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"Farewell, New Labour"

2008-12-02 | Weblog
今週のThe EconomistがPre-Budget Report発表以降の英国の経済政策を巡る議論について書いています。まとめとしてちょうど良いので、拾い読みしてみます。

ブレア以来のNew Labourが唱導してきたfiscal prudenceの柱は、まず第一に「投資するためにのみ借入れ」、第二に「公的純債務をGDPの40%以下に抑える」というものです。併せて、与党は選挙の際に、所得税の最高税率を40%に据え置くことを公約しています。今回の財政出動プランにおいて、これらはすべて破られる運命にあります。公的純債務は2012-13年にはGDPの57%まで累増する見込みで、しかも、これはかなり楽観的なマクロ経済予測に基づいて計算されています。また、所得税に関しては、2011年から高所得者層に対し、45%の最高税率が課せられるようになります。

財政政策の柱は付加価値税の引き下げ(ただし一時的)、貧困家庭への補助、中小企業融資への政府保証等が含まれますが、財政出動の規模がmodestであること、将来の増税含みであることなどから、景気刺激効果は限定的と評価されています。また、金融と不動産という、英国経済を支えてきた両輪がともにひどくダメージを受けているため、税収の落ち込みが懸念されており、財政収支の悪化は避けられない-与党の想定以上に-状況です。

加えて、財政に与える効果は微々たるものであるにも関わらず、高所得者層を狙い撃ちにした増税に対して、同誌は"This looks like gesture politics of the class-war sort. Farewell, New Labour."、あるいは"..., pinching the rich may be turn out to be a profound political mistake."と懸念をあらわにしています。同誌は現下の危機的状況における財政出動自体は否定していませんが、New Labourのもとでの英国の目覚しい経済パフォーマンスを支えていたと見られる自由な市場経済への志向性や、かつての集団的志向から、より個人の努力を是とするカルチャーへの転換といった流れを労働党は自らの手で変えてしまった、と感じ取っているようです。

今回の財政出動は基本的にはpragmaticな不況対策・選挙対策であって、必ずしもNew Labour路線の完全な転換を示すものとはいえないと思いますが、労働党は-かなりすばやい政策対応を矢継ぎ早に繰り出しているにも関わらず-思惑通りの支持を得られていないように感じられます。

同誌は保守党に対しても同様に厳しく、影の蔵相のGeorge Osbourneに対しては、議会ではうまく与党を攻撃したことは認めつつも、"he offered almost nothing by way of alternative economic policy"と切って捨てています。

おもしろかったのは、自由民主党の影の蔵相、Vince Cableを"the most perspicacious of all senior politicians over the financial crisis"と評価しているところ。不勉強でCableという人についてはよく知らないのですが、economic liberalとして知られているようです。

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