私家版 野遊び雑記帳

野遊びだけが愉しみで生きている男の野遊び雑記帳。ワンコ連れての野遊びや愛すべき道具たちのことをほそぼそと綴っていこう。

わが家のテント遍歴 ~丈夫がとりえのスノーピーク~

2015-12-23 20:17:44 | Weblog

■ テントをつなぐトンネル欲しさにスノピに手を出す 
 いま、わが家ではふたつのテントを使い分けている。長期滞在用には9年めに入ったスノーピークのリビングシェルシールド(以下、リビングシェルと呼ぶ)にあとから購入したインナーテントをセットしたものを愛用してきた。
 もうひとつが2年前からのモンベルのムーンライト5とアストロドームの組み合わせである。夏場はアストロドームではなく、ビッグタープHXに変わる。虫の攻撃をまともに受けるが、さほどイヤだとは思わない。
 夕食時、ランタンを食卓に置かないから、食べ物に蛾が飛び込むなんてこともあまりない。あっても、つまんで出せばいいだけのこと。それがキャンプだ。

 スノーピークのリビングシェルは、最初、ランドブリーズのテントに、これらをつなぐL/Bトンネルも一緒に買った。年越しキャンプのキャンプ場で毎年会う常連さんがこれを使っていて、わが家の女房からの強いリクエストがあったからだ。彼女がいちばん魅かれたのは、トンネルだったのだけれど……。
 ぼくはというと、スノーピークというメーカーにいくつかの経験から不信感を払拭できずにいた。とりわけ、テントのカラーリングにオリジナリティーを感じることができず、このあからさまなあざとさに嫌悪感さえあった。

 それ以上に、初心者に多かったが、キャンプ場でのスノピ信奉者たちのこれ見よがしの態度も不快だった。こんな連中の同類になりたくなかった。同類と思われるのものしゃくだった。
 かつて、偶然、スノピのイベントのスノーピークウェイが開催されるキャンプ場に、そうとは知らずに出かけてしまい、スノピ信者に囲まれて一晩過ごしたことがある。あの鼻もちならない雰囲気はいまも忘れられない。


■ この使いにくさはなんとかならないか 
 当時、ネット上でのみ間接的な知り合いのスノピ信者のひとりが、そんなスノーピークウェイに参加し、社長の言葉として、「スノーピークの製品は高価でいい。それだけユーザーが優越感にひたれるから」という意味の発言を自慢げに紹介していた。ぼくが直接聞いたわけではないから事実かどうかはわからないが、この会社の営業戦略を見ているとさもありなんと思えたものだった。

 モスのテントのパクリだという批判からの脱却をはかろうとしていたのかもしれないが、スノピのテントがあわただしく基本カラーを変えていった時期がある。短期間だが、ベージュがグレーに変わり、濃いめのベージュに戻った。ちょうどそのころ、スノピのテント類がわが家にやってきた。
 試し張りに出かけた一泊キャンプでぼくは早くも後悔した。リビングシェルの張りにくさとテントのランドブリーズがつまらないところまでペグを必要としたからだ。

 スノピのテント類の素材と縫製のよさはぼくも認める。だが、ランドブリーズのテントにかぎってはデザイン上の細部の詰めが甘いとしか思えない。完成されたテントではなく、まだ発展途上だといっても過言ではない。
 もうひとつ、トンネルという名のフライシートは、たしかに楽しい発想だが、日本のキャンプ場で、とりわけ区画があるとこれを使ってテントとシェルターをつなげるところは限られてくる。
 年越しキャンプで二度使ったが、すきま風がひどくて冬はとうてい使いものにならないのがわかった。



