■ テントをつなぐトンネル欲しさにスノピに手を出す
いま、わが家ではふたつのテントを使い分けている。長期滞在用には9年めに入ったスノーピークのリビングシェルシールド(以下、リビングシェルと呼ぶ)にあとから購入したインナーテントをセットしたものを愛用してきた。
もうひとつが2年前からのモンベルのムーンライト5とアストロドームの組み合わせである。夏場はアストロドームではなく、ビッグタープHXに変わる。虫の攻撃をまともに受けるが、さほどイヤだとは思わない。
夕食時、ランタンを食卓に置かないから、食べ物に蛾が飛び込むなんてこともあまりない。あっても、つまんで出せばいいだけのこと。それがキャンプだ。
スノーピークのリビングシェルは、最初、ランドブリーズのテントに、これらをつなぐL/Bトンネルも一緒に買った。年越しキャンプのキャンプ場で毎年会う常連さんがこれを使っていて、わが家の女房からの強いリクエストがあったからだ。彼女がいちばん魅かれたのは、トンネルだったのだけれど……。
ぼくはというと、スノーピークというメーカーにいくつかの経験から不信感を払拭できずにいた。とりわけ、テントのカラーリングにオリジナリティーを感じることができず、このあからさまなあざとさに嫌悪感さえあった。
それ以上に、初心者に多かったが、キャンプ場でのスノピ信奉者たちのこれ見よがしの態度も不快だった。こんな連中の同類になりたくなかった。同類と思われるのものしゃくだった。
かつて、偶然、スノピのイベントのスノーピークウェイが開催されるキャンプ場に、そうとは知らずに出かけてしまい、スノピ信者に囲まれて一晩過ごしたことがある。あの鼻もちならない雰囲気はいまも忘れられない。
■ この使いにくさはなんとかならないか
当時、ネット上でのみ間接的な知り合いのスノピ信者のひとりが、そんなスノーピークウェイに参加し、社長の言葉として、「スノーピークの製品は高価でいい。それだけユーザーが優越感にひたれるから」という意味の発言を自慢げに紹介していた。ぼくが直接聞いたわけではないから事実かどうかはわからないが、この会社の営業戦略を見ているとさもありなんと思えたものだった。
モスのテントのパクリだという批判からの脱却をはかろうとしていたのかもしれないが、スノピのテントがあわただしく基本カラーを変えていった時期がある。短期間だが、ベージュがグレーに変わり、濃いめのベージュに戻った。ちょうどそのころ、スノピのテント類がわが家にやってきた。
試し張りに出かけた一泊キャンプでぼくは早くも後悔した。リビングシェルの張りにくさとテントのランドブリーズがつまらないところまでペグを必要としたからだ。
スノピのテント類の素材と縫製のよさはぼくも認める。だが、ランドブリーズのテントにかぎってはデザイン上の細部の詰めが甘いとしか思えない。完成されたテントではなく、まだ発展途上だといっても過言ではない。
もうひとつ、トンネルという名のフライシートは、たしかに楽しい発想だが、日本のキャンプ場で、とりわけ区画があるとこれを使ってテントとシェルターをつなげるところは限られてくる。
年越しキャンプで二度使ったが、すきま風がひどくて冬はとうてい使いものにならないのがわかった。
■ 巨大化路線は優越感をくすぐる戦略なのか
わが家のキャンプは女房とふたり、それに中型犬が二頭である。ランドブリーズのテントに前から持っていたスノピの旧カラーのヘキサタープを組み合わせて使ってみたこともある。だが、きちんと張れたらたしかに美しいフォルムのこのタープの実用性が低いのは前からわかっていた。
タープの下の有効面積が狭いのである。雨や日差しに対して弱いという意味だ。つまり、雨が降り込んでくるし、日陰もたいして得られない。デザイン重視でタープに求められる本来の能力は無視されていた。
せっかく大きなリビングシェルがあるのだからというのでインナールームを買ってみた。だが、これは大失敗だった。リビングシェルの空間の半分を犠牲にするから、短期滞在の二人だけのキャンプならまだしも、なんとしても手狭である。一度で懲りてすぐに新たにインナーテントを買ってみた。
雨に備えてフルフライシートも使うから設営はインナールームの何倍も手間取るが、テントを建てるよりはいくぶん楽である。居住性でもわが家は問題なかった。かくして理想のスタイルにようやくたどり着けた。
それでもやっぱりリビングシェルは重くてかさばる。布地が厚いのとそれを支えるメインポールが太いからだ。
ところが、最近のスノピのシェルターやテント類は巨大化しますます重くなって設営や撤収が大変なのは一目瞭然である。よほどの筋力の持ち主でないと取りまわしがきかない。ぼくにはスノピのこうした発想がまったく理解できない。
アイディアも多彩だし、センスも悪くないのがスノーピークというメーカーである。ときどき、細部の詰めの甘さで完成度の低い商品をつかまされたユーザーが泣きを見るが、それでも人気ブランドにはちがいない。だからこそ、最近のテント類の巨大化路線にはあきれるばかりである。