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私家版 野遊び雑記帳

野遊びだけが愉しみで生きている男の野遊び雑記帳。ワンコ連れての野遊びや愛すべき道具たちのことをほそぼそと綴っていこう。

温泉に疲れて大雨の下で休息する

2015-09-29 22:56:17 | Weblog

■ たまにはサイトでのんびりしようじゃないか
 駒ヶ根の二日目は、木曽方面にかけて午後から雨の予報が出ていた。しかも、まとまった雨量らしい。朝は雨こそ降ってはいなかったが、雲がどんよりたれこめていて、遠出をしたいという気になれない。
 そこで、この日はどこへもいかず、まずは休暇村内にある「露天こぶしの湯」で温泉へ入り、そこで昼食をすませてから駒ヶ根という街を見てみようということになった。
 
 まずは管理事務所が開くとすぐにとりあえず二日分の延泊の手続きを終えた。もう一日どうするかはまた先々で考えればいい。
 前夜からの先客三組のうちの二組は、朝早くから撤収をはじめていた。雨の予報に追われているとの理由もあったろうが、このキャンプ場のチェックアウト時刻が午前10時と定められているので朝があわただしくなる。ほかのキャンプ場と比べるまでもなく、かなり早い。

 「何もしない。どこへもいかない」と決めたキャンプ本来のキャンプはなんとものんびりできていい。女房がキャンプへくるようになってからサイトでのんびりする当たり前のキャンプから、クルマであちこちへ出かけていく観光キャンプに変わってしまっている。動いているのが嫌いじゃないが、どうも忙しくていけない。たまにのんびりできるとホッとする。
 
 退屈してきたら持参したダッチオーブンのメンテナンスをすればいい。10インチポットとサービングポット、それにスキレットも持ち込んでいる。ダッチオーブンのメンテナンスについては、日本における「ダッチオーブンの伝道師」たる菊池仁志さんのご指南にしたがって最初はやっていたのだが、そのうち、自分なりの考えでまったく別の、もしかしたら邪道かもしれない流儀でやるようになった。正統派の熱心なダッチャーの方々の非難を覚悟で、いずれレポートしたい。


■ 何年ぶりのキャンプ温泉だろう
 ひとりでキャンプをやっていたころは、キャンプで温泉に入るという発想がまったくなかった。
 ちょうど20年前、家族に迎えたばかりのわんことふたりで奥日光の湯西川温泉郷の近くのキャンプ場へ出かけたとき、夜とともに数組いたグループが消えてしまい、戻ってきた彼らがいずれも風呂上がりだというのが遠目にもわかった。有名な温泉が近いのだからあり得る光景だったが、そんな彼らがぼくの目には物珍しかった。

 やがて女房も一緒になって冬もキャンプを楽しむようになると、夜、寝る前に焚火で暖をとるだけではなんとも寒い。まだスクリーンタープが出現していない時代である。
 女房がキャンプへくるようになって、まずテントを新調した。ダンロップのダルセパクトという、ロッジ型とカマボコ型とドーム型をミックスしたようなテントである。荷物を収納できる前室をそなえており、インナーの寝室を外せばスクリーンタープのように使える。ぼくが買ったのはインナーが小さくて前室が広めのタイプだったが、前室をリビングスペースとするにはやっぱり狭く、寒い時期は相変わらず焚火の前で過ごしていた。

 日帰り温泉があちこちに出現しはじめた時代だった。ぼくたちがホームグランドのようにしていた田貫湖キャンプがある富士宮にもゴミの焼却施設の余熱を利用した「天母(あんも)の湯」ができて、ぼくたちはキャンプの度に通うようになった。
 もともとふたりとも風呂好きだったから、ふだんは毎日風呂を沸かして入っている。キャンプでわんこをクルマの中に置いて日帰り温泉にいくのが苦痛ではなかった。むしろ、キャンプの新たな楽しみになっていた。


■ 冬でも温泉にいかなくなったわけ
 このころのぼくたちのキャンプは四季を通じて日帰り温泉に通ったし、日帰り温泉ばかりか、キャンプ場によっては近くのホテルの温泉も利用した。それをピタリとやめてしまったのは、詳細は書かないが、ゴールデンウィークで出かけた富士五湖エリアにある日帰り温泉での不潔な光景を女房が見てからだった。

 元々は、2日や3日風呂へ入らなくても森の中では平気でいられる。これがぼくらのアウトドアでの基本である。もし、汗ばんで不快だったら、昔のように濡れタオルで身体を拭けばいいし、いまどきのキャンプ場ならシャワーくらいそなえている。
 温泉に出かけなくなった理由のもうひとつは、スクリーンタープの登場で、真冬でも焚火に頼らなくても暖かく過ごせるようになったからである。身にまとう冬装備も冬山なみに充実して寒さ知らずになっていた。

