
10年ばかり前までは、難民キャンプなみの混雑を嫌って東京でのんびり連休を過ごし、連休が明けてから有給休暇をとってキャンプに出かけていた。だが、5月もなかばを過ぎると強風に見舞われる確率が増す。台風なみといいたいが、台風以上の突風に遭遇したことも一度や二度ではない。
キャンプでの風対策は万全のつもりでいるが、5月以外のキャンプでそれらの装備やスキルが役立ったとことはほとんどない。台風が接近しているさなかにキャンプを強行するような素人ではないし、常に危険は避けているから当然といえば当然なのだが、5月の強風は現地へ行ってみないと状況がわからないことが多かった。
大型連休にキャンプに出かけるようになったのは、連れ合いがキャンプについてくるようになってからだった。連休が終わったあとのフィールドは、風さえ吹かなければ申し分のない静けさに包まれている。キャンプ場でも場所によってはほかにだれもいないという、なんとも贅沢なキャンプを楽しめることもある。
だが、連れ合いはその静けさを苦手にした。「ほかにだれもいないところで寝るなんて怖い」というのである。それと、世間が浮かれてレジャーを楽しんでいるときにじっとガマンをしているのも寂しいらしい。
かくして、信条を棚上げしてぼくも連休キャンパーとなってしまった。
連休に出かけていくようになっても、どうしてもやりたくないのが早々と予約をとってキャンプにいくというスタイルである。野遊びは自由であらねばならない。気が向かなければ出かけていかないことだってある。天候だって直前にならなければわからない。大雨の中で設営して、タープの下でちぢこまって過ごしたくはない。
だいたい、以前はタープなどなかった。ぼくたちはグランドシートとコードを利用していまで言うところのタープを張り、その下で過ごしていた。
人気キャンプ場になると、大型連休は予約で早々と満杯になる。人気の有無もさることながら、東京近郊のキャンプ場はどこも予約客でいっぱいになる。予約不要のキャンプ場の混雑ぶりは目をそむけたくなるほどである。
それでもその年の穴場キャンプ場の目星をつけて出かけていた。前の年は満員でも、翌年は余裕があるような予約不要のキャンプ場がいくつかあるものだ。ネット時代になって、そうしたキャンプ場の情報について口をすべらせたら、たちまち満杯になって弾き出されてしまったことがあった。
しかたなく、3年ばかり前からは遠くを目指すことにした。東京を遠く離れると、余裕のあるキャンプ場がまだいくつかはある。正確には「あった」。だが、それもキャンプ人口の増加ですっかりセオリーが崩れてしまった。
今年利用したキャンプ場は、直前になってキャンセルが出たために、幸運にも行くことができたキャンプ場である。5月3日から6日までの3泊4日、お世話になった。初日、2日目と満杯だった。3日目は閑散としてなんとも静かなものだった。
今回、例年の年越しキャンプで必ずお会いしていた名古屋のご夫妻に遭遇した。
「ゴールデンウィークでこのキャンプ場がこんなに混雑するなんてはじめてだ」とやはり驚いておられた。
キャンプ場のみならず、クルマの混雑も例年以上だった。
初日の朝の渋滞を避けて深夜に高速道路へ乗ったのに、午前1時で八王子ICあたりは渋滞が発生していた。西を目指すクルマの量も例年より多い。どこのサービスエリアもパーキングエリアも仮眠をとるためのクルマであふれていた。もっとも、深夜に走ればETC利用の料金が半額になるという制度のせいかもしれないのだが……。

そんなサクラ(ヤマザクラ)の梢の下に設営することができた。
今回のソフトハウスはスノーピークの「ランドブリーズ5」と「ランドブリーズ・リビングシェル“シールド”」の組み合わせ。トンネルは使わなかった。
小型犬2頭を連れた同行者のためにモンベルの「ムーンライト テント3型」も張った。
ランドブリーズやリビングシェルの設営はこれで6回目だからかなり慣れてはきたが、張り綱の数には相変わらず辟易してしまう。よほどの風が吹かないかぎり、全部をペグで固定する必要は感じない。あるいは、雨の予報がなければ使わずにすませている張り綱もある。
これがトンネルも使うとなると、「おい、おい、やめてくれよ」とばかり吹き出してしまうような張り綱もあっていくつかはパスしている。「なんでもかんでも張り綱で固定すりゃいいってもんじゃないだろうが」と声を大にして言いたい。
スノーピークの布製品は、たしかに素材がいい、縫製もいい。ようやくカラーリングもよくなった。海外某メーカーのパクリからはじまっているかどうかは別にして、デザインもなかなか垢抜けている。
だけど、張り綱でギチギチに押さえ込まなくてはならないとなると基本設計に問題があると考えざるをえない。布製品に関しては、やっぱりまだ発展途上にあるのかな?