■ 巨大化路線は優越感をくすぐる戦略なのか 
 わが家のキャンプは女房とふたり、それに中型犬が二頭である。ランドブリーズのテントに前から持っていたスノピの旧カラーのヘキサタープを組み合わせて使ってみたこともある。だが、きちんと張れたらたしかに美しいフォルムのこのタープの実用性が低いのは前からわかっていた。
 タープの下の有効面積が狭いのである。雨や日差しに対して弱いという意味だ。つまり、雨が降り込んでくるし、日陰もたいして得られない。デザイン重視でタープに求められる本来の能力は無視されていた。

 せっかく大きなリビングシェルがあるのだからというのでインナールームを買ってみた。だが、これは大失敗だった。リビングシェルの空間の半分を犠牲にするから、短期滞在の二人だけのキャンプならまだしも、なんとしても手狭である。一度で懲りてすぐに新たにインナーテントを買ってみた。
 雨に備えてフルフライシートも使うから設営はインナールームの何倍も手間取るが、テントを建てるよりはいくぶん楽である。居住性でもわが家は問題なかった。かくして理想のスタイルにようやくたどり着けた。
 
 それでもやっぱりリビングシェルは重くてかさばる。布地が厚いのとそれを支えるメインポールが太いからだ。
 ところが、最近のスノピのシェルターやテント類は巨大化しますます重くなって設営や撤収が大変なのは一目瞭然である。よほどの筋力の持ち主でないと取りまわしがきかない。ぼくにはスノピのこうした発想がまったく理解できない。
 アイディアも多彩だし、センスも悪くないのがスノーピークというメーカーである。ときどき、細部の詰めの甘さで完成度の低い商品をつかまされたユーザーが泣きを見るが、それでも人気ブランドにはちがいない。だからこそ、最近のテント類の巨大化路線にはあきれるばかりである。

いずれフィールドで瞑(ねむ)りにつこう

2015-12-22 20:42:37 | Weblog

■ さあ、銀山湖へ出かけよう!
 3歳年上の従兄が脳卒中でたおれた。
 血縁はないが、ぼくのフライフィッシングの師にして、キャンピングでは逆にぼくが先輩となる。こうしたつきあいのなかで、女房の従姉の連れ合いの彼がいまでは兄貴同然の存在となっている。

 実の兄弟でさえ冠婚葬祭でしか顔をあわせないというのに、彼とはこの10年近く春から晩秋にかけて年に何度となく老夫婦二組が寄り添うなかでキャンプを楽しんできた。
 60代同士で結婚した彼らがキャンプに目覚め、おきまりの道具遍歴を重ねてようやくたどりついた理想のテントの前で仲むつまじく過ごしている光景はなかなか味わい深い。そのスタイルが、すでにベテランの域にあるのはひと目でわかる。
 
 フライフィッシングの手ほどきだけは受けているぼくも、リタイアしたら彼の指導で本格的にフライのロッド(竿)を振る気でいる。まずは新潟と福島の県境にある、彼のホームグランドの銀山湖へ釣行しようという段取りだ。
 ぼくはビギナーズラックをひたら信じ、初回で大物を釣り上げる夢にずっと酔ってきた。願いどおりなら、ブラウントラウトの大物がヒットするはずである。夜、ベッドの中でそんなことを考えてしまうとわくわくして眠れなくなる。

■ もう話すことなんか何もないけどね
 さしあたっての時間はありあまるほどあるだろうから、まずは野営場にふたつのテントを張り、そこで寝泊まりしながらの長期釣行としよう。朝飯をしっかりすませてから自分たちで作った弁当をデイパックに入れ、ロッドを提げて湖に向かう。
 テントの脇には土をかけて熾きになった焚火の下に晩飯用の食材をしこんだダッチオーブンが埋まっている。夕闇のなか、空腹をかかえ、疲れ果ててサイトへ戻ったとき、冷えきった身体にエネルギーを充填できる熱々のメニューが待っているという寸法だ。
 
