イスラム金融 Islamic Finance
イズラミックファイナンス（発音）
イスラム教の戒律に従った金融の仕組み。急速な成長、イスラム人口から考えられる潜在的な市場の大きさ、社会的責任投資と似ていることなどから関心を集めた。
急速な成長がみられる
5000億ドル規模とも（2007年はじめ） 年率15％の成長
世界の潜在市場規模４兆ドル（現在は１兆ドル程度）S&P 2007年末の推定
ペルシャ湾岸の富裕者の総資産額は１兆2000億ドル
イスラム教徒はドル、ユーロなど基軸通貨を潤沢に保有している
世界最初の民間イスラム金融機関はドバイ・イスラム銀行 1975年（2007年現在では60け国300の金融機関 銀行部門だけで資産規模は3000億ドル超える）
1990年代後半 英HSBC 米シティなどがイスラム金融ビジネスを本格化
専業か兼業（ウインドウ方式）か
将来的にはさらに拡大が見込まれる
イスラム人口は現在12億人以上 2030年代には世界の３分の１とも
先進国にすでに存在する市場を開発する意味もある
英国のイスラム教徒人口200万人
米国のイスラム教徒人口500万人
戒律を厳格に考えるとイスラム金融以外は利用したくないイスラム教徒
が少なくない
基本的な考え方
リバー（利息の禁止） 社会的弱者からの搾取
不労所得
貸し手もリスクを負担する方が公平
戒律で禁じられた豚肉やアルコールを扱う企業への投資などを回避
シャリーア（イスラム法）に適合する取引：イスラム法学者による承認＝イスラム法学者のアドバイザリーボードを設置して確認を求める手続きがとられる
株式投資においても
シャリア適格銘柄のみで構成される株価指数が1990年代以降開発される
ダウジョーンズイスラム市場指数
FTSEシャリアグローバル株価指数
S&Pシャリア指数
この考え方は社会的責任投資の考え方に近い
戒律を守るための仕掛け
イスラム金融の特徴：売買取引、投資の形をとることで、不労所得ではなく、リスク負担を負う形にする 対象となる商品、事業の影響を受けやすく、実体経済との関連性が強い。実体経済のパフォーマンスに依存しているシステムだといえる。
１．ムラーバハmurabaha：銀行が商品を購入 利幅上乗せして転売 顧客は銀行から割賦払いで購入する契約を結ぶ。銀行が商品自体もとりあつかうことができる。住宅ローンの場合は賃貸方式をとるができる。スクーク（イスラム債）に欠かせない基本スキーム。商品取引などを介在 ムラバハ イステイスナ、イジャラなど
イステイスナ 取引時点で財は存在しない場合
イジャラijara リース取引とほぼ同様
イスラム金融に投資する仕組み：スクーク（イスラム債）について
1990年に初めて発行
2001年9月 バー―レーン、イスラム式国債スクークを発行
教徒でも投資できるように利息の代わりに配当や分配金を還元する
投資収益をえる 通常は利回りを明記しない
2001年8億ドル 2006年250億ドル超え 2007年500億ドル（6兆円規模 見込み）
2006年241億ドル 2007年500億ドル前後（見込み） 推定470億ドル
背景にあるインフラ整備重要 今後5年間で(07-11)で中東で5000億ドル
アジアで1兆ドル
現在は発行期間5年以下に偏る → 発行期間の多様化、流通市場の整備などの課題がある
２．ムダーラバmudaraba：預金を出資と理解することで 当事者が手にする利益が対象事業の成否に依存している。資金に余裕のある者が事業にたけているものに資金ヲゆだね、その事業から得られた利益を分け合うスキーム。タカーフル（イスラム型保険）の基本スキーム。投資・損益分配 ムダーラバ ムシャラカなど
ムシャラカmusharaka 共同出資（住宅ローンに使う）
イスラム保険（タカ-フル）
イスラムファンド
教典に触れる事業を避けて投資する 年率10%以上のスピードで増えている
90年代前半に現れる イスラム株価指数での運用は1990年代後半
03年 50億ドル超え
眠っている資金を活用するとの観点
中東の資金を活用するうえで整備が望ましいとの現実的判断も働く。
イスラム金融を教徒以外が使うことに制約はない。
参考：長岡慎介「実体経済のパフォーマンスに依拠するイスラーム金融」『金融財政事情』2010年1月4日号, pp.99-103.
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