■ 新たな焚火ブームの到来か?
もう15年越しになる伊豆での年越しキャンプである。今年はとりわけ楽しみにしていたことがいくつかあった。そのひとつが、昨年から気になっていた最近のキャンプスタイルが、冬を迎えても健在かどうかだった。
11月のキャンプでは、ずらり並んだ各サイトで共通した現象を見つけて流行のすごさに驚いた。テントの前に、あるいはタープの下にそれぞれにさまざまな焚火台が置かれ、お父さんが陣取っている光景だった。
キャンプに焚火はつきものだから不思議に思うほうがどうかしているのかもしれない。ぼくだって若いころは焚火がしたくてそそくさとキャンプに出かけていたものだった。
オートキャンプなる言葉が定着して、直火の是非をめぐってアウトドア誌の誌上で論争になった時代もあった。多くのキャンプ場が「直火禁止」を打ち出し、アウトドア用品店の店頭には「焚火台」なる製品が出現した。
夜、晩ご飯を終えると拾ってきた焚き木を焚火台で燃やしながらのんびり過ごす。それもキャンプの楽しみだった。春や秋のキャンプだと焚火の暖かさが身にしみた。冬のキャンプでは焚火が不可欠だった。
特に冬は、焚火台なんかの野暮な道具は使わず、直火のできるキャンプ場が恋しくなった。冬の焚火も身体の前のほうは暖まるが、背中は凍えていた。顔がやたら火照ったものだった。背中を焚火に向けると、火照った顔や身体の前面がすぐに冷えてしまった。いまとなってはいい思い出である。

■ やっぱりキャンプには焚火だけど
焚火だけに頼っていた冬のキャンプを楽にしてくれたのがスクリーンタープの出現だった。それまでの厳冬期のキャンプはやっぱり厳しかった。焚火だけでは身体が冷えたままだったから、寝る直前にクルマを走らせて近くの温泉などへいった。温泉で温まった身体が冷えないうちに寝袋へもぐりこんでいたものだった。
スクリーンタープが誕生して冬のキャンプは劇的に変わった。石油ストーブまで持ち込み、Tシャツ一枚で過ごすキャンパーを見たときにはいささか呆れて言葉を失った。
いまではキャンプ用品のメーカーまでキャンプ用の石油ストーブを発売している。テント用の薪ストーブにいたっては、いくつものメーカーから出ているらしい。
ぼくはといえば、石油ストーブや薪ストーブではないまでも、ガスカートリッジを燃料とするストーブや電気ストーブを使っている。しかも寝るときは床にホットカーペットを敷いている始末である。そんな軟弱ぶりだから焚火ともずいぶん遠ざかってしまった。
11月連休のキャンプで気がついたのが、焚火を愛好するキャンパーの激増だった。それが年越しキャンプでも健在だったのである。屋外の寒さをものともせず、彼らは焚火台を囲み、焚火で夕飯を作ってるらしい。
見るともなしに見たところ、たいていバーベキューのたぐいの焼き物が中心なのは、やっぱり調理器具が煤で汚れるのがイヤだかかもしれない。しかも、お父さんが焚火奉行として君臨しているのはどこのサイトにも共通していた。

■ 煙の移り香がたまらない
最初、この人たちは、河原でのバーベキューからキャンプにやってきたのだろうと思った。世間の多くが、「キャンプ=BBQ」だと勘違いしているほどバーベキューが盛んだからである。
焚火台の前でお父さんが火の番をしながらという風景は、昔の「いろり」を連想できる。実際のそうした生活を見たことはないが、話には聞いている。そうか、このスタイルは山深い雪国のいろりばたが原点だったのか。日本のバーベキューのブームはそんな郷愁を呼び覚ましたようだ。それもまたいいじゃないか。
そそっかしくも勝手な感慨に酔いしれていたら、どうやらそうではないらしい。なんでも、もう終わったタレントが、キャンプにハマり、このスタイルを広めたのだという。たちまちシラケた。
まあ、流行なんてそんなもんだろう。
「今年は薪の消費が異常なんだよね。いくら用意してもすぐ足りなくなる」と不思議がっていたキャンプ場のオーナーに、ぼくは「みんな薪ストーブを楽しんでいるんだね」なんて見当違いの感想を言ってしまったのを思い出して赤面した。
さて、このブームはいつまで続くのだろう。
焚火につきものなのが着ている服や髪に染みつく煙のにおいである。ぼくはこれが大好きで、キャンプから帰ってずいぶん経ってからでも、たとえば、マウンテンパーカからそこはかとなく焚火の煙のにおいがしてくると、フィールドが恋しくなり、いてもたってもいられなくなるほどだ。
しかし、多くの人がこのにおいを毛嫌いしている。たしかに田舎くさい。
終わったタレントが広めたという焚火台を使ったいろりばたキャンプが、キャンプの新しいスタイルとして定着するか見守っていきたいが、煙のにおいにハマった人が多ければ確実に定着していくだろう。
もう15年越しになる伊豆での年越しキャンプである。今年はとりわけ楽しみにしていたことがいくつかあった。そのひとつが、昨年から気になっていた最近のキャンプスタイルが、冬を迎えても健在かどうかだった。
11月のキャンプでは、ずらり並んだ各サイトで共通した現象を見つけて流行のすごさに驚いた。テントの前に、あるいはタープの下にそれぞれにさまざまな焚火台が置かれ、お父さんが陣取っている光景だった。
キャンプに焚火はつきものだから不思議に思うほうがどうかしているのかもしれない。ぼくだって若いころは焚火がしたくてそそくさとキャンプに出かけていたものだった。
オートキャンプなる言葉が定着して、直火の是非をめぐってアウトドア誌の誌上で論争になった時代もあった。多くのキャンプ場が「直火禁止」を打ち出し、アウトドア用品店の店頭には「焚火台」なる製品が出現した。
夜、晩ご飯を終えると拾ってきた焚き木を焚火台で燃やしながらのんびり過ごす。それもキャンプの楽しみだった。春や秋のキャンプだと焚火の暖かさが身にしみた。冬のキャンプでは焚火が不可欠だった。
特に冬は、焚火台なんかの野暮な道具は使わず、直火のできるキャンプ場が恋しくなった。冬の焚火も身体の前のほうは暖まるが、背中は凍えていた。顔がやたら火照ったものだった。背中を焚火に向けると、火照った顔や身体の前面がすぐに冷えてしまった。いまとなってはいい思い出である。

