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レンキン

外国の写真と
それとは関係ないぼそぼそ

免許失効夜話(4)

2009年08月10日 | 免許失効夜話
勿論あのおじさんは
免許更新忘れがどういう結果をもたらすかご存知だったのだろう。
でもそれを教えちゃうと、大抵の場合ものすごく話が長くなるのと
…気の毒で自分の口からは言えないというのがあったんだろうと思われる。
「当たり前だけど、ちゃんとするまで車乗っちゃダメだよ!」
帰り際、おじさんがそう付け加える。
その「ちゃんとするまで」に色々が込められていたが
私は気付かずに、はーいと返事をして
勿論車を運転して帰るつもりでいた。
忘れちゃっただけだもん、ねえ。
車が無いと生活出来ないもの。


駐車場に到着して、車に乗り込んで、それから携帯で
平針の免許更新忘れ相談窓口に電話をした。
女性の警察官が出る。お役所的なところが大分取れた警察だが
それでも平針の職員は相変わらず超超事務的だ。
「免許の更新忘れちゃったんですが」
『そうですか、更新期限はいつになってますか?』
「平成20年の4月●日です」
『ああ、そうしましたら一年経ってますので、取り直しになりますね。』

「……え?」

『取り直しになりますね。』

「え、と、取り直しって、え?」

『最初から、免許を、取り直しです』

「    」

『もしもし?』



さあ、絶望的な会話はここらからだ。

免許失効夜話(3)

2009年08月08日 | 免許失効夜話
…いやいやいや。

そんなバカな。
私は行員が難しい顔をしたまま返した免許を
奪うようにして受け取り、その表書きを見た。
普段意識してなかったけど
有効期限って見落としようがないくらいすごくでっかく書いてある。
太字で。
そこに平成20年●月●日と書かれているのを見届け
そして今年は平成21年であったなあと思いながら
私は仕方なく免許証を財布にしまい
代わりの身分証明書として保険証を差し出した。
行員は「写真つきの身分証明書ではありませんので
いくつかの手続きが出来なくなりますがご了承下さい」と言い
私はそれにも仕方なく頷いた。


ここまではそう、私は「写真つき身分証明書の期限が切れた」
くらいに思っていた。
急いで更新に行かなきゃな、いつもの交番でいいのかな
もしかしたら平針(愛知県運転免許試験場・その所在地から通称平針)
に行かなきゃいけないかもしれないなあ…。遠いなあ。
手続きを進める行員の額辺りを眺めながら
私は面倒な事になったなあと考えていた。


銀行からいつもの交番までは歩いて15分くらい、
更新が済むまでは車も乗り控え(控え、程度なのだ)なきゃいかんと思ったので
駐車場に車を置き、徒歩で向かう。
気さくな警察官おじさんに更新忘れを告げると
おじさんはちょっと気の毒そうな顔をして
「ああ、そうしたらね、ここに電話してみて」と
『更新忘れの場合』というプリントをくれた。
よくある事っぽい対応だ。
お礼を言いながらプリントを見てみると、そこには
「更新期限翌日から半年未満」「半年以上から一年未満」
の場合にはどうするか、が書いてあって
私の「一年以上」の場合は書いていない。
少し嫌な予感がした。

おじさんにそのことを告げると
私の顔を見て、大いに気の毒そうな顔をして
「ああ、そうしたらね…やっぱりここに電話してみて」
と、プリント下段の同じ電話番号を指差した。
そして「残念だねえ!」と力強く言った。

免許失効夜話(2)

2009年07月26日 | 免許失効夜話
既に自分の口座がある銀行で、新規口座を作るのは今のご時勢かなり警戒される。
というのも振り込め詐欺等銀行口座を悪用するケースが多発しており
必要の無い口座を開くことを銀行側が避けるのだ。
前回にも書いたが、一昔前は新しい口座を開くことなど
なんでもなかった。これは仕事用、これはへそくり用、貯金用など
一人で何口座も持っていたのに。


用件を言うと気難しい顔をした銀行員が「あの失礼ですが、」
なぜ新しい口座を?と問う。
今ある口座だけではなぜいけないのかと
心底訝しそうに問うのだ。
私としては新規口座を開くことなんて結構軽く考えていたので
銀行員のその態度にびびってしまい、此方も訝しい顔で状況を説明する。
定額給付金が欲しいことと、そのためには新姓の口座が必要なこと、
でも旧姓の口座からの引き落としが結構あるので
新姓の口座を作った方が早いかなと思ったことなどを述べる。

しかし今は振り込め詐欺に対応して新しい口座を開きにくくなっている分
口座の名義変更をした後でも
旧姓の振込みや引き落としにちゃんと対応しているのですよ。
そうなのですか、うまくしたもんですね。
などというやり取りを銀行員と私、物凄く難しい顔で話し合い
最終的には双方納得して、口座の名義を新姓に変更するという事で落ち着いた。


ようやく眉間の皺がほぐれた銀行員が
身分証明書として出した私の免許証を見て
再びぎゅうっと眉間に皺を寄せた。
そしてその難しいお顔のまま、私に免許証を返す。

「お客様、期限が切れているようですが…一年ほど」

免許失効夜話(1)

2009年05月29日 | 免許失効夜話
そもそも目当ては定額給付金だった。


結婚してからこっち、名義を変更しなきゃいけないものはしてきたけど
旧姓のままでも問題ないものは放っていた。
銀行口座もその一つ。
うちの会社は名簿の管理が随分アバウトで、
結婚しても「慣れているから」という理由で
旧姓のまま仕事を続けている人が何人もいる。
社員名簿はもちろん、出張日報も給与振込みも旧姓のまま。
経理的に不便なこともあるだろうが
おおらかな経理担当社長婦人のおかげで
鎖の長い飼い犬たちは旧姓のままのびのびと社内を駆けていたのだ。
だって新しい姓は画数が多くて、サインするのに手間取るのよね。


しかし、この春施行された定額給付金制度。
給付金はどうやら世帯主本人の口座に振り込まれるらしく
今現在の世帯主とは私である。
今現在の世帯主とは新姓の私であり、旧姓のままの私の口座は
世帯主の口座ではない、という事になってしまうらしく
お金を頂くためにはそれ用の、新姓名義の口座を作らねばならないのだ。
面倒くさくて驚いたが、普通は姓が変わった時点で
色々変えなければならないものをほったらかしていたのがいけない。
今まで面倒がってきた事をこの際きちんとしようではないかと
出張あけの休みの日、古い届け印と新しい判子を持って銀行へ向かった。


私は旧姓の口座はへそくり用に残したまま、
同じ銀行に新姓の口座を作ろうと思っていた。
知り合いにも旦那に内緒の秘密口座を持っている主婦が何人もいる。
ピンチの時には山内一豊の妻みたいに、そこから金を工面して
何も言わず夫の前にそっと差し出したり

しようとか高尚な目的は持ち合わせていなかったけど
本当に何となく。旧姓のままの物をひとつくらい
証拠として残しておきたかったのかもしれない。


そんな軽い気持ちで銀行へ出向いたのだが
欲しい口座を欲しい分だけ作らせてくれた一昔前とは違い
今のご時勢「新しい口座を持つこと」は結構厄介であったのだ。
…いやもっと厄介なことがこの先待ち受けているんだけどさ。
(続)

***4/14 AM11:00~**