 ふたりそろって高脂血症だし、ほかにも共通の肉体的なリスクは歳相応にかかえている。だけど、ダッチオーブンのなかには高カロリーのメニューがたっぷりだ。蓋を開ければよだれがでるようないい匂いの湯気がたちのぼる。
 連れ合いたちが見たら、この命知らずの無謀なディナーに悲鳴をあげるに違いない。でも、湖に立ち込んでいるとき、あるいはテントで寝ていてお迎えがきたのなら、これに勝る幸せはない。
 
 身体が動くかぎり、そんなキャンプ釣行を続けていきたい。

 夜、焚火の前ではきっとその日逃した獲物への未練をくどくどと繰り返すだろう。新しい話題なんてそれくらいしかない。互いに70年以上生きてきたといっても、たいした話題しかない自分たちの人生に愕然とするのもいい。最初から、そうそう話すことなんてないのだ。それに、何度も同じ思い出話を繰り返し、もうとっくにネタは尽きている。かくして老人は寡黙になっていく。

■ 焚火の前が瞑目の指定席じゃないか
 湖にひそむ魚たちも寝静まり、ふたりは焚火をみつめてとろとろと時間をつぶす。お湯で割ったホットウィスキーの湯気にときどきむせるだけで無言のままだ。それでもなんという充足感だろう。
 魚なんか釣れなくてもいい。ふたりが湖面に流したフライに気づいた大物が、「だれがそんなものにだまされるかよ」と尾で叩いてゆっくりと潜っていく。そうやって、老獪な魚にからかってもらえただけでじゅうぶんだ。「惜しかった! もうちょっとだったのに!」なんて強がりをいいあっていっとき元気になれる。
 
 薄明のころ、朝靄のなかにぼんやり浮かぶのは、消えた焚火の前の椅子で古いブランケットにくるまって眠るふたりの老人である。足下には空になったバーボンの瓶がころがっている。
 彼らは二度と目覚めることがない。ブランケットは、裾が擦り切れ、色褪せ、焚火の火の粉で穴だらけだ。ふたりの死に装束としてこれにまさる衣装はない。ここにいたるまでの人生の来し方は互いにいろいろあったが、男の最期はやっぱりそんな至福とともにありたい。

 彼の連れ合いである姉貴には悪いが、ぼくは勝手に男同士の最期はかくありたいと希(ねが)ってきた。
 兄貴である従兄がフィールドに復活し、最後の夢で締めくくってくれる日を、まだ諦めるわけにはいかない。ぼくらの死に場所は病院のベッドの上じゃないはずだ。
 がんばれよ、兄貴!


わが家のテント遍歴 ~最盛期を支えてくれたあれこれ~

2015-12-19 00:30:34 | Weblog
■ ソロからファミリーキャンプでテントも変わる 
 ソロが基本だったぼくのキャンプに、25年ほど前から女房がついてくるようになって道具たちが激変した。たちまち巨大化したのである。
 オプティマス8R、スベア123などだった食事作りのガソリンストーブがコールマンのピークワンになり、まもなくツーバーナーへと変わる。キャンドルランタンもピークワンランタンやらワンマントルへ。いずれもホワイトガソリンを燃料とするからすんなり移行することができた。
 ほかにも、ちょうど、キャンプ用の椅子やらテーブルのいいものが発売されるようになった時期でもあり、それらが一気に増えた。
 
 だが、なんといってもいちばん大きく変わったのがテントである。女房がいて、大学生から社会人になっていくせがれはさすがにこなかったが、当時は小学生だった女房の姪が頻繁につきあってくれた。はた目には家族にしか見えなかっただろう。
 この時代、わが家がいちばんやっかいになったのがダンロップのダルセパクトであり、コールマンのスタンダードドームテントだった。

 ダルセパクトはすばらしいテントだった。風雨にも強く、居住性も申し分なく、廃番にさえならなければ後継テントとして買い続けたかったほどである。だが、ポールが多くて、設営が楽だったとはいいがたい。生地も厚かったし、ポールの数で重かった。
 サブにコールマンのドームテントを買ったのは、ひとえに張りやすさを求めたからだったが、初期のコールマンテントは、悪口をいいはじめたらきりがないほどクォリティーに問題があった。


