今年で4回目の題詠blog 100題。
そろそろこれをまとめておかないと、今年が仕舞えません。
完走(終了)してからひと月半も経ってしまいました。
2月1日から初めて、1年目は6月11日(29人目)、2年目は8月8日(41人目)、
3年目は9月8日(41人目)、今年は11月4日、44人目の完走でした。
参加者はその時点で184人。
参加者もペースも年々下がっているような・・・。
まあ、これは自分へのチャレンジだから、周りは関係ないのですけどね。
それにしても、年々難しくなっていくのはなぜなのかしら。
題詠は嫌いではないですが、言葉の枠というのは案外きつくて、
どうにも自分の中にない言葉は無理矢理こじつけることもありましたが、
できた歌は総じてそのときの、それまでの私の心にあったもの。
また、俳句の季語とは違うものの、
やはり季節の風物を詠むことが多くなりますね。
完走したその九日後の11月13日(水)、
俳誌「河」主宰・角川春樹さんのお話を聞く機会がありました。
テーマは「わたしの俳句」。
150~160人ほどが押しかけた大盛況な講座でした。
30分も時間オーバーするほど盛りだくさんな内容の中から
印象に残ったことをいくつか・・・。
俳句は世界最小詩形だが、世界最強の文芸である。
俳句は音楽も映画も絵画をも超える芸術であるが、
写生・写実だけでは駄目。それだけでは、生き方が出てこないから。
芭蕉の句は、こうあってほしいという「理想の景」。
芭蕉の軽(かろ)みの先に何かあるはず。
子規は客観、写実、写生論を展開して、近代俳句を理論武装しようとしたが、
俳諧の中の滑稽、ユーモアを切り捨ててしまった。人間くさいところも。
タブーがたくさんある伝統俳句では、詩は作れない。
季語が命を乗せるものとして成立し得ないとき、
季語が入らない作品があってもいいはず。
だから、自分の俳句を一行詩と呼ぶのである。~にんげんの生くる限りは流さるる 春樹~
詩歌とは「いのち」「魂」を詠うもの。
自分は、人を幸せにする句を詠みたい。
自分が好きな人の忌日を作るのは、その人を忘れない、忘れさせないため。
忌日が近づいて、それを詠み続ける限り、その人は死んでいない。
レジュメに掲載されていた自選句のひとつ。
夕鶴忌去りゆくものに追ひつけず ※夕鶴忌は姉の辺見じゅんの忌日
参考句に河野裕子さんの代表歌を載せていたのは意外だった。
たっぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり
どんな場合でも、健やかな精神で詠むことが大切。
この句は大きな広い海に出ることを励ましている気がする、と。
つまり、それだけ磐石なベースがある安心感ということか?
その本歌取りの句がこれ。
しぐるるや昏き器の魞(えり)の海 角川春樹
・・・本題からどんどん外れてしまいました。
大きく明るい句を詠みたいという彼の言葉に、違和感を感じつつ(笑)、
私はどんな歌を詠んでいきたいのか、ちょっと考えさせられた日でもありました。
■題詠blog2013投稿歌 (2011.02.01-11.04)
001:新
新月より微かに漏るる光浴び全細胞を再生させむ
002:甘
江戸の世に青木昆陽記したる甘藷の滋養いまも変わらず
003:各
各々方討ち入りでござると内蔵助の声の重さが冷気を裂けり
004:やがて
繰り返し海の底より押し上がりやがて崩るる波濤の白さ
005:叫
叫べども闇に吸われし言霊の行方は何処海鳴り止まず
006:券
発券機は感情持たず黙々と仕事をこなす遊園地の午後
007:別
「悲別」とふ架空の町の人びとを知っているやうな茜色の空 ※悲別:かなしべつ
008:瞬
眼裏にペテルギウスの瞬きを留めておかむ息も凍てる夜(よ)
009:テーブル
抽斗にライトテーブル仕舞われて律儀な顔で出番待ちおり
010:賞
筒に入れ四半世紀を過ぎている着付け師範のわが賞状は
011:習
庭先の「手習いどころ」の看板が春待ち顔で日向ぼこする
012:わずか
