2023/12/5
・弦巻楽団の公演を見て、解釈で気になったところがあったので、別の訳者の文庫本を購入する。
・解説が充実している。戯曲より長い。
・あらためて読み直すと、やはり最後のほうのパウリナ(ポーリャ)の告発が鬼気せまっている。
・日常から地獄への移行があまりにもシームレスで、その瞬間、彼女が恐怖を感じることすらない。
・おそらく、いろんな社会においても平和を喪失する瞬間ってこんな感じなんだろうと思う。
・解説中の「もしも向こうが忘却を要求してくるとするならいったいあなたは許しを代価として支払うことができようか?」は、作中の夫婦関係もそうだし、ほかのいろんな場面で使えそう。許しの対価という考え方。
・気になっていたのは、ロベルトの顛末。
・ロベルトを演じた井上嵩之君くんの演技に引きずられたところもあったけど、演劇を見たときには彼は死んでいたと思っていた。どちらにも解釈できそう。
・戯曲を読むと、最後、パウリナはミランダのほうに視線を向けているので、少なくとも彼女には見えている。
・でも、彼女が見たのは幻影かもしれない。
・解説内にも言及があって、このあたりの作者と演出の解釈が合わず、企画が頓挫したこともあったようだ。
・演出は白黒はっきりさせたいとし、作者はオープンエンドにこだわった。
・やはり死んでいる可能性もナシではないようだ。
・本来、悪人を裁くのは社会のシステムに任せるのが一番いい。
・社会のシステムで裁けないなら、自分で裁くしかない。でも、やっていることは私刑。
・比較的、社会が安定している今の日本にいると、裁判所や警察のやることが正義だと思いがちなんだけど、一度そのシステムを失うと元に戻すのが大変。
・その境界線は自分たちが思っているほど強くはないので、いつ日本がそうなってもおかしくはない。
・パウリアがそうだったように、その変化は劇的なものではなく、気を付けていないといつのまにか失ってしまうものなんだろうなと思った。
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