■ ロッジ型からコールマンのドーム型へ 
 しかし、コールマンジャパンがはじめてテントをリリースして、そのデザインもさることながら、値段が魅力だったし、量販店で容易に入手できたので、ハイシーズンのキャンプ場がコールマングリーンで埋まった年が何年か続いた。
 どこまでいってもコールマンのテントが続き、自分のテントに帰れなくなった子供がコールマンテント村の中で泣いていたなんて話も珍しくなかった。なんせ、タープも椅子もテーブルも横に置いてあるツーバーナーも全部似たり寄ったりのコールマン製品である。大人だってどこが自分たちのサイトかわからなくなって当然であきれた記憶がある。

 余談になるが、コールマンテントの攻勢がはじまる直前にクルマを使ったキャンプのブームがきた。「オートキャンプ」なる和製英語がモーターリゼーションの世相とあいまって、その後の4WDブームの前触れのようにリクリエーションとしてのキャンプが注目された。キャンプ場に並んだテントは重いスチール製のポールで組み立てていくロッジテントだった。
 多くのロッジ型が量販店で信じられないような安価で売られていた。激安だけにひどい製品もあったろうし、何よりも設営と撤収の手間は正視に耐えないほどだ。コールマンテントはその後継テントにぴったりだったともいえる。

 わが家のダルセパクト時代がコールマンテントと重なるとはいえ、10年以上続いた。最後はさすがに防水機能が落ちてきたものの、ほかのテントへの買い換えは念頭になく、大々的に防水加工をやる気になって防水液や刷毛を準備もしたほどだった。
 ダルセパクトの時代は、ちょうどタープが出現し、まもなくメッシュタープへ進化し、現在のスクリーンタープの原型が定着する時代の変遷と重なる。


■ タープがたちまち進化を遂げた 
 虫嫌いの奥さんや子供たちとキャンプへきたとき、とくに夏場はランタンの光めがけて飛んでくる虫が悩みのタネだからだろう、タープの側面にメッシュを垂らしたような不格好なシロモノが発売された。
 いつもキャンプにつきあってくれる小学生の姪のために、ぼくもコールマンの製品を買った。スチールのポールはなんとも粗悪品で買ってすぐに後悔した。デザインもひどかった。二度目の使用時、突風にあおられて傾き、ランタンにメッシュが絡んで穴が開いたのをこれ幸いと廃棄処分にした。

 メッシュの外側にウォールをつけたスクリーンタープがすぐにリリースされていた。絞り込んだ候補はふたつ。どちらもコールマン製品であり、パラワイドとスリーポールスクリーンタープだった。前者のポールと後者のポールを見比べたらひと目でその差がわかる。ぼくが選んだのは前者のほうだった。
 ベージュ&イエローのダルセパクトとグリーン&ベージュのパラワイドではカラーバランスがよくないが、ぼくは無頓着だった。スクリーンタープがいらない季節は、スノーピークのレクタングラーやら同じくスノピのヘキサを使い分けた。

 レクタングラーは現在も3枚が手元にあり、グループキャンプのときにずいぶん重宝した。スノピでありながらカラーがいずれもアイボリーだけという時代だった。
 2枚のヘキサのほうも1枚はアイボリーでソロ用に小ぶりのものを買ったが、ほとんど使わないでキャンプ入門者に進呈した。
 これらもまた写真のようにダルセパクトとはバランスがとれないが、まあ、使えればいいじゃないか。そんな感覚だった。


