■ ソロからファミリーキャンプでテントも変わる
ソロが基本だったぼくのキャンプに、25年ほど前から女房がついてくるようになって道具たちが激変した。たちまち巨大化したのである。
オプティマス8R、スベア123などだった食事作りのガソリンストーブがコールマンのピークワンになり、まもなくツーバーナーへと変わる。キャンドルランタンもピークワンランタンやらワンマントルへ。いずれもホワイトガソリンを燃料とするからすんなり移行することができた。
ほかにも、ちょうど、キャンプ用の椅子やらテーブルのいいものが発売されるようになった時期でもあり、それらが一気に増えた。
だが、なんといってもいちばん大きく変わったのがテントである。女房がいて、大学生から社会人になっていくせがれはさすがにこなかったが、当時は小学生だった女房の姪が頻繁につきあってくれた。はた目には家族にしか見えなかっただろう。
この時代、わが家がいちばんやっかいになったのがダンロップのダルセパクトであり、コールマンのスタンダードドームテントだった。
ダルセパクトはすばらしいテントだった。風雨にも強く、居住性も申し分なく、廃番にさえならなければ後継テントとして買い続けたかったほどである。だが、ポールが多くて、設営が楽だったとはいいがたい。生地も厚かったし、ポールの数で重かった。
サブにコールマンのドームテントを買ったのは、ひとえに張りやすさを求めたからだったが、初期のコールマンテントは、悪口をいいはじめたらきりがないほどクォリティーに問題があった。
■ ロッジ型からコールマンのドーム型へ
しかし、コールマンジャパンがはじめてテントをリリースして、そのデザインもさることながら、値段が魅力だったし、量販店で容易に入手できたので、ハイシーズンのキャンプ場がコールマングリーンで埋まった年が何年か続いた。
どこまでいってもコールマンのテントが続き、自分のテントに帰れなくなった子供がコールマンテント村の中で泣いていたなんて話も珍しくなかった。なんせ、タープも椅子もテーブルも横に置いてあるツーバーナーも全部似たり寄ったりのコールマン製品である。大人だってどこが自分たちのサイトかわからなくなって当然であきれた記憶がある。
余談になるが、コールマンテントの攻勢がはじまる直前にクルマを使ったキャンプのブームがきた。「オートキャンプ」なる和製英語がモーターリゼーションの世相とあいまって、その後の4WDブームの前触れのようにリクリエーションとしてのキャンプが注目された。キャンプ場に並んだテントは重いスチール製のポールで組み立てていくロッジテントだった。
多くのロッジ型が量販店で信じられないような安価で売られていた。激安だけにひどい製品もあったろうし、何よりも設営と撤収の手間は正視に耐えないほどだ。コールマンテントはその後継テントにぴったりだったともいえる。
わが家のダルセパクト時代がコールマンテントと重なるとはいえ、10年以上続いた。最後はさすがに防水機能が落ちてきたものの、ほかのテントへの買い換えは念頭になく、大々的に防水加工をやる気になって防水液や刷毛を準備もしたほどだった。
ダルセパクトの時代は、ちょうどタープが出現し、まもなくメッシュタープへ進化し、現在のスクリーンタープの原型が定着する時代の変遷と重なる。
■ タープがたちまち進化を遂げた
虫嫌いの奥さんや子供たちとキャンプへきたとき、とくに夏場はランタンの光めがけて飛んでくる虫が悩みのタネだからだろう、タープの側面にメッシュを垂らしたような不格好なシロモノが発売された。
いつもキャンプにつきあってくれる小学生の姪のために、ぼくもコールマンの製品を買った。スチールのポールはなんとも粗悪品で買ってすぐに後悔した。デザインもひどかった。二度目の使用時、突風にあおられて傾き、ランタンにメッシュが絡んで穴が開いたのをこれ幸いと廃棄処分にした。
メッシュの外側にウォールをつけたスクリーンタープがすぐにリリースされていた。絞り込んだ候補はふたつ。どちらもコールマン製品であり、パラワイドとスリーポールスクリーンタープだった。前者のポールと後者のポールを見比べたらひと目でその差がわかる。ぼくが選んだのは前者のほうだった。
ベージュ&イエローのダルセパクトとグリーン&ベージュのパラワイドではカラーバランスがよくないが、ぼくは無頓着だった。スクリーンタープがいらない季節は、スノーピークのレクタングラーやら同じくスノピのヘキサを使い分けた。
レクタングラーは現在も3枚が手元にあり、グループキャンプのときにずいぶん重宝した。スノピでありながらカラーがいずれもアイボリーだけという時代だった。
2枚のヘキサのほうも1枚はアイボリーでソロ用に小ぶりのものを買ったが、ほとんど使わないでキャンプ入門者に進呈した。
これらもまた写真のようにダルセパクトとはバランスがとれないが、まあ、使えればいいじゃないか。そんな感覚だった。
■ クレーム対応に不信感が残った
小川キャンパルのテントであるスクートとスクリーンタープのスクリーンキャビンは、ほんの偶然から衝動買いした。当時、毎月のキャンプをご一緒するようになったご夫婦といきつけのアウトドア用品の店でこれらを見つけた。ちょっと使ってみようか程度のノリでそれぞれにセットで買った。はじめてテントとスクリーンタープがジョイントできてその便利さに満足した。
テントの広さや高さは申し分なく、スクリーンキャビンも大人4人と犬4匹がくつろぐのには十分だった。なんとなく心細さを感じつつもシンプルな設計だけに故障の可能性も低いだろうとタカをくくって使い続けた。なんせOGAWAのブランドである。イマイチのデザインもがまんできた。
設営直後に「あれ?」と異変に気づいたのは1年も経たない、たぶん半年くらいのころだった。わが家のスクリーンの天井に多数のピンホールを見つけたのである。隣のサイトのスクリーンも同じだった。まるでプラネタリウムにいるような光景だった。
東京へ戻り、ふたつのスクリーンを販売店に持ち込んだ。顔見知りの店長は、「そんなクレームは一件もきていない」とケンもほろろだった。それでも小川キャンパルへ送ってもらい、あとは当事者同士の話し合いとなった。
まもなく、担当者から電話がかかってきた。彼もまたそういうクレームは一件もないのだから、使い方が悪かっただけだと強弁を続けた。昨日今日キャンプをはじめたのならそれで引き下がるだろうが、これは明らかに素材が不良品だからだとぼくも譲らなかった。
長い電話のやりとりで、担当者は渋々だが、「交換はできませんが、新しいのを買い取ってください。価格は100円くらいでどうでしょう?」と提案してきた。
ショップ経由で新たに送らてきた幕体の手触りは以前のものよりはるかにしっかりしている。そして、ぼくの手を離れてからは従姉夫婦が何度か使い、いまはこの2年ほどキャンプを一緒にしているF家のスクリーンタープとして健在である。
実質の交換から10年、ピンホールも見えずに役立っている姿を見るにつけ、やっぱりあれは不良品の素材だったのだと確信を強めている。あのとき、キャンプ仲間と同時に同じ製品を2張り買っていたからこちらも冷静にクレームを展開できた。この対応で、ぼくのOGAWAブランドへの信頼は一気にしぼんでしまった。