例えればわずか二ミリの違いさえ許しがたくて空を仰ぐ日
013:極
東北の杜氏の仕込むる吟醸の研ぎ澄まされし極み味わふ
014:更
ろうけつで染めたる異国の鳥たちよ遠く南の更紗のまちの
015:吐
一点の琥珀の濁り遥かなる太古に生きし虫の吐息か
016:仕事
木の股に枯れ枝集め巣を作る鳩の仕事を日がな見守る
017:彼
一面に波打つごとき彼岸花さわさわさわと紅き潮騒
018:闘
闘鶏を見守る男の浅黒き肌光りおりバンコクの朝
019:同じ
五年後に同じ時間で同じ場所会える保証もないのに約す
020:嘆
北極の氷の融けて狭まれる棲み処嘆くか春のシロクマ
021:仲
煩わし事次つぎと押し寄せる日の夕暮は杜仲茶を飲む
022:梨
梨園とふ摩訶不思議なる世界にて生きる役者の眩しきさだめ
023:不思議
この街で出会えた不思議この街で日々の喜び見つけていこう
024:妙
奇妙なるかたちは君の個性かと深海に棲む古代魚に問ふ
025:滅
いつの日か人類の滅亡する時が来るやもしれぬ窓に花散る
026:期
答弁をこの期におよび翻すよくあることと思いたくなし
027:コメント
新聞のコメント欄に旧友の名を見つけたり花冷えの朝
028:幾
幾何学の父なる男ルカ・パチョリの精緻なる図をダ・ヴィンチ描く
029:逃
縄張りを荒らされ逃げる魚(うを)たちの弾ける花火のやうな素早さ
030:財
水揺るる井の頭池の弁財天に両手をあわせ佳き日願へり
031:はずれ
お神籤ははずれなれどもご利益があると信じる心素直に
032:猛
円空がノミで彫りたる仁王像猛々しくもあふれる慈愛
033:夏
病名を告げられし日より病人になってしまった夏がまた来る
034:勢
低気圧の勢力増して列島を覆いしやうな今朝の目覚めは
035:後悔
後悔とふ海に溺れし日もありき打ち寄せる波のいまは穏やか
036:少
いつの間に少女になっていたんだね五月の風に髪なびかせて
037:恨
過去のこと水に流せと言ふ君も恨みつらみのひとつはあらむ
038:イエス
ルーベンスの描くイエスは堂々と神の道説き天に召されぬ
039:銃
銃社会見直す機会ありたれどふたたび事件起こすアメリカ
040:誇
緋牡丹は花弁のフリルゆったりと光を集め誇らしく咲く
041:カステラ
春節の桃カステラの紅色がキラキラ映る春の波間に
042:若
浜に干す若布のみどり陽を浴びて伸びするやうに輝いてをり
043:慣
慣性のちからの不思議好きだといふ気持ちも急には止まれないかも
044:日本
一枚のカードで日本国内をスイスイ行ける新緑眩し
045:喋
夕暮れに耳を澄ませばさわさわと木々のお喋り花笑ふ声
046:間
流れゆく時の間でかくれんぼ大事な言葉も想ひでさへも ※間:あわひ
047:繋
さくら花舫い繋がる船のごと蜘蛛の住処にとどまりてをり
048:アルプス
空に近き南アルプスの頂にアンモナイトの眠る夕暮れ
049:括
慣れくれば高を括りて仕損じる 窓叩く雨勢い止まず
050:互
お互いの瞳を見つめ合いし日の広がる未来陽だまりのいろ
051:般
なによりも一般的とふ事実こそ安心なのか はや梅雨明ける
052:ダブル
母のごとダブルガーゼの柔らかきフェイスタオルに顔を埋める
053:受
注文を受け打ち始む蕎麦の香の向こうに見ゆる寡黙な店主
054:商
獲れたての魚を引きて商へる八十八の弾ける笑顔
055:駄目
「駄目だもん、これ嫌だもん」を繰り返し自我の芽生えに戸惑ふわれは
056:善
背景に湧き立つ雲の善光寺信濃の国に暑き夏来る
057:衰
紫陽花のいろ衰えて沿道にドライフラワーとなりて鎮もる
058:秀
歌舞伎座も新たになりて秀山祭吉右衛門偲び今年も待ちをり
059:永遠
恋愛の寿命も四年永遠に続くものなどありはしません
060:何
「酷暑です。ご機嫌如何」と恩師より便り来りて今日原爆忌
061:獣
射るやうな緑の筋の女の目ざらりと描きし野獣派マティス
062:氏
『バジル氏の優雅な生活』とふ漫画棚に並べておりし日のあり