■ クレーム対応に不信感が残った 
 小川キャンパルのテントであるスクートとスクリーンタープのスクリーンキャビンは、ほんの偶然から衝動買いした。当時、毎月のキャンプをご一緒するようになったご夫婦といきつけのアウトドア用品の店でこれらを見つけた。ちょっと使ってみようか程度のノリでそれぞれにセットで買った。はじめてテントとスクリーンタープがジョイントできてその便利さに満足した。
 テントの広さや高さは申し分なく、スクリーンキャビンも大人4人と犬4匹がくつろぐのには十分だった。なんとなく心細さを感じつつもシンプルな設計だけに故障の可能性も低いだろうとタカをくくって使い続けた。なんせOGAWAのブランドである。イマイチのデザインもがまんできた。
 
 設営直後に「あれ?」と異変に気づいたのは1年も経たない、たぶん半年くらいのころだった。わが家のスクリーンの天井に多数のピンホールを見つけたのである。隣のサイトのスクリーンも同じだった。まるでプラネタリウムにいるような光景だった。
 東京へ戻り、ふたつのスクリーンを販売店に持ち込んだ。顔見知りの店長は、「そんなクレームは一件もきていない」とケンもほろろだった。それでも小川キャンパルへ送ってもらい、あとは当事者同士の話し合いとなった。
 まもなく、担当者から電話がかかってきた。彼もまたそういうクレームは一件もないのだから、使い方が悪かっただけだと強弁を続けた。昨日今日キャンプをはじめたのならそれで引き下がるだろうが、これは明らかに素材が不良品だからだとぼくも譲らなかった。

 長い電話のやりとりで、担当者は渋々だが、「交換はできませんが、新しいのを買い取ってください。価格は100円くらいでどうでしょう?」と提案してきた。
 ショップ経由で新たに送らてきた幕体の手触りは以前のものよりはるかにしっかりしている。そして、ぼくの手を離れてからは従姉夫婦が何度か使い、いまはこの2年ほどキャンプを一緒にしているF家のスクリーンタープとして健在である。
 実質の交換から10年、ピンホールも見えずに役立っている姿を見るにつけ、やっぱりあれは不良品の素材だったのだと確信を強めている。あのとき、キャンプ仲間と同時に同じ製品を2張り買っていたからこちらも冷静にクレームを展開できた。この対応で、ぼくのOGAWAブランドへの信頼は一気にしぼんでしまった。

わが家のテント遍歴 ~初期のころ~

2015-12-14 22:45:04 | Weblog

■ ひとり遊びで重宝したツエルト
 コメントでテントに関するご質問をいただいた。その過程で、10年ばかり前に使っていた小川キャンパルの「スクート」の感想を求められて気づいたが、あのテントは短期間で酷使しながら、引退させてしまったのも早かった。これといった不満があったわけではないが、後継のテントを買ってしまったのが災いして早期の引退となった。

 ぼくが最初に買ったテントは、記憶では昔ながらの三角テントだった。まだテントにフライなどなく、本体のすべてに防水加工を施している時代だった。それでも素材はすでにコットンではなく、化学繊維(記憶では「ビニロン」という名称だった)でできていた。
 コットン製のテントに比べればかなりコンパクトに畳めたが、それでも現在の常識とはかなりかけ離れたテントだった。
 
 若いころ、ひとりで出かけた野遊びで、一夜の寝室にいちばん適していたのは「ツエルト」だった。登山者がビバーク用に持参する簡易テントである。二本の樹木にロープをからめて張るだけの、防水機能も脆弱な代物だった。
 シュラフも粗末だったし、まだ、ロールマットなんてしゃれたものはなかったので、ほかに、厚手のグランドシートを二枚持参し、一枚を地面に敷いてからツエルトを立ち上げ、もう一枚はタープのようにして使っていた。どちらもいまもクルマに常備し、キャンプのたびに使っている。
 当時の写真は一枚もないが、楽しい記憶はたくさんある。二代目のツエルトにはポールが付属したていたと記憶しているが、使った記憶があまりない。

