
雨のキャンプが憂鬱になった。
わりと最近までは、多少の雨の予報が出ていても、よほど荒れないかぎり、そして、撤収が、晴れないまでも曇りになりそうだったらどんどん出かけていた。土砂降りのなかでの撤収はほとんど記憶にないが、それでも雨のなかでの撤収は何度か経験している。
いまでは梅雨の時期にわざわざキャンプに出かけなくなってしまったが、つい数年前までは、週末が梅雨の中休みにかかると知るや、週末に休暇をからめて近場のキャンプに出かけていた。むろん、雨支度はしっかりやって……。
レインウエアはどんな時期のキャンプでも持参するが、この時期だと足のほうもそれなりの準備が必要になる。フィールドが濡れているのを想定していったほうがいいからだ。湿度も高いから雨が降らなくても靴が濡れやすい。
これから夏にかけては、特に朝露で足元が濡れやすくなる。そんなときにちょうどいいのがガムシューである。30年以上愛用してきたL.L.Beanのメインハンティングシュー10"(写真後方)、通称・ビーンブーツ10"は、雨露への威力は絶大である。だが、脱着に手間がかかる。
元々、湿地帯でのハンティングを想定したブーツだけにピーカンの夏場のフィールドにはいささか大げさに映る。
ビーンブーツ10"は、雪の日の通勤に履いていくことはあっても、都会の雨程度だといかにも無骨すぎる。やはりフィールドにこそ似合うフォルムである。都会の雨にちょうどいいのがローカットのガムシューではないかと思いつつ、ついつい買いそびれてきた。まして、梅雨どきのタウンシューズに申し分ない。そう思いつつ、長い間、無精を決め込んできたが、今年、ようやくその気になった。
異例の早さで入梅となったからでもあるし、原発事故のあおりを受けての節電対策で、会社でのクールビズが前倒しになったのもガムシューを買うきっかけになった。
フィールドでの用途よりも雨の日の通勤時に履くためとはいえ、ニューヨーカーならいざ知らず、さすがに東京では、還暦過ぎた男がダークスーツにガムシューで行動するには度胸が要る。むろん、それが似合うひともいるだろうが、ぼくでは、とてもスーツを着てガムシューを履きこなすだけの自信がなかった。
だが、クールビズが前倒しになり、早々とダークスーツを脱ぐことができた。チノパンにブレザー、そしてガムシューなら、ぼくでもなんとかカッコがつきそうに思えた。
ローカットのガムシューは、元祖L.L.Beanをはじめ、Danner、BEAMSなど信頼に足るいくつかのメーカーからリリースされている。ほんとうは、それらすべての製品を実際に履いて、履き心地を試したかったが、行きつけのショップにはDanerスラッシャ-3アイレットだけしか置いてなかった。
しかも、ぼくの足のサイズに合う製品は展示品一足のみ。ほかのメーカーの商品との比較検討ができないのが不満だったが、履いてみたらドンピシャリ! 履き心地はまるで誂えたようである。まして、Dannerの製品なら文句のつけようがない。躊躇なくその一足をゲットした。
以来、雨降りの通勤が苦にならないどころか楽しみになった。そんな今年の梅雨である。ついでに、雨のキャンプが憂鬱ではなく、楽しみに変わってくれるとさらにいいのだが……。