャイラス買収に伴う助言会社への報酬で懸念を指摘
したところで、監査契約の更新を「拒否」されたところで、ジャイラス優先株買戻し決議の取り消しを迫っている。
監査役が動かないなか、あずさは頑張ったようにみえる。そして2010年3月期から新日本監査法人に監査法人が変更されている。
金融庁では事件後 不正会計をふせぐため監査基準を改正。14年3月期から適用される新基準では
監査法人が交代する際に問題点を十分引き継ぐことや、財務状況に不正が疑われる場合、抜き打ちで
監査を実施すること などを盛り込んだ。このように適正に業務を執行しない場合は
業務改善命令などの対象になるとのこと。
公認会計士協会では2013年7月3日に両監査法人と担当会計士に対して「故意に不正を見逃したり重大な過失を犯した
ケースには該当しない」として懲戒処分をしない と発表している。
内部統制がすくなくともオリンパスでは機能していなかった。どこに問題があったのかの検証が今後進められる必要がある。
自己資本比率の低下と資本提携先問題
過去の損失隠しの処理のため特別損失が発生し、自己資本比率が低下した。そのために資本提携先を探る
以下の経過では オリンパス側に全く危機感がないことが透けてみえる。これだけの大きな事件を起こした
ことへの反省も全く見られないのは不思議だ。おそらく内視鏡事業が好調だということが背景にあるのだろう。
提携先についても なお急がないスタンスが見える。思えば2012年1月に東証の自主規制法人が、オリンパスの
上場維持を決めている(1月20日)。以来、オリンパス経営陣は、自分たちが重大な犯罪を犯したことへの
反省の気持ちを忘れるようになったのではないだろうか。
2012年3月期 営業利益前期比7%減の355億円 特別損失276億円 最終損益489億円の赤字(前期は38億円の黒字)
売上は0.2%増の8485億円
期末自己資本比率4.6%に低下(前期末は11%)
2012年4月20日 取締役11人が退任 笹宏行社長らの新経営陣発足
2012年5月下旬 資本提携観測
ウッドフォード氏との和解報道
2012年6月8日 中期経営計画発表 資本増強の具体策は示さない点では失望売り 人員削減 拠点の統廃合など
抜本的リストラに踏みきる点では評価(期待感)
2014年3月期末までに全世界でG従業員の約7%にあたる約2700人を削減
提携先候補は以下の4社
ソニー(デジカメの部品供給)
パナソニック(デジタル一眼カメラの規格を共同策定)
富士フィルムHD(内視鏡で競合)内視鏡で7割のオリンパスと合わせた世界シェアは9割
テルモ(すでに2005年に提携 2%強を相互保有)・・・デジカメ事業をもたない
内視鏡などの医療分野とデジカメ中心の映像事業で相乗効果(2期連続赤字のデジカメ再建急ぐ)を出せるところと組みたい 10%まで高めるには500億円程度(発行済みの1割ほどを保有することに 日本生命5%を超えて筆頭株主になる)。
2012年6月下旬 提携先 ソニーに絞るものの協業の具体策で難航
ソニーによる役員派遣 医療機器分野での共同事業化に経営の自主性望む社内の反発
6月末 自己資本比率は2.2%まで低下
2012年7月26日 テルモがオリンパスに共同持ち株会社法資金による経営統合を提案したと公表
2012年8月24日 携帯電話などを手掛ける子会社のITX(12年3月期 売上高2294億円 営業利益53億円)を投資ファンド(日本産業パートナーズ)に530億円で売却と発表 内視鏡やデジカメ等以外の非中核事業からの撤退の一環 9月28日付け譲渡
この結果 オリンパスは2013年3月期 特別利益は見込めるものの 大幅な減収が見込まれる
2012年9月 資本提携先として ソニーが確定
2012年9月28日 両者の取締役会で資本業務提携が決定(ソニーは役員を一人派遣 13年2月末までに500億円出資 11.46%)
業務提携の柱 新型内視鏡開発会社(外科用内視鏡に限定)を12月中にソニー主導で設立(ソニーが51%出資 社長はソニーから)
デジカメ再建では 部品調達 物流の共同化 新製品開発協力など(実現は相互に部材の供給 実質的内容は先送り)
→ 肝心のデジカメ再建策で 有効な具体策でず 信頼関係がないのかも
会社法改正論議への影響
オリンパスの事件だけではないが、会社絡みの不祥事が続いたことで取締役会の在り方についての議論が盛んになった。
実は会社法の改正案の議論がまさに進展していたからである。
焦点である社外取締役の義務化(監査役会設置会社で会社法上の大会社か有価証券報告書提出義務のある企業に義務付けを検討)は、経済界の猛烈な反対によって、2012年7月18日の要綱原案(要綱は8月1日発表)では、義務化を見送り、ただし置かない場合は理由の開示をもとめることとされた。
オリンパスやエンロンでは社外取締役は置かれていたが、役割を果たせなかったという言い方がある。オリンパスでは3人もの
社外取締役がいたのに何の役にも立たなかった。まちがいなく オリンパスの社外取締役がチェックを果たせなかったことは 社外取締役不要論の証明となったのである。
他方、監査・監督委員機制度の導入(選択制)
親会社の株主が子会社の取締役の責任を追及できる「多重代表訴訟制度」の導入(条件は厳しい) は残った。
代表訴訟制度:株主が会社に変わって役員を提訴し、責任を追及する制度 提訴のためにはまず会社に役員への責任の追及を請求
会社では監査役が役員の責任を調査 60日以内に役員の責任を追及しない場合 株主は役員を提訴できる
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