■ 過去のエスパースの意外な弱点
 登山雑誌や釣り雑誌でアメリカで流行しているというバックパッキングの様子がしきりに紹介され、もっと情報がほしいと思っていたところに芦沢一洋さんの「バックパッキング入門」が出版されて一気にのめりこんでいった。
 同時にしばらく立ち直れないほどのショックも受けたのは、その精神よりも道具たちの多彩と、機能、そして、野遊びの内容の先進性ゆえだった。

 当時、日本のバックッパカーたちのバックパッキング用のテントしてしきりに紹介されたのはダンロップのコンパクトな登山テントだった。インナーがオレンジ、フライがブルーの信頼性のあるテントという評判だった。
 ぼくが知らない間に山岳テントはどんどん進化していた。いつか、ダンロップのこのアルパインテントをと思っていたが、何年かして買ったのはカモシカスポーツのオリジナルである「エスパースミニ」だった。
 当時、仕事で知り合ったクライマーの連中からこの高機能のテントがあると教わり、真冬、雪の中でも使えるようにとフルフライシートと内張りまで一緒に購入した。

 春先の残雪の上でのキャンプをエスパースで何度か経験したが、真冬の本格的なコールドスノーキャンプとなると、その機会がないまま過ぎた。冬山ではなかったが、どこだかのアルプスを縦走中にエスパースのポールが折れてしまい、途中で下山してきたというアルピニストに出逢った。
 当時のエスパースのポールはグラスファイバーを素材に使っている。折ろうとしても折れるものではないが、ひょんなことから簡単に折れてしまうという話も聞いた。すばらしいテントだっただけにショックも大きかった。


■ 雨や風に絶大な信頼のムーンライト
 次のテントが、モンベルのムーンライト3だった。まだ淡いグリーンしかなく、夜、このテントの中でライトを点けると闇のなかに美しく浮かび上がった。大人3人が寝られるというふれこみだったが、実際にはせいぜいふたりまで。
 これをひとりで使うとなかなかリッチな気分になれた。ほかに中型の犬たちと一緒に寝るにもちょうどいい大きさだった。このころは、テントを背負っていくスタイルではなく、クルマを使っていたから犬連れのひとり野遊びの場合ももっぱら3型を愛用していた。

 基本設計が昔ながらのテントのイメージを踏襲したというのが好ましかった。すでにドーム型テントが主流の時代になっていたが、日本のフィールドにはA型フレームと呼ばれる三角形の屋根型テントのほうがよく似合うと思えてならなかった。
 むろん、頭がつっかえてしまうこうした屋根型よりも丸みを帯びたドーム型のほうが居住性はいい。それでも、もっぱらテントは寝るだけという使い方だからなんら苦にはならなかった。そのうち本格的なタープが出現し、野営地で寝る以外の時間はタープの下で過ごすのが当たり前になっていった。

 ムーンライト3の二代目をアイボリーに変えたのは、目新しさもさることながら、従来の淡いグリーン色が目立ちすぎて居心地の悪さがあったからである。オプションだった前室がフライに標準でついたのもうれしかった。
 初代のムーンライトから、モンベルのテントの大雨や強風の強さには目をみはるものがある。いま、ぼくはムーンライト5のテントを使い、なぜか大雨に見舞われてきたが、いずれのときもタフであることに変わりはなかった。 

■ 企業も製品も進化するモンベル
 初代のムーンライト3を使っていたころ、女房がキャンプに加わるようになった。リリースされてまもないモンベルのタープを買った。同じ形はすでに廃番となっているが、基本的にはヘキサのタープである。色は例の淡いグリーンだった。
 嵐のような大風の中で、張り綱にゴムのストレッチコードをかませたとはいえ、このタープは朝まで雄々しく耐えた。しかし、色が淡い分、強い日差しが抜けて日陰は暑く感じた。
 
 もうひとつ、経年劣化が早かった。コーティングがはがれ、表面がちぎれて垂れ下がってくるようになった。たぶん、初期の製品ということで、変わったデザインと素材は失敗作だったんだろう。
 当時のモンベルの製品にありがちなのだが、このタープを付属のスタッフバッグに収納しようとするときつくてひと苦労だった。モンベルは製品ばかりじゃなく、企業ポリシーも進化を遂げている。
 
