2009年4月20日締め切りの日興コーデイアル買収の2次入札で三井住友FGがもっとも高額を提示。4月24日に優先交渉権。4月28日に米シティとの間で基本合意。2009年5月1日合意が公表された。合意内容は、日興コーディアル証券(09年3月末の預り資産合計は23兆5000億円)などを5450億円で米シティグループから買収するというもの。この結果、三大証券(野村、日興、大和)の一角がメガバンクの傘下に入る。三井住友FGの証券ビジネスは銀行系証券で首位に立つことになった。
背景としての三菱UFJとみずほの動向
三井住友にはこの決断をしなければならない事情があった。
すでに三菱UFJ証券が2009年3月に米モルガンスタンレー日本法人との統合を決めている。
三菱UFJFGは08年秋に米モルガンスタンレーシ90億ドルを出資。両社は業務提携を深めつつあった。
普通株出資から優先株出資に変更されたモルガンへの出資
なおこの三菱UFJのモルガンへの出資は2008年9月22日の基本合意では普通株。しかしモルガン株の下落が続いたため、9月29日に3分の2を優先株に変更。ところがモルガン株の急落が続いたことから10月に入ってから急遽、全株優先株に条件変更されて10月13日に実行された。これは出資をやめればモルガンの信用不安が広がる。優先株が市場での価格下落の影響をうけにくい、今後増資があっても希薄化しにくいなどの判断による。
またもともと、みずほFGは、09年5月にみずほ証券と新光証券を合併を予定していた。三井住友FGとしても事業再編を進める必要があった。では他方でシティから日興コーデイアルを手放したのはなぜか。
シティは証券仲介業を非中核として売却へ
コーデイアル買収(シティによる売却宣言は1月16日)には、みずほ、三菱UFJも手を挙げた。
もともと日興Gは1998年に資本危機から米トラベラーズ(現シティ)と資本提携。その後06年の不正会計発覚後、07年に米シティの子会社(08年1月に完全子会社)になった。しかし親会社シティの経営が急速に悪化し資本が不足したことから、2009年に入り売却が決定された。
米シティは、事業を中核事業(預金 融資 投資銀行事業など)のシティコープと、非中核事業(証券仲介業など)のシティHとに分割。非中核部門の売却リストラを進めることになった。すでに2009年1月13日にはスミスバーニー証券のモルガンスタンレーへの売却を発表していた。
米シティは対日ビジネスについても、銀行やカードなど中核事業とされるシティバンク銀行(国際銀行業務のほか富裕層向けプライベートバンク事業など)、シティカードジャパン、投資銀行業の日興シティG証券以外をリストラの対象とする方針。
しかし米シティは、日本事業について今後、中核事業にもリストラ圧力をかけるとの観測が強い。というのは日本ビジネスで、収益を上げている事業は少ないと見られているからだ。シティが今後日本の金融界に留まれるかは疑問が多い。
今後は三菱住友と大和との調整か
なお今回の合意では、三井住友銀行が、日興コーディアル証券と、ホールセールの日興シティグループ証券の株式・債券引き受け業務(の人員)などの一部事業、関係会社などを取得する。
三井住友FGは大和証券と1999年から大和証券SMBCで法人業務を展開している(三井住友が4割 大和が6割を出資)。個人向けにはSMBCフレンド証券を傘下にしている。
これらの関係において、当然予測されるのは大和証券と三井住友銀行がどのような関係を今後再構築するか。その変化の方向によっては、証券界はさらなる再編を遂げるのではないか。関心が高まる由縁である。
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
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