遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

金子修介監督『百合の雨音』

2022-12-06 09:22:07 | 映画を見てきた

ロマンポルノ・ナウ 共通予告30秒

2022/12/3

・分不相応な役職と夫との関係に悩むシオリと、彼女の部下で同性間の辛い恋愛経験を持つハヅキが、お互いを性的に慰め合う話。

・日活ロマンポルノはまともに見たことがなかった。

・本作も「ロマンポルノ50周年記念プロジェクト」の一環で作られた作品なので、一般的な同レーベルの作品とは言えなかったりはする。

・本来はエロ要素を求めるお客さん向けの作品なんだけど、その機能さえ含めば自由に作品を作っていいらしい。→ROMAN PORNO NOW

・エロ要素はわかりやすいけど、「泣ける」「笑える」も機能を売りにしているという点では同類になる。

・本作も当然エロ要素は頻繁にあるんだけど、現代劇である以上、現代の価値観とは無縁ではいられない。

・R18作品。ゾーニングはできているので、多少不道徳でも自由に作っていい分野ではある。

・そういう環境だからこそ、同性間の恋愛を単なる百合表現として消費せず、不道徳な部分も含めて丁寧に描いている感じが好ましい。

・二人が大切にするものが微妙にズレているところもよくできている。

・女性が見ても不快な要素は少なそうだけど、レズビアンの人がどう見るのかは気になる。

・不道徳と言えば、二人にとっては敵役となるシオリの夫も、簡単には嫌いになれない豪快さと一つまみの知性を持っている。

・エロ要素がたくさんあるとは書いたものの、エロいというよりは、美しさのほうが先に立っている。以前、すすきのでストリップショーを見た時の感想に近い。

・裸を見せる女性たちが明らかに見せるための体を仕上げてきている。特にシオリを演じた花澄さん。耽美。

・二人の絡みも美しいんだけど、反面、一般的と思われがちな男女のセックスは野蛮または無機質に描かれている。夫婦間のそれでも不純な感じがする。

・ハヅキ役は小宮一葉さん。衣装や化粧の効果もあるにしろ、演技で年単位の時間経過を感じさせる佇まいが強い。

・公園でハヅキと担当作家の間に大きな百合の花が咲いているのは、当然わざとなんだろうけど、直接的すぎる。

・監督の代表作が平成ガメラとデスノートというギャップにびっくりした。

(サツゲキ)

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ペドロ・アルモドバル監督『ヒューマン・ボイス』

2022-12-03 22:50:54 | 映画を見てきた

11/3公開『ヒューマン・ボイス』予告編

2022/12/2

・恋人の帰りを続けた女が、ついにかかってきた彼からの電話に、思いのたけをぶつける話。

・ほぼ、人間一人と犬一匹。30分の短編。

・ジャン・コクトーの「人間の声」を翻案。

・最初にただの翻案ではなく「自由に翻案」とわざわざテロップが出てくる。

・「人間の声」は電話の受話器で会話するところ、ハンズフリーのイヤホンを使っている。

・一人芝居の小道具として電話は定番中の定番だけど、受話器を使わないパターンは見たことなかった。たまたまなんだろうけど、新鮮。

・舞台作品の一人芝居でも、端末を耳に当てて通話する演技は古くなっていくのかも。

・彼女の部屋と撮影所のような場所が大した説明もなく何度も切り替わるなか、彼女は一定のリズムで語り続ける。

・ハンズフリーで話し続ける人と演劇の一人語りとの中間くらいのミニマムな演技を、大きなスクリーンで見るという不思議体験。

・「人間の声」は情念に囚われた女性が自壊していく話なんだけど、本作のヒロインは、そういう自分の中にいる不幸な女をフィクションに託して突き放そうとしているように見える。