 二代目のムーンライト3と一緒に買ったミニタープHXはブルーブラックのようなダークフォレストという名らしいカラーである。青系のタープは顔色が悪くなるから使わないほうがいいという専門誌の記事を読んだことがあるが、なんともナンセンスな意見だ。
 タープの本来の役目が日陰作りだとすると、淡い色よりも濃い色合いのほうがいい。可能なら黒がいいちばんいいかもしれないが、さすがにそれはやりすぎだろう。そうなると、モンベルのダークフォレストはいちばんぴったりに思える。

冬のアストロドーム&ムーンライトについて

2015-12-12 03:01:13 | Weblog
■ コメントにお答えして
 くんくんさん、コメントをいただき、ありがとうございます。

 ひとさまにアドバイスできるほどテントやタープ類に精通しているわけではありませんが、ムーンライト5とアストロドームを使ってみた者としての感想をお伝えいたします。

 ブログにも書きましたが、ムーンライトの設営の容易さは目を見張るほどです。わたしは3型を長年使い続けてきましたが、大きい5でもまったく遜色ありません。このへんの情報はご存じだと思います。

 アストロドームですが、モンベルお得意の吊り下げ式ではありませんし、やっぱりガタイが大きいので取り回しは必ずしもいいとはいえません。正直なところ、これまで使ってきたスクリーンタープ類のなかで「張りやすさ」の点数は低くなります。むろん、これもおっしゃるとおり「慣れ」でしょうが。
 その代り、メーカーの設計思想が反映した風雨への工夫を見るにつけ、信頼感はかなり高得点になります。

 現在、わが家はもうひとつ、スノーピークのリビングシェルにインナーテント&フルフライを使っています。じゅうぶんな広さと快適さを確保できているので問題はないのですが、いかんせん、設営と撤収に手間がかかるのと積み込みにかさばるので短期滞在用にモンベルも買いました。

■ よほどの大雪の中でなければ
 ムーンライトでは、5にするか7にするか迷いましたが、かさばらないようにと5をチョイスした次第です。小柄な夫婦とコーギーが寝るにはまったく不満はありません。問題は、テントの中で立ち上がって着替えが可能かという点ですが、身長が165センチと150センチのわたしたちには首をすくめればほぼ問題なく使えます。

 ただ、ここに大人が3人寝ると、着替えの入ったダッフルバッグを置いたままではギリギリです。犬は居場所を取確保するのに苦労しています。それらの荷物を夜はアストロドームに移したり、ムーンライトのアストロドームとジョイントしたのとは反対側の出入口に予備のグランドシートで包んで置いたりしてもいます。

 これらのセットを南関東の冬のキャンプに使うのはどうかというご質問ですが、通常のキャンプなら問題ないでしょうし、積雪期でもよほどの大雪でないかぎりは支障ないと思います。
 まだ真冬に使ってみたことがないので責任あるお答えはできませんが、わたし個人は経験的にモンベルのテント類には絶大な信頼をおいています。山岳用に流用しようとは思いませんが平地のキャンプでの雨風への強さは抜群です。

■ 心配なら冬山用のテントで
 居住性として寒いかどうかですが、しょせんはスクリーンタープとテントです。風をさえぎり、外気を遮断できるレベルだったら御の字です。テントで寝るときも、快適さはシュラフの性能に頼る部分が大きいわけで、ほかに地面からの冷えをどうやって遮断するか等のほうがはるかに重要です。

 冬のキャンプも環境下でまったく状況が異なりますが、わたしがソロでやっていたころはスクリーンタープなどまだなかったので、テントはカモシカのエスパースミニの冬山仕様でした。
 本格的な冬用なら内張りのあるこうした登山テントに頼るほうが無難でしょう。いささかオーバースペックでしょうが、突然の風雨や大雪にも対応可能です。

