Entrance for Studies in Finance

任天堂とSCE 

 任天堂は2002年ごろ SCEのプレイステーションにゲーム市場の主導権を一時奪われた。しかしその後は任天堂がSCEに対してヒットを連発。ゲーム事業での優位を確保している。
 2004年に発売されたDSでは、知能ゲーム(ex.どうぶつの森のシリーズやDSトレーニングシリーズ)などでゲームの顧客層を大人に拡大したと評価される。2006年12月に発売されたWiiは、リモコンとコントローラーに内蔵されたプレーヤーの動きを検知する三軸加速度センサーが、体感ゲームを可能にして爆発的なブームを引き起こした。
 ソニーがPS3で巨額の開発費を投じて高性能半導体の自社開発にこだわったのに対して、任天堂を支えるのは発想と内外部品メーカーの技術と連携。
 ソニーのPS3は高機能とされる。しかし競合機との価格競争のなかで、開発費用を考えると赤字販売を強いられ高機能が足かせになったまま。またソフト開発費用が高くなったため、ソフト会社でゲームソフトの開発が進まず任天堂と大きな差がつくようになった。確かに現在でもソニーのPS3のソフトは若い男性客向けのものが主流で広がりがない。
 結果としてSCEはとくに2007年前期に巨額の赤字を計上した。発売開始から半年でWiiの国内販売は300万台を超えたのにPS3はその3分の1にとどまった。これに対して行われてきたのは、ソニーは技術屋の発想で内製にこだわりすぎているという批判。しかしそうなのだろうか。 
 高機能の半導体にこだわったのはゲーム機に、DVDのBDプレイヤーとしての機能や、配信サービスを受ける機能など、多様な用途を想定したことに一因がある。そのため社内には製造コストが低下するまで一時的に赤字販売をすることを容認する議論もあったようだ(その後、製造コストの低下で赤字は縮小したが販売が目標に届かないため問題が残っている。なおソニーの事業部門収益は見通しと実績が全く乖離している。したがって必ず実績値で議論する必要がある。ゲーム部門は2006年3月期に黒字幅を縮小。2007年3月期に記録的な赤字を出す。その後、赤字は縮小するが2009年3月期まで3期連続でソニー全体の収益の重しになっている。2009年3月期もなお黒字転換できていない。事業会社として、本来はゲーム部門からの撤退を考えるべき段階ではないか)。
 ソニーのゲーム部門は確かに半導体内製にも問題はあるが、それ以上にソニー全体の戦略(ゲーム機を使った配信による収益など)などに振り回され、ゲーム機としての楽しさの追及といった機械本来の使用目的がどこかに消えてしまっていることに問題があるのではないか。ゲーム部門だけの問題ではなく、ひろくエンターメント事業(DVD事業など)にゲーム部門を利用することが先行して、肝心のゲームを楽しむ初心が失われていることに問題があるのではないか。
 任天堂は、ゲーム機の価格を下げない。一定期間経過してもゲームソフト廉価版出さない(値下げで需要喚起しない)などの価格ポリシーでも、高利益の確保にも成功し、多額のキャッシュを蓄えている。

携帯型ニンテンド-DS 2004年11月-12月発売 知能ゲームでhit
据え置き機Wii 2008年11月-12月 Wiiを日米で発売。体感ゲームで先行。
DS Lite 2006年3月発売。
新型DSi 発売開始2008年11月1日(海外市場では2009年発売)

ソニーコンピュータエンタテインメント(SCE)
携帯型PSP 2004年12月発売 専用ディスク
据え置き機PS3 2006年11月日米で発売
PSP 3000 2008年10月16日発売開始
携帯型PSP go 2009秋発売 内蔵メモリーにインターネット経由で取り込むタイプ

ほかにマイクロソフトのXbox360(2005年12月にPS3やWiiに先行して発売開始。しかし2006年11月にPS3、そして2006年11月にWiiが登場している。国際的にはともかく日本国内ではWiiやPS3に比べてXboxは人気が全くない。)この場合、マイクロソフト社はゲーム機を音楽や動画配信サービスのテコにするというソニーと似通った戦略をたてた。しかしそれは対任天堂では、ゲームのおもしろさを中心に戦略を立てた任天堂に敗れた(マイクロソフトはソニーと対抗して東芝のHD-DVD企画陣営に加わった。ただ東芝がHD-DVD事業から撤退することに伴い2008年2月にHD-DVD対応機器の生産中止を発表している)。その敗戦の構図は、任天堂vsSCEでSCEが敗れた構図と極めて似ている。ゲーム部門がグループ内他社の道具として使われる関係にあることは、ゲーム部門自体の戦略と発展を制約するのではないか。また、対アップルでは、携帯プレーヤーで圧倒的なsシェアを確保したアップル側が、市場標準のOSウインドウズ対応ソフトを次々に開発する捨て身の作戦ででてくる中で、なお有効な戦略になっていないようだ。

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