 かつては焚火は調理のために、そして、お湯を沸かし、寒い時期は暖をとり、団欒のためのかけがえのなりアイテムだった。少なくともぼくにとって、焚火とキャンプは切っても切れない関係だった。
 飯盒をはじめ調理道具を煤だらけにし、暖をとるために手をかざしても身体の前面は暖まっても背中が寒い。背中を温めれば火に向いていない顔から身体の前が冷えびえしてしまう。焚火を囲んでの団欒では、風下に座った不運な誰かが煙でいぶされてしまう。それが焚火だった。

 以前はテントの中でガソリンランタンを灯していたばかりに二酸化炭素中毒で亡くなる事故が起こっていたが、フライシートで雨をよけてテント本体に通気性をもたせるようになって、そうした事故は聞かなくなった。
 電源サイトにスクリーンタープを張り、その中に電気ストーブを引っ張りこめば酸欠の危険はない。石油ストーブをもってくる剛の者もいるが、ベンチレーションに気をつかえば大きな問題はないだろう。どちらにしてもキャンプらしくはないけれど……。


■ キャンプで温泉がヤバくなったなんて
 かくして、ぼくと女房にとって、キャンプでの温泉は10数年ぶりだった。
 最近の日帰り温泉施設の実情を知らないので論評できる立場にはないのだが、露天こぶしの湯は、こうした旅行村に造られた温泉施設としては標準的であろうと思われる。施設としては新しくないが、きれいに管理された気持ちのいい温泉である。温泉大好きのせがれはたっぷり入っていたが、ぼくも女房も申し合わせたようにさっと入ってすぐに食堂へ移動して彼を待った。

 久しぶりのキャンプで温泉はたしかに気持ちよかった。だた、汗を流した程度だったにもかかわらず、食後に駒ヶ根の街へ移動してから影響が出た。スーパーマンでの買物の最中、「なんか湯当たりしたみたい」と女房がつぶやいたのである。
 実はぼくもけだるくなっていた。湯治宿の畳の上でごろりと横になりたい気分だった。

 スーパーから駐車場へ出ると、雨が降りはじめていた。スマホに大雨をもたらす雨雲が迫っているとの警報を受け取った。身体のだるさなど忘れて急いでサイトへ戻ってまもなく、雨は本格的な降りになっていた。
 スクリーンタープにも雨水が流れ込んできて、足下はびしょ濡れになっている。モンベルのムーンライトには絶大な信頼をおいているが、念のためにスクリーンタープのアストロドーム内に移動して高い位置に置いた。万が一にもダウンのシュラフを濡らしたくなかったからである。

 この日、遠出しなかったのは正解だった。
 誤算だったのは温泉での湯当たりだが、午前中に入る温泉が老いの身にこれほどこたえると知ったのは収穫だったかもしれない。
 かくして、午後5時過ぎまでの2時間あまり、雨の音を聞きながら、ぼくたちはひたすらスクリーンタープで無聊をかこつくとになる。湯当たりした身体を休めるちょうどいいひとときでもあった。
(つづく)


木曽路再訪のキャンプは駒ヶ根から

2015-09-27 03:19:36 | Weblog

■ 秋雨前線に濡れながらの出発
 9月、駒ヶ根キャンプ場へ出かけた。正式には「駒ヶ根高原アルプスの丘 家族旅行村」というらしい。
 最初に予定したのは、駒ヶ根から決して近いとはいえない松本市奈川の「高ソメキャンプ場」だった。だが、夏休みをとった2日が高ソメの定休日だったため、まずは駒ヶ根で一泊だけして、翌日、高ソメへ移動しようと予定を変更した。

 今回のキャンプのテーマは「木曽路再訪」。初日に馬籠宿と妻籠宿を久しぶりに訪ね、翌日、はじめての奈良井宿に出かける算段だった。
 まずは2日(水)の午前7時に出発、横浜町田ICから東名道へ乗り、新東名、伊勢湾岸道、東海環状道、中央道で中津川ICへ至って馬籠宿と妻籠宿を訪ね、夕方に駒ヶ根キャンプ場へ入ってテントだけ張って寝るという予定である。
 持参するテントはモンベル5型だから10分もかからないで設営できる。

 問題は空模様だった。
 8月から列島に居座ったままの秋雨前線は、若干の衰えは見せはじめていたが、まだ消える気配はない。甲信越地方の天気予報は、キャンプに絶望的ではないがかろうじてなんとかなりそうな様子だった。
 
