「Kiffe Kiffe demain」 Faiza Guene 早川書房
主人公はモロッコ移住(2世)のフランス人の15歳の少女です。
父親は、男の子を生まない母親に見切りをつけ、モロッコに一人帰国し、別の女性と結婚してしまいます。
フランス語があまりうまくなく、職場の上司にいじめられ、泣いて帰ってくる母親。
そんな母親や、家に訪ねてくるソーシャルワーカーの女性、セラピーを受ける必要がある、と学校から言われ、半分いやいや通っているおばあさん心理士、あからさまに差別する学校の先生、同じパラダイス団地(低賃金住宅で、住んでいるのはほとんど北アフリカから移住してきた人たち)に住む人たちと交流し、いろいろなことを経験して成長していく主人公。
主人公の境遇は決して明るくはないが、時には怒りながら、時には考え込みながらも前向きに進む彼女に好感を覚えました。
著者はアルジェリア移民のフランス人、セーヌ=サン=ドニ県の低賃金住宅に住んでいる…と著者紹介にありますから、この本の内容も、まったくのフィクションという訳ではないのでしょう。
この書を書いた当時19歳(2004年)だったそうで、感情をあらわにした文章が幼さを感じさせますが、自分を冷静に見つめる目も持ち合わせていて、ただただフランス憎し、自分たちを捨てた父親憎し、と単純に思っているわけではない。
思慮深い著者の一面を感じさせてくれる本でした。
また、フランスに住む移民たちのことにも触れている後書きも良かったです。