野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサ(箱根シリーズ 026)

2020年07月02日 10時43分21秒 | 

「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサだが、箱根でも生えているところをみることができる。これからしばらく紹介するのは箱根で生えている花ではなく箱根湿性花園で大事に育てている花たちである。ぼくがコマクサをみたのは南アルプスの仙丈ヶ岳だったと思う。さすがに感動した。

(2020-06 神奈川県 箱根) 

コマクサ

「高山植物の女王」と称される、小さくも美しい高山植物。漢字では駒草。駒とは馬のことで、花が細く馬のようだ、ということで名付けられた。だが、蕾のほうが馬面に見える。ちょっと変わった構造をした花だが、ケシ科である。

コマクサは、寒さ、強風、乾燥など、環境の厳しい高山帯でも特に厳しく、ほかの高山植物が生えることができないような稜線の砂礫地を好んで生える、孤高の花である。

この環境に耐えられるよう、地上部は小さくても、地下に茎や根を長く伸ばしている。草丈10㎝程度の小さなコマクサからは想像がつかないが、地下では1m以上に伸びていることもあるようだ。

コマクサが砂礫地の斜面を好むには理由がある。砂礫地の斜面は雪や氷、雨、風によって地表がよく動き、植物にとって非常に住みにくい環境。有機物は少なく、雨水はすぐに流れ、蒸発し乾燥しやすく、紫外線も風も強く、冬には厳寒にさらされる。こんな厳しい環境なのだが、背が低いコマクサにとってよいことがひとつある。ほかの植物が生えることができないので、植物との競争が少なく、太陽光線をたっぷり受けることができることだ。

独特な草色をした葉は、細かく分かれている。高山帯には霧が多い。細かく切れた葉には霧が付きやすく、高山帯で貴重な水を得るひとつのチャンスになっているようだ。根が広がっているということは、たくさんの水分を得られるということ。こうして、地上部が小さいコマクサも、いろいろな形で乾燥に対応している。

コマクサの根は、不安定な砂礫地の地下に長く広がっている。このため、コマクサの地上部の近くの砂礫地を踏むだけで、コマクサの長い地下部分が切れ、枯れてしまいかねない。野生のコマクサにはむやみに近寄らないようにしよう。

ロシアのカムチャッカ半島でもコマクサを見た。カムチャッカ半島は火山の半島だ。火山噴火による砂礫地が多く、そんな火山の山麓に見渡す限り、コマクサとリシリヒナゲシの仲間のチシマヒナゲシだけが生えていた。このような荒涼とした場所がコマクサの本来の生育地ではないだろうか。日本の高山帯は、コマクサにはちょっと狭すぎるのかもしれない。

コマクサの花色は淡い紅色。この微妙で優しい色がすばらしい。北海道産のコマクサはやや花色が濃い傾向。花色が妙に赤い園芸品種のコマクサをたくさん植えている山もあるが、やはりコマクサは野生のものが一番。

 


装飾花が小鳥のざわめきを思わせるヤマアジサイ「坊ヶ鶴の華」(アジサイシリーズ 20-26)

2020年07月02日 10時13分31秒 | 

八重の丸弁の装飾花が小鳥のざわめきを思わせるヤマアジサイ「坊ヶ鶴の華」。青紫のガク咲きで、テマリ咲きのように咲いている。大分県の九重連山産。

(2020-06 神奈川県 箱根) 

 

坊ヶ鶴の華 (ヤマアジサイ)
大分県の九重連山産のヤマアジサイ。
青紫色の八重ガク咲きで、装飾花は細長の丸弁。
株に勢いがあると、装飾花の多い半テマリ咲きに近い咲き方をします。

