■入手の容易さとコストパフォーマンスで
キャンプでの食事作りの熱源は、焚火にはじまりホワイトガソリンを燃料とする各種のストーブから、いまでは家庭の食卓で鍋料理のときなどに使うカセットボンベのコンロへと変わってきた。具体的には、スベア123やオプティマス8R、ピークワンストーブ、そして、ふたつのコールマンツーバーナーと使い継いできて、その間もいろいろと試したものはあるが、この10年ばかりはすっかりカセットボンベのコンロに頼り切っている。
カセットコンロは、真冬のキャンプでいくぶん火力が落ちる不便以外、それをカバーしてあまりある便利さのためにわが家のキャンプでの調理用ストーブの主力となった。燃料が日本のどこへいっても手に入るし、安価だし、安全性も高い。使い終わった空のカセットは再資源として活用できるからだろう、たいていの自治体で引き受けてくれるので、ぼくが利用しているキャンプ場では「持って帰れ」というところはない。
わが家がキャンプで使うようになった初代のコンロは家庭の食卓用だったから風防もなく、風よけを別に用意したり、工夫したりして使ってきた。
右の写真のマーベラスが発売されたころでも先代のコンロは満身創痍ながらまだまだじゅうぶん使用に耐えていたが、マーベラスのもつ堅牢さと風防を兼任するフタが決め手となって、値段が高いとは思いつつ購入した。
日本という国で、ましてやクルマを使ったキャンプならこのカセットボンベを燃料とするコンロに勝るものはないと思う。ただ、煮炊きのコンロにはカッセットボンベを使いながら、ランタンはホワイトガソリンをいまも使い続けている。
キャンプの入門書には判で捺したように、「燃料は統一しましょう」と書いてある。そんなセオリーなどぼくはまったく無視して、ランタンはホワイトガソリンを燃料に使うコールマンのランタンたちをケースバイケースで使いわけている。ぼくにとって、これらのランタンこそがキャンプの象徴なので、今後も退役させる気はまったくない。
■コンロもランタンも無駄ではなかった
この春のキャンプにデビュー させた小道具たちの中にカセットボンベを使うユニフレームの「ツインバーナー」と「フォールディングガスランタン」があるのは「災害対策用品」を兼ねたからである。言い訳ではない。本気でそう思っている。ボンベは予備を分散して保管してあるし、古い備蓄分からキャンプで使っては交換している。
コンロはマーベラスがあるし、家にも食卓でたまに使うのもあるし、倉庫にはキャンプでこれまで使い倒してきた古いタイプが保存してある。クルマの中には非常用にSOTOのコンパクトなシングルバーナーが入っている。
それでも災害時に向けて安定感のあるツインバーナーがほしかった。専用のスタンド(今回は調理台として使ったが)まで買ったのはそのためである。
ランタンだが、キャンプではテントの中で使うのにカセットボンベのほうがホワイトガソリンよりも安全性が高いのではないかと思ったからだ。EPIやプリムスなどのガスカートリッジのランタンを卓上で使うという手もあるし、経験ずみだが、さすがに燃料を三種類用意するのは面倒である。まずは、未経験のカセットガスのランタンを使ってみたかった。
もうひとつ、もし、災害に見舞われたときもガソリンよりもカセットボンベが救援品でくるのではないかと思うからだ。そんなわけでランタンも用意した。
ツインバーナーの使い心地は想像以上だった。火力が強く、コールマンのツーバーナーを怖がってきた家人は自動点火のこちらでも使うのをためらった。それほど火力が強かった。
ランタンの真価は使い続けてこれからわかってくるだろうが、ガソリンに比較してさほど照度が落ちていないし、むしろ、明るすぎるコールマンのランタンにくらべて適度な光量とさえ思える。マントルのせいもあるが柔らかな光は好感が持てる。シェルター内の専用ランタンにしたい。
■クルマのキャンプなら予備のコンロを
キャンプでのマーベラスの出番はもうないのかというと、それはない。少人数ならツインバーナーではなく、マーベラスを持参する。凝った料理は作らないで、手抜きとはいわず、シンプルを旨としているからだ。
それでも、たまには調理をしながらご飯も炊くから、焚火をする季節以外はやっぱりもう一個熱源がほしくなることがある。こんなときは、クルマに放り込んだままのSATOの折りたたみ式のシングルバーナーが役に立つし、寒い季節ならコールマンのピークワンストーブも持っていってたまには使ってやりたい。
クルマでのキャンプの場合、カセットにせよ、EPIなどのカートリッジ式にせよ、ガスを使う器具だったら、ぜひ、予備を持参したほうがいい。なんらかの理由で故障しないともかぎらないからである。
ぼくの経験だと、ホワイトガソリンを燃料とするコールマンのツーバーナーが使えなくなったことがあったし、EPIのカートリッジ式もキャンプ中に故障したことがある。どちらも使用後にきちんと清掃し、メンテナンスをしてやっていなかったからで、原因と責任はすべてぼくにある。
火器類が故障しても、キャンプ場を使うキャンプならたいてい管理事務所にレンタル品がそろっている。だが、24時間管理人がいてくれるとはかぎらない。こういうときこそ、ランタンなどと同じ燃料で使えるストーブがあるといい。
ほかに、いざというときのためのストーブなら、本当はそのへんに落ちている木の小枝や枯葉を燃料に使うサバイバルストーブの類が理想かもしれない。クルマの常備品にするなら、左の写真のFireBoxのような折りたたみ式もある。
ぼくもFireBoxのほかに似たような新旧の製品をいくつか持っているので、近いうちに実際に使ってレポートしたい。買った動機は、もちろん、「災害用品」としてであるが、誰も信じてくれないままだ。