 「リサービア」についてはまったく情報を持っていません。
 10年ほど前に同じ小川キャンパルのスクートというテントを使っていました。基本的な構造は同じようです。非常にシンプルで設営も撤収も楽でした。むろん、春夏秋冬のキャンプを楽しんでいました。
 申し上げるまでもなく、リサービアはブランド的には信頼できる製品ですし、テント単体で見ると居住性もムーンライトより上でしょう。
 
 以上、ご質問のお答えになっていればいいのですが。

自分にあったキャンプ用の椅子をもとめて

2015-12-10 22:48:16 | Weblog
 椅子を買った。Onway製の「スリムチェア」である。  
 実物はどこのショップにもないので、ネット上の情報だけで注文した。実物を試してから家族の分も考えようと思い、とりあえず1脚だけ頼んだ。送料が700円かかったが、それで8,368円だからリーズナブルといえるだろう。 
 
 色はブラウン、ピンク、グレーがある。実はほぼ同じ形状で気に入っているコールマンの椅子を持っていて色はブラウンである。今回買ったのはグレー。なかなかいい色に思えたので迷いはなかった。
 注文した翌日には到着した。色には満足しているが、期待していたよりも背もたれがうしろに倒れているので、さて、どこまでキャンプに適しているかは使ってみないとわからない。
 
 若いころ、キャンプ用の椅子なんてどこにもなかった(アメリカ製のバギーチェアはあったが、ビンボー人にはとてもじゃないけど手が出なかった)ころの不便さが身にしみているせいか、よさそうな椅子を見つけると抑制がきかなくなることがある。今回はまさしくそれだった。
 
 40年前、はじめて買った椅子はキャンプ用ではなく、木製のフレームに帆布製の座布と背もたれがついたディレクターズチェアだった。かさばるので、当時の愛車カローラに積むとトランクルームがあらかたいっぱいになってしまう。それでもサイトで過ごす快適さは申し分ななかった。
 
 英国製のガタバウトチェアは27年前の購入のはす。いまもブルーのヤツを4脚もっている。スリムに収納できるのはいいのだが、お尻が沈んでしまい、ぼくはどうにも長時間座っていられない。焚火の火の粉が飛んでくると、座布に穴が開いてしまうのが悩みだった。
 前後してキャンプ用のさまざまな椅子を試してきたが、実際に買ったのはやっぱり収納が楽なものがほとんどだった。最初のディレクターズチェアで懲りていたからだろう。

 スノーピークの「フォールディングチェア」は安定感があってよかったが、収束型ではないから2脚以上となると積み込みがいかんせんかさばる。次に目をつけたのが、同じスノピの「Takeチェア」でいまも愛用している。
 ただ、部品のネジが取れやすく、これまで何度か取り寄せてきた。スノーピーク製品は、意欲的ではあっても、値段がおしなべて高いわりにこうした細部の完成度が低い場合が往々にしてある。
 
 次に触手が動いたのはスノピのローチェアで、3脚まとめて買う寸前までいったが、女房がいま使っているTakeチェアのほうがいいというので思いとどまった。値段もスノピらしく割高である。つかっていないので細部の完成度はわからない。
 ローチェアについては、かつてユニフレームの製品を使っていたことがある。焚火用の椅子にはぴったりなのだが、手持ちのテーブルだとさすがに低すぎた。スノピのフォールディングチェアを買ったのを機に捨ててしまったのをいまも悔やんでいる。
 
 Takeチェアと一緒に使っているのがコールマンのリラックスチェア(現行品とは別)で、いちばん気に入っている。2脚あるがすでに廃番なので同じものは買えない。
 今回買ったOnway製のスリムチェアとほぼ同じように思えるが、座り心地は微妙に違うような気もする。次回のキャンプでたしかめたい。これが生涯の友となってくれたらありがたいのだが。