ヤマアジサイ・シリーズ

「日高新錦山」(アジサイシリーズ 20-01)
「日向の青てまり」(アジサイシリーズ 20-02)
「瀬戸の月」(アジサイシリーズ 20-03)
「クレナイ」(アジサイシリーズ 20-04)
「天龍碧」(アジサイシリーズ 20-05)
「楊貴妃」(アジサイシリーズ 20-06)
「別子手鞠」(アジサイシリーズ 20-07)
「久住小でまり」(アジサイシリーズ 20-08)
「九重の花吹雪」(アジサイシリーズ 20-09)
「土佐涼風」(アジサイシリーズ 20-10)
「小甘茶」(アジサイシリーズ 20-11)
「満天星」(アジサイシリーズ 20-12)
「海峡」(アジサイシリーズ 20-13)
「嶺の妖精」(アジサイシリーズ 20-14)
「濃紫」(アジサイシリーズ 20-15)
「土佐のまほろば」(アジサイシリーズ 20-16)
「富士の滝」(アジサイシリーズ 20-17)
「舞子」(アジサイシリーズ 20-18)
「アジアン・ビューティー」(アジサイシリーズ 20-19)
「藍姫」(アジサイシリーズ 20-20)
「笹の舞」(アジサイシリーズ 20-21)
「広瀬の華」(アジサイシリーズ 20-22)
「さくら姫」(アジサイシリーズ 20-23)
「紫式部」(アジサイシリーズ 20-24)
「石鎚の光」(アジサイシリーズ 20-25)

 

 

 

 


異国の雰囲気を漂わせるラン「パフィオペディルム・ハリシアヌム」(蘭シリーズ 20-56)

2020年07月02日 09時37分50秒 | 

異国の雰囲気を漂わせるラン「パフィオペディルム・ハリシアヌム」。女神のスリッパという属名らしいが、袋状になるリップも、一番上のペタルの奇抜な形も面白い。小石川植物園からの寄贈だという。

(2020-02 東京都 神代植物公園) 

 

 

パフィオペディルム(パフィオペディラム Paphiopedilum)は、袋状の唇弁が特徴的なラン科植物で、洋ランの一属として知られる。洋ランとしての略称はPaph.である。

地上に根を下ろす地生蘭もしくは半着生蘭であり、洋ランでは少数派に属する。

茎はごく短く、葉は幅広い楕円形で平たく、根出状に重なる。

花は、長い花茎の先に単独か、少数を穂状につける。花の外3弁のうち上向きの弁は幅広く、大きくなり、側面の2弁は互いに融合して、唇弁の背景になる。内3弁のうち側方2弁は細く、横に張る。唇弁は袋状、またはつぼ状になる。

蕊柱はさじ型で、唇弁の口をふさぐような位置にある。その上面を覆う平らな部分は雄しべに由来するもので稔性はなく、仮雄蕊と呼ばれる。その下面の平らな部分が柱頭に当たる。雄しべは基部の左右側面にある。これは普通のラン科では蕊柱の先端に雄しべ、基部下側に柱頭があるという配置と大きく異なり、アツモリソウ亜科の特徴である。同亜科の中では、中南米に産するフラグミペディウム属 Phragmipedium に共通性が多い。

名前について
名前は女神のスリッパ(サンダル)を意味する。英語で「レディースリッパ (Ladyslipper)」とも。花の形が丁度女性の靴を思い起こさせる形をしているところから。古くはクマガイソウ・アツモリソウと同じくアツモリソウ属(Cypripedium)とされ、この属の学名仮名読みのシプリペジュームの名で流通した。現在、葉(常緑性の革質葉)、仮雄しべ(多肉質)、自生場所の違い等によって別の属に分けられている。

「洋」ランのイメージが強いが、日本での栽培の歴史も浅くはなく、歴史的に水戸徳川家のコレクションが有名。現在、このコレクションは水戸市植物園等で栽培が続いている。

また、袋状の花弁が食虫植物を思わせるため、虫を取ると良く言われるが、事実無根である。

分布と生育環境
分布は東南アジアに集中し、西はインド、南はニューギニア、ブーゲンビル島まで、東はフィリピン、北は中国南部にわたる。ただし個々の種の分布域は狭いものが多い。下記のように野生での絶滅が危惧されるものが多いのは、これもその一因である。特に石灰岩地帯に生育するものが多い。