 予定は出だしから狂った。まず、小雨の中の積み込みに思いのほか時間がかかってしまった。出発してからも予定どおりにはいかない。ルーフキャリーにめいっぱいキャンプ道具を積み込んだので慎重に走行せざるをえず、何度かSAやPAへ入ってキャリーの状態を確認し、雨除けに荷物を覆ったグランドシートをなおしたりしていたので、最初の目的地の馬籠には2時間遅れの午後2時の到着となってしまった。
 
 それでも途中、静岡へ入ってから、空は久々の太陽が秋の陽射しを暑いくらいに照らしはじめた。一週間前はずっと雨が降っていたのだから幸運というしかない。
 予定した「まごめや」はわんこも入れるというのでまずはここを目指していた。しかし、すでに2時を過ぎていたのでもう店じまいをはじめている。情報では15時まで営業のはずだが平日なので一時間早い店じまいなのか。
 腹ペコをかかえたわれらが哀れに見えたのか、頼み込むと蕎麦を食べさせてもらうことができた。


■ まずは最初の野営地へ
 9月とはいえ、3時になろうとして陽射しはそろそろ夕刻への色を帯びはじめていた。
 水曜日という平日のためもあるだろう、この時刻の馬籠宿自体、まるで活気がない。人の姿もまばらである。馬籠のみならず、妻籠への愛惜もすっかりしぼんでしまった。ぼくらはそそくさと中津川ICへ戻り、駒ヶ根を目指した。
 
 駒ヶ根も高ソメのキャンプ場も、昔からガイドブックなどでその存在だけは知っていた。さすがにわが家から距離があるので利用する機会はなかったが、今回は3日間の夏休みに週末の2日を加えた5連休という、ぼくとしては長い休暇がとれたのと、家族三人の夏休みになったので期待を胸にやってきたわけである。

 駒ヶ根のキャンプ場はきれいな休暇村のなかにあった。
 ギリギリまで出発できるかどうかわからなかったので予約はしていなかった。「希望のサイトは?」と訊かれても、むろんわかるはずがない。まずはひとまわりさせてもらった。
 想像していたよりも小ぶりなキャンプ場だが、雰囲気はわるくない。植生にしても、松が多いというのは写真でわかっていた。松以外の木々もあってどうやら気持ちよくひと晩過ごせそうである。
 チェックインの手続きを終え、サイトで設営をする段になって翌日以降をどうするか家族三人で相談した。高ソメへ移動するなら

 チェックインの手続きを終え、サイトへ移動して設営をする段になって翌日以降をどうするかを協議した。高ソメへ移動するならムーンライト5型テントとシュラフ、マット以外はクルマに積み込んだままで、夕飯は市内のどこかですませればいい。この駒ヶ根へ腰を落ち着けるなら、あらかたの設営を終えてしまったほうがいい。
 
 問題は、天気である。直近の予報だと翌日3日(木)は雨。高ソメへ移動すると、雨の中での設営の可能性もじゅうぶんにあり、これはつらい。この駒ヶ根がけっこういいから、ここに腰を落ち着け、高ソメはやめる――結論は早かった。
 この日、ほかには三張りのテントが見えるが、どこも静まり返っている。いつ雨が降り出すかわからないようなこんなときにキャンプをやろうというだけあって、やたら興奮して騒ぐビギナーとは違って風格さえ漂うほどの落ち着きがある。そんな安心感もあっての決断だった。

■ いいキャンプ場じゃないか
 当初の予定では、初日に馬籠宿と妻籠宿の再訪をすませて2日目に奈良井宿へ寄ってから高ソメへ向かうはずだった。だが、雨の予報を受け、翌日は駒ヶ根から動かないと決めた。
 場内には温泉が併設されている。まずは、温泉に入り、そこで昼食をとり、街へ買い出しにいってからのんびりキャンピングライフを楽しもうということにした。

 このキャンプ場には、昔からコンクリート製の焚火用の炉(煮炊き用)がサイトごとに設置されている。ほかにベンチが一体になったテーブルも全サイトに置かれている。これらはとても重宝した。
 今回も折り畳みテーブルを二卓持ち込んでいたが、組み立てたのは一卓だけで、スクリーンタープに置き、食事はキャンプ場の据え置きを利用した。大きいし、しっかりしているから使い心地は申し分ない。ただ、長雨のせいで座っているとズボンのお尻の部分が湿っぽくなる。翌日、買い物ののついでにキャンプ用の座布団を買ってきて使った。

 夕飯を終えて見上げた空には、満月を過ぎて痩せていく月が、まだ丸みを残して浮かんでいる。翌日の雨の予報が信じられないほど穏やかな月の光である。
 適度な距離をとって張られたほかの三組のサイトからもランタンの光が漏れている。だが、物音は何も聞こえない。理想的なキャンプの夜である。
(つづく)