■ やっぱりキャンプには焚火だけど
焚火だけに頼っていた冬のキャンプを楽にしてくれたのがスクリーンタープの出現だった。それまでの厳冬期のキャンプはやっぱり厳しかった。焚火だけでは身体が冷えたままだったから、寝る直前にクルマを走らせて近くの温泉などへいった。温泉で温まった身体が冷えないうちに寝袋へもぐりこんでいたものだった。
スクリーンタープが誕生して冬のキャンプは劇的に変わった。石油ストーブまで持ち込み、Tシャツ一枚で過ごすキャンパーを見たときにはいささか呆れて言葉を失った。
いまではキャンプ用品のメーカーまでキャンプ用の石油ストーブを発売している。テント用の薪ストーブにいたっては、いくつものメーカーから出ているらしい。
ぼくはといえば、石油ストーブや薪ストーブではないまでも、ガスカートリッジを燃料とするストーブや電気ストーブを使っている。しかも寝るときは床にホットカーペットを敷いている始末である。そんな軟弱ぶりだから焚火ともずいぶん遠ざかってしまった。
11月連休のキャンプで気がついたのが、焚火を愛好するキャンパーの激増だった。それが年越しキャンプでも健在だったのである。屋外の寒さをものともせず、彼らは焚火台を囲み、焚火で夕飯を作ってるらしい。
見るともなしに見たところ、たいていバーベキューのたぐいの焼き物が中心なのは、やっぱり調理器具が煤で汚れるのがイヤだかかもしれない。しかも、お父さんが焚火奉行として君臨しているのはどこのサイトにも共通していた。

■ 煙の移り香がたまらない
最初、この人たちは、河原でのバーベキューからキャンプにやってきたのだろうと思った。世間の多くが、「キャンプ=BBQ」だと勘違いしているほどバーベキューが盛んだからである。
焚火台の前でお父さんが火の番をしながらという風景は、昔の「いろり」を連想できる。実際のそうした生活を見たことはないが、話には聞いている。そうか、このスタイルは山深い雪国のいろりばたが原点だったのか。日本のバーベキューのブームはそんな郷愁を呼び覚ましたようだ。それもまたいいじゃないか。
そそっかしくも勝手な感慨に酔いしれていたら、どうやらそうではないらしい。なんでも、もう終わったタレントが、キャンプにハマり、このスタイルを広めたのだという。たちまちシラケた。
まあ、流行なんてそんなもんだろう。
「今年は薪の消費が異常なんだよね。いくら用意してもすぐ足りなくなる」と不思議がっていたキャンプ場のオーナーに、ぼくは「みんな薪ストーブを楽しんでいるんだね」なんて見当違いの感想を言ってしまったのを思い出して赤面した。
さて、このブームはいつまで続くのだろう。
焚火につきものなのが着ている服や髪に染みつく煙のにおいである。ぼくはこれが大好きで、キャンプから帰ってずいぶん経ってからでも、たとえば、マウンテンパーカからそこはかとなく焚火の煙のにおいがしてくると、フィールドが恋しくなり、いてもたってもいられなくなるほどだ。
しかし、多くの人がこのにおいを毛嫌いしている。たしかに田舎くさい。
終わったタレントが広めたという焚火台を使ったいろりばたキャンプが、キャンプの新しいスタイルとして定着するか見守っていきたいが、煙のにおいにハマった人が多ければ確実に定着していくだろう。