多くは地上性だが、一部は樹上に着生するものがある。

蘭シリーズ・リスト


「エピデンドラム・プリティーレディーミスミ」(蘭シリーズ 20-01)
「スリーピング ルナグラード 」(蘭シリーズ 20-02)
「シンビジウム・アリス・ルナ」(蘭シリーズ 20-03)
「オンキディウム・アンプリアツム」(蘭シリーズ 20-04)
「エピデンドラム 'スター・バレー'」(蘭シリーズ 20-05)
「デンドロビウム・スペルバウンド・ミュー」(蘭シリーズ 20-06)
「シンビジューム・スウィートワイン」(蘭シリーズ 20-07)
「カトリアンセ  ジュエル・ボックス シェヘラザード」(蘭シリーズ 20-08)
「カトレヤ・ウェンディーズ・バレンタイン」(蘭シリーズ 20-09)
「カトレア・コッキネア」(蘭シリーズ 20-10)
「デンドロビウム・フォーミディブル」(蘭シリーズ 20-11)
「ファレノプシス・サクラコ・ファレノ」(蘭シリーズ 20-12)
「ファレノプシス・シレリアナ」(蘭シリーズ 20-13)
「ファレノプシス・メモリア・アン・フェジェン」(蘭シリーズ 20-14)
「ファレノプシス・リトル・メリー・チェリー・ソング」(蘭シリーズ 20-15)
「ファレノプシス・シルク・オレンジ」(蘭シリーズ 20-16)
「ドリテノプシス・シティーガール モリタNo.2」(蘭シリーズ 20-17)
「ファレノプシス・ビーチアナ」(蘭シリーズ 20-18)
「ドリテノプシス・リビングストンズ・ジェム」(蘭シリーズ 20-19)
「ファレノプシス・オトヒメ」(蘭シリーズ 20-20)
「ファレノプシス・ゴールデン・エンペラー "スイート"」(蘭シリーズ 20-21)
「ホンコンシュスラン」(蘭シリーズ 20-22)
「エピデンドラム・コスモ・ドリームカラー アスカ」(蘭シリーズ 20-23)
「エピデンドラム・カショクサイサイ」(蘭シリーズ 20-24)
「デンドロビウム・アオヤマ」(蘭シリーズ 20-25)
「デンドロビウム・ラウシー・ビカラー」(蘭シリーズ 20-26)
「オンシジウム・トゥインクル」(蘭シリーズ 20-27)
「デンドロビウム・ロイ・トクナガ」(蘭シリーズ 20-28)
「マキシラリア・ポルフィロステレ」(蘭シリーズ 20-29)
「デンドロビウム・カシオペ」(蘭シリーズ 20-30)
「デンドロビウム・キンギアナム」 (蘭シリーズ 20-31)
「オドンティオダ・ラブリー・アップル」 (蘭シリーズ 20-32)
「クロウエシア・グレイスダン 'Chadds Ford' 」 (蘭シリーズ 20-33)
「オンシディオダ・チャールズワーシー」(蘭シリーズ 20-34)
「ワルツェウィツェラ・メリオン」(蘭シリーズ 20-35)
「デンロビウム・エンジェルベイビー グリーン愛」(蘭シリーズ 20-36)
「デンドロビウム・ファレノプシス・サクラ」(蘭シリーズ 20-37)
「リカステ・ナガイ・インターナショナル」(蘭シリーズ 20-38)
「リカステ・ワイルドファイア・タカツ」(蘭シリーズ 20-39)
「デンドロビウム・イエローチンサイ・マジカルカラー」(蘭シリーズ 20-40)
「デンドロビウム・タイ・ジャスミン」(蘭シリーズ 20-41)
「デンドロビウム・スノーフレーク・オトメ」(蘭シリーズ 20-42)
「デンドロビウム・チンサイ」(蘭シリーズ 20-43)
「スパトグロッティス・ゼブリナ 」(蘭シリーズ 20-44)
「オンシジウム・マカリイ・ゴトー」(蘭シリーズ 20-45)
「デンドロビウム・ミレニウム・グリーン」(蘭シリーズ 20-46)
「セロジネ・スペシオサ」(蘭シリーズ 20-47)
「オンシディオダ・モーニングメドレー・サクラ」(蘭シリーズ 20-48)
「セロジネ フラクシダ ’ラッキーボーイ’」(蘭シリーズ 20-49)
「オンシジウム・スプレンディダム」(蘭シリーズ 20-50)
「セロジネ・クリスタータ」(蘭シリーズ 20-51)
「ミルトニア・バート・フィールド ドロレス」(蘭シリーズ 20-52)
「デンドロビウム・アンドリー・ミラー」(蘭シリーズ 20-53)
「ミルタシア アズテック エバグラデス グリーン」(蘭シリーズ 20-54)
「デンドロビウム・シノノメ」(蘭シリーズ 20-55)

