Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
 8/10宵 スピカ食(20:25頃潜入@東京)

【アーカイブ】皆既月食で「地球の影」の撮影に初挑戦した日(1982/12/30)

2024-07-16 20:23:56 | タイムマシンにお願い

昔の銀塩写真のデジタル化画像シリーズの第16弾です。

1982年は皆既月食の当たり年で、全世界で3回起こるうちの2回(1月と12月)が国内で観測可能でした。
1/10未明の皆既月食は受験勉強に集中していたことで、完全スルーということになってしまいましたが、
大学1年生となって迎えた12/30宵の皆既月食は万全な準備をして撮影に臨んだのでした。
個人的に皆既月食の撮影は2度目で、前回は固定撮影+多重露出で月食の連続写真を撮りましたが、
以前とは違ってモータードライブ付きの赤道儀を手にしていたので、電動追尾しながら前半の部分食~
皆既中~後半の部分食の月を多重露出で1コマに収める「地球の影」の撮影に挑戦したのでした。
で、得られた画像がコレです。


【皆既月食(地球の影)】
 キヤノンEF+タカハシ6.5cmセミアポクロマート屈折(TS-65P),サクラカラー400(ASA/ISO400),
 F7.7,露出1/500秒~30秒,タカハシ90S赤道儀使用(電動追尾),トリミングあり,都内某所にて

残念ながら真ん中の皆既中の赤い月がブレてしまったのでした。写真店から上がってきたプリントを見て
しばらく立ち直れそうにないほど凹んだのを憶えてます。

皆既中の月は普通なら見難くなるようなことはなく、太陽光のうち地球大気を通過した長波長の赤い光が
屈折して月面に届くため綺麗な赤銅色に見えるんですが、この時は快晴だったのにビックリするほど暗く、
肉眼では薄らとしか見えませんでした。そのため機転を利かせて使用カメラの最長シャッター速度である
30秒にして撮ったのですが、それが裏目に出たようです。ブレの原因は①風の影響、②機材への体の接触、
③フィルムの弛み/ずれ などが考えられますが特定できませんでした。いずれにせよ通常なら数秒程度の
露出で済むはずのところを数十秒まで延ばさざるを得なかったのが元凶ということでしょう。

ちなみに皆既中の月が極端に暗かった理由は、同年4月に起こったメキシコのエル・チチョン山の大噴火で
高層大気中に撒き散らされた大量のエアロゾルの遮光効果によるものと推測されました。

ところで、この撮影時に用いた屈折望遠鏡はアルバイトの稼ぎで同年の秋に新調した機材なのでした。
入手の経緯は某天文雑誌に掲載されたこんな広告がきっかけでした。

[●鏡筒]のリストにあるP型ってヤツで、1台しかなかったため、市を開催する営業所へ朝早く行って並び、
運良くGetできた記憶があります。中古品ということで筒に若干の擦り傷がありましたが、レンズの状態は
問題無さそうでした。赤道儀に搭載するための鏡筒バンドもあったので合わせて購入。
口径65mm/焦点距離500mmの鏡筒でF7.7ですので、既に使ってきていた反射望遠鏡と比べ、口径も焦点距離も
ちょうど半分というスペックなのでした。カメラの取付も手元にあるアダプターがそのまま使用可能で、
画角的に「地球の影」を狙うのに適した筒だったのに、本番でしくじって本当に悔しい思いをしました。

なお、これ以降は撮影用鏡筒としては使用せず、専ら赤道儀の追尾エラー監視/補正用のガイド望遠鏡として
13年以上に渡って利用することになるのでした。