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サラマンカのウナムーノ

2011-07-03 | Weblog
日経新聞で最もおもしろいのは日曜日の書評と、最後の文化面、と常々思っている。

今日の朝刊の文化面に、西洋史家の樺山紘一氏が「サラマンカのウナムーノ」についてエッセイを綴っている。
「ミゲル・デ・ウナムーノ。20世紀初め、三度にわたり(サラマンカ大学の)学長を務めた詩人、作家そして哲学者である。」

ウナムーノ。はて、どこかで聞いたことがあるような、と思い、少々記憶を辿ってみた。
ほどなく行き当ったのは、長田弘氏の詩「十二人のスペイン人」。

『世界は一冊の本』という詩集に収められた「十二人のスペイン人」は、長田氏曰く、「1930年代の終わりにヨーロッパの端で起きたスペイン市民戦争がそれからの世界に遺した経験の切実さを尋ねて」、「スペイン市民戦争の時代をよく生きた、十二人のスペイン人の密やかな紙碑」として書かれた詩だ。

「ウナムーノ」は、その連作詩の冒頭に置かれた一編である。

再び長田氏自身の解説を引くと、ウナムーノは「バスクの人。20世紀スペインを代表する文人思想家。1936年、市民戦争勃発後、共和国スペインに対するフランコの反乱を厳しく批判、幽閉のうちに死んだ。」

次いで、樺山氏のエッセイから。
「米西戦争でアメリカに敗れて衝撃を受けた知識人たち、いわゆる『98年の世代』のなかにあって、スペイン人の思考と文化の独自性をとことん追求した。よく、キルケゴールになぞらえられるが、ウナムーノは内省するスペイン人のシンボルにほかならない。」

一国の危機にあって、自国の来歴と在り方について考え抜いた人、であるらしい。

最後に長田氏の作品「ウナムーノ」からの抜粋。

  毎日の挨拶に¡se vive!
  「生きています」とこたえる人びと。
  憂い顔の哲学者は、頑固に信じていた。
  人間一人は世界全体ほどの価値がある。
  「生まれ、生き、そして死ぬ一人一人が
  この世を生きぬいたことにより
  誇りをもって死んでゆけないようなら、
  世界とは、いったい何だろうか?

Miguel de Unamuno y Jugo (1864-1936)
(『生の悲劇的感情』(神吉敬三・佐々木孝訳)による)


 

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