 


殿堂入りのクリームイエローのバラ「エリナ」(春薔薇シリーズ20-001)

2020年07月02日 08時28分43秒 | 

本日から今年の春バラの紹介です。コロナ禍のために二番花からになります。昨年のバラとどう違うでしょうか。まずは殿堂入りのクリームイエローのバラ「エリナ」から。丸弁高芯咲きのすっくとした品位のある立ち姿はさすがです。

(2020-06 東京都 神代植物公園) 

昨年のページはこちらから

たおやかなクリーム・イエローの花が魅せる「エリナ」(薔薇シリーズ02)

 

エリナの詳細
クリームイエローの耐寒性・耐暑性・耐病性と、三拍子そろった強健種です。非常に育てやすく、初心者にお薦めしたい品種。2006年には銘花「ピエール ドゥ ロンサール」とならび世界ばら会連合「栄誉の殿堂入りのバラ」に選出された記念すべき品種です。

品種名 エリナ
英語名 Elina
系統 ハイブリッドティ
作出年/国 1985年/イギリス
作出者 Dickson,P.
香り 軽い
開花習性 四季咲き
花形 丸弁高芯咲き 12cm
樹高 1.4m


ハクチョウソウと久しぶりの青空

2020年07月02日 08時00分34秒 | 

いつみても優雅で可憐なハクチョウソウですが、今年もまた出会える季節になってきました。花壇でこんな白い蝶が飛翔するようなかわいい花にあえるのは幸せなことですね。去年は調布の野鳥園で出会ったのでした。ヤマモモソウという中国名も素敵。

白い端正な花がすてきなハクチョウソウ

ハクチョウソウ  白蝶草
[別名] ガウラ、ヤマモモソウ
[中国名] 山桃草 shan tao cao
[英名] Lindheimer's beeblossom , Lindheimer's gaura , white gaura , butterfly gaura , Lindheimer's clockweed , Indian feather
[学名] Oenothera lindheimeri (Engelm. et A. Gray) W. L. Wagner et Hoch
Gaura lindheimeri Engelm. et A.Gray
アカバナ科 Onagraceae  マツヨイグサ属 

 オーストラリアなどで野生化し、日本でも栽培種が逸出している。学名は以前はヤマモモソウ属(ガウラ属の)Gaura lindheimeriとされていた。現在はマツヨイグサ属の中のgenus Oenothera sect. Gaura に入れられ、Oenothera lindheimeri.。和名はヤマモモソウであるが、普通、ハクチョウソウと呼ばれる。ヤマモモソウ属が使われないため、ハクチョウソウとした。中国名は山桃草。
 日本へは明治時代に渡来し、観賞用に栽培されている。現在では花がピンク色や濃い縁取りなどの園芸品種が多数あり、葉に斑入りのものもある。
 多年草、根茎があり、高さ50~150㎝、茎は短毛があり、直立し、多数、分枝する。葉は無柄、しばしば基部でロゼット状になり、茎葉は互生する。葉身は細かい毛があり、披針形、長さ1~9㎝、幅1~13㎜、縁に粗い鋸歯がある。花序は穂状花序又は総状花序、頂生及び腋生、長さ10~80㎝。花は直径2~3㎝。花弁は長さ10~15㎜、4個、上側に1列に並び、白色、古くなると、ピンク色になる。雄しべは長く、8個、花糸は毛状。葯は赤褐色。雌しべは1個、雄しべより長く、柱頭は4裂。果実は非裂開の小堅果状、断面が四角の紡錘形、長さ7~8㎜。種子は赤褐色。花期は5~9月。果期は秋。
[花期] 6~9月
[樹高] 60~150㎝
[生活型] 多年草
[生育場所] 園芸種 道端、草地
[分布] 帰化種 北アメリカ(テキサス州、ルイジアナ州)原産

 

久しぶりの青空です。空を大きく掃いている雲がきれい。