昔の銀塩写真のデジタル化画像シリーズ第5弾です。
貯めていた小遣いとお年玉を元手に親からの特別補助金(?)を合わせて念願の天体望遠鏡を購入。
入手したのはこういうシロモノなのでした。
『月刊 天文ガイド』の広告ページより抜粋
当時、おそらく一番売れていたメーカーの中堅クラスのモデルで、ウチから近い某デパートで買いました。
ちなみに、上の広告写真で紹介されているのは別売オプションがテンコ盛りのシステムなんですけど、
入手したのは木製三脚付き赤道儀架台(天体追尾モーター無し)+屈折鏡筒1本だけのシンプルなものでした。
標準添付オプションは接眼レンズ3本と天頂プリズムに太陽投影板やバランスウエイト軸用カメラ取付金具など、
割と充実していたように思います。
まずは眼視観望ということで、月のクレーターを見ては感動し、土星の環を見ては歓喜し、
夜が来るのが毎日楽しみで仕方ないって感じの日々を送ってました。
夏休みになってからは観望だけでは飽き足らなくなり、赤道儀にカメラを取り付けて星座を撮ってみたいと
考え始めます。赤道儀式の架台を使うと、観察している星が地球の自転に伴う日周運動でズレていっても
一つの軸(極軸と言います)回りの回転だけで引き戻すことができるんですが、その戻し操作は架台に付いてる
微動ハンドルを手で回すことで行います。そんな手動による微動操作を望遠鏡で星を覗きながら連続的に行う
のと同時に、架台に載せたカメラで長時間露出してやれば、星が流れずに点像となって写せるんです。
つまり、望遠鏡を星の追尾のためのガイド役として使い、その追尾操作は細かな手作業で行うということです。
これを「手動ガイド撮影」と呼びます。上手く撮れればブレのない写真が得られるのはもちろん、
長時間の露出で微弱光がフィルムに蓄積され、暗くて淡い天体まで写せるというメリットがあります。
その具体的なやり方は後述します。
初心者レベルの中坊にはハードルが高い撮影方法ですが、新学期が近づく時期にチャレンジしてみたのでした。
数ショットほど撮った中で、最もマシだったのがコレです。
【こと座付近】
キヤノンEF+FD50mmF1.4 S.S.C.(Ⅱ),富士ネオパンSSS(ASA/ISO200),絞りF4,露出10分,
口径6.8cm屈折赤道儀にて手動ガイド,都内某所にて
写野はこんな範囲でした。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション
中央やや上側に写っている明るい星がこと座の1等星ベガ(七夕の織姫星)で、その左下側に星座線で繋いで
表現される特徴的な平行四辺形が確認できます。残念ながら構図的にみて失敗作って感じが否めませんが、
星が見事な点像に写ってくれたことが嬉しくてたまりませんでした。
なお、パッと見だと無数の星が写っているようなレベルには程遠いんですけど、原版をよく調べてみたら
10等級近くの暗い星まで写っていることが分かりました。絞りを1段開けてF2.8にしたらどうなったか
気になりますが、当時は東京郊外でも既に光害が酷かったので、バックが明るく写り過ぎて星が埋もれ、
コントラストが悪くなって逆に暗い星が確認し難くなった可能性も考えられます。
以下、この撮影で実施した手動ガイド撮影の具体的なやり方についてまとめておきましょう。
かなりマニアックな長話になりますが、興味がありましたらお読みください。
以前の記事で紹介した藤井旭著『天体写真の写し方』のとあるページにこんなイラストが載ってます。
絵の下の説明にあるとおり、手動ガイド撮影における標準的な機材と撮影スタイルを示したものになります。
このイラストでは望遠鏡の鏡筒の上にカメラを取り付けてますが、自分の機材ではバランスウエイトの棒の
部分にカメラが取り付けられるようになっており、そこが少し違うものの概ね似たような感じでした。
夏でしたので、暖かい服装は不要でしたが・・・
さて、この撮影で必須アイテムとなる赤道儀架台を設置する上で最初に行う重要な作業は「極軸合わせ」です。
これは地球の自転軸と赤道儀の一方の回転可動軸を高度・方位とも平行に合わせる作業になります。
言い換えると、極軸を「天の北極」に正しく向けるセッティングが重要となります。
現在販売中の赤道儀は「極軸望遠鏡」という小型望遠鏡が極軸を貫くような形で組み込まれた製品が多く、
それを使って北極星などを視野に捉えて正確な極軸合わせができたりしますが、自分が最初に手にした
赤道儀にはそんなものは無かったんで、大きめの透明プラスチック製分度器を使って極軸の傾斜角を
測りながら北極星の高度(≒北緯)となるように調整し、方位は望遠鏡の筒先を照準代わりにして三脚ごと
動かしながら北極星に向くように合わせてました。今考えると随分いい加減だったなぁーって思いますが、
標準レンズで10分程度までの露出であれば、そんな大雑把な極軸合わせでも大丈夫だったようです。
次に、鏡筒とカメラがなるべく同一方向に向くようカメラ側の構図合わせをしました。
その際、いきなり星を使って合わせようとすると、作業中に日周運動で星がどんどん動いてしまうので、
なるべく遠くに見える街灯などを使って合わせてました。ウエイト軸にカメラを取り付けるタイプだと、
カメラのファインダーが覗き難くてかなり苦労した記憶があります。
その後は撮影したい星座の中心に鏡筒を向ければ、カメラの写野に目的の星座が導入されるわけです。
実写例として上に紹介した【こと座付近】の撮影では、明るいベガを望遠鏡の視野の中央に導入し、
撮影したんだと思われますが、カメラの向きが少しズレていて構図に関わるしくじりを犯していたようです。
で、実際の撮影時には、ベガを望遠鏡の視野の中心に捉えたら極軸回りの微動ハンドルを少しずつ回して
追尾操作を行いながら、シャッターダイヤルをB(バルブ)にセットしていたカメラのシャッターを、
ケーブルレリーズを使って開くことで露出を開始。露出中も追尾操作を続行し、望遠鏡を覗いている目とは
反対の目で時計をチラ見して予定の露出時間が来たらレリーズのストッパーを解除してシャッターを閉じる
という一連の作業で撮影終了となります。
ところで、望遠鏡を覗きながら追尾操作を行う際、何らかの基準点を頼りに星がそこから逃げないように
操作できれば精度的に好都合なため、『天体写真の写し方』には接眼レンズ(アイピースとも言う)に
市販の接着剤を使って十字線を張る方法が紹介されてました。
また、作製した十字線を見やすくするため、望遠鏡の筒先に豆電球をセットして、視野内を仄かに照らす
「明視野照明法」と光源となる簡易的なアイテムの作り方についての解説も載ってました。
実はこれらのノウハウをそのまま真似した事前準備を済ませた上で撮影に臨んだのでした。
さらに同書にはガイドの良否判定についての説明まであったりして、
本当に至れり尽くせりで、この本には物凄くお世話になったなぁーって思います。
昭和レトロな上にオタク丸出しの記事をご覧いただき恐れ入ります🙇
誕生星座がさそり座なんですけど、一途なのはそのせいかも?
ネガフィルム処分のついでに始めたシリーズですが、梅雨入りしてしまって富士山撮影も☆撮りも
ままならない状況だと、うだつの上がらぬ老害者の自伝的記事がどんどん増殖していきそうです😃