063:以上
「これ以上無理。これ以上できません」いともたやすき部下の言葉は
064:刑
砂浜に一輪咲きし百合の花風吹き渡る処刑場跡
065:投
渾身の力を込めて投げ入れるキャッチャーミットは青春の的
066:きれい
断捨離できれいな家に住みたいと願ふも月日は秒速で過ぐ
067:闇
闇を切り風をも切りて白き指おわらの夜に編笠傾ぐ
068:兄弟
兄弟子に逆らふことは許されず古典芸能は辛抱の日々
069:視
どれくらい先まで見えるやアフリカの人に備わる驚異の視力
070:柿
歌舞伎座の?落しに華添えるべき名優の居らぬ淋しさ
071:得意
比較的得意料理は肉じゃがとはにかむ君の言葉を信じる
072:産
ゆるやかな人の暮らしを劇的に便利に変えし産業革命
073:史
自分史をなぞるごとくに歌集編むひとそれぞれに山河のありて
074:ワルツ
ワルツよりタンゴを好むカップルは直線的なステップを踏む
075:良
子等と遊び慈しみ深き良寛の坐像は凪ぎし日本海見る
076:納
納得の答えを探し幾日もつまらぬことが我を支配す
077:うっすら
うっすらと大地を染める夕焼けよどこから生まれどこへ去るのか
078:師
「生きるひと亡きひとさえも師と仰げ」島崎春樹は祖父に書きたり
079:悪
悪人は善いひとの貌つくりつつ近づいてくる闇に紛れて
080:修
テラテラと修正テープの白き筋書類に続く我が物顔で
081:自分
自分とふアイデンティティにこだわりて自分が見えなくなることもある
082:柔
柔らかい眼差しだったセルロイドの眼鏡の奥のひとえまぶたの
083:霞
足早に霞が関で乗り換える就活スーツの君にエールを
084:左
右大臣左大臣とも高貴なる顔(かんばせ)で御座す三井家の雛
085:歯
夕刻になればまあるいぼんぼりのほんのり灯る「灯り歯科医院」
086:ぼんやり
脳からの指令が降りてこないんだ涙の混じる味覚はぼんやり
087:餅
つきたての餅を丸めて供えたる向こうに揺れる尾花ひと群れ
088:弱
弱法師(よろぼし)の足跡訪ね来てみれば四天王寺に夕焼けの満つ
089:出口
夢の中出口探してさまよひて崖から落ちる間際目覚めぬ
090:唯
母の腋から生(あ)れたる釈迦の言ひたりし「天上天下唯我独尊」
091:鯨
快晴の大海原に一筋の噴水上げる鯨の午睡
092:局
郵便局の角を曲がればこの秋も金木犀の香の流れくる
093:ドア
夢の中お菓子の家に入りたるチョコレートのドアとろりと押して
094:衆
いつの間に烏合の衆と成り果てし国会議員の船を漕ぐ顔
095:例
例えればシーラカンスが棲む海に潜ってみたい今日の気分は
096:季節
紅き葉の舞い散る季節は新品のスニーカー履き大股で歩く
097:証
イルカ棲む御蔵の海よかの夏の証が古き写真に残る
098:濁
濁音の洪水のごと騒がしき工事現場の汗拭く男
099:文
星々が競う如くに天の川渡らんとした文月葉月
100:止
秋色に染まりし落ち葉降り注ぐ静止画像のやうな二人に
どんな句を詠みたいのか?
永遠のテーマかも…
私にとって
そのとき できた歌や句が
そのまま そのときの私を表現できていれば
読む人から 何を言われても 満足してしまう
ダメダメな感じです…
他者の歌などを拝読しても
そのときの私で違うし…
こちらのようにぶれないものを持ちたいなぁ~と
百首 拝読していて
ため息をつきました
来年もがんばります!
今年もお世話になりました
来年もよろしくお願いいたします♪
先日はありがとうございました!
お帽子、可愛かったですね~♪
どんな歌や句を詠みたいのか、、ほんと、永遠のテーマですね。
そのままそのときの自分であるのは当然ですし、
ほんの少しでも、他人から見たら「自分」の分身はしっかり入っている、
・・・ようなんですが
肝心の自分がふらついていることは、往々にしてある。
来年、「未来」に入ろうかなあ、なんて思ってます。
とりあえず、題詠でストックしてある歌があるから
しばらくは大丈夫かな?という考え、軽い?(笑)