・変わり身の術。あるいは脱皮。

・派手な色の服装もそうだし、彼の服にわざわざそれ用に買ってきた斧をたたきつけるところや、薬を飲むところ、最後の放火もどきまで、いちいち行動が儀式っぽい。

・最後はなんだか彼女はすっきりした感じだったし、たぶん儀式はうまくいったんだと思う。強い。

・なので、単に捨てられた不幸な女の話ではない。たしかに自由に翻案している。軽い。

・工具を使った文字表現がおしゃれ。無機質な金属を使うことで、恋愛のようなじめじめした感情から一歩引いているようにも見える。

・と、ここまで書いてみたものの、忘れてしまっていたり、あとから「人間の声」を読み直した記憶が混ざってしまっているような気もするので、正直解釈に自信がない。

・できれば、あと3回くらい見たい。

・おそらく複数回見た方がいいというか、あらすじを知ってから見たほうがいいし、「人間の声」との違いを踏まえてみたほうが面白いタイプの作品だと思う。

・あと犬かわいい。がんばって演技もしている。かしこい。

(サツゲキ)

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京極義昭監督『映画 ゆるキャン△』

2022-07-11 22:20:13 | 映画を見てきた

2022/7/10

・社会人になった元野外活動サークルの面々が協力しながらキャンプ場を作ろうとする話。

・何気に『ゆるキャン△』は、アニメとマンガ、実写ドラマまで見ている。気が付いたら全部見てた。

・とはいえ、映画に関する前情報は一切入れてなかったので「この妄想シーンはいつ終わるんだろう」とエンドロールが終わるまで疑っていた。

・「なでしこが重機を使い始めたあたりが怪しい」とか。

・本シリーズは、タイトルどおり、高校生女子たちがゆるふわキャンプをしている様子を楽しむ作品。

・なのに、今回の映画版では、原作にはない社会人になった彼女たちを描いている。

・もともと、本シリーズは犯罪もセクハラも存在しないある種の理想郷での話。

・永遠に続くぬるま湯を楽しむ作品があってもいいんだけど、映画版はそういう方針で作られていない。

・厳しいはずの大人の現実社会は結構ぬるま湯化しているし、見た目から行動から学生時代との境界線があいまいで、最初のうちは居心地が悪かった。

・それでも、見ているうちに「大人の現実社会=厳しい」と反射的に結び付けてしまうことのほうが思考停止なんじゃないかという気もしてくる。

・ゆるふわマスコットとしての役割も果たす一方、彼女らは強い意志と欲望を持った一大人として行動し、知恵や技術、仲間を増やしていく。

・これは社会人でなければできないこと。

・『魔女見習いをさがして』や『アリーテ姫』を思い出した。まさに、こころのちから。 

・ここまで大人になることを全面的に肯定している作品はあんまりないんじゃないだろうか。

・結局、箱庭的な世界だし、現実ではそう簡単にいかないのは百も承知で、堂々と理想を描いている。理想を描くのもフィクションの役割ではある。

・子犬とはいえ、本作で「老い」を描いているのもびっくりした。えなパパとチクワの組合せが切ない。

・繰り返し映る集合住宅や廃校寸前の学校のひなびた感じ。女の子たちのかわいらしさと別のベクトルでものすごく絵作りに気合が入っているのが良い。

・いぬこの「ウソやで~」の使い方がうまい。

(札幌シネマフロンティア)

 

※もらったはいいけど、どうしたらいいのかわからない色紙。

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ビリー・ワイルダー監督『麗しのサブリナ』(1954年)

2022-04-22 00:03:02 | 映画を見てきた

2022/4/21

・堅物実業家の兄ライナスと遊び人の弟デイビットが、彼らの家の雇われ運転手の娘サブリナと三角関係になる話。

・序盤のサブリナは見た目も行動も幼くて心配になる。

・自殺の方法は他になかったのか。

・そんな彼女もパリ留学で変わる。当時のパリってそんなにすごいのか。自信がみなぎっている。

・「私の顔を忘れたら一番魅力的な女をさがして」。

・ペットの首輪までキラキラしている。料理学校通いながら、犬を飼う余裕があるんだ。

・特にドレス姿でテニスコートに佇むところが美しい。

・あの時代だと、サブリナパンツもさぞかし印象的だったんだろうな。

・身分違いの恋を描いた作品ではあるけど、その部分はそれほど強調されていない。

・今の感覚だと年齢差のほうが気になる。

・兄弟は正反対の性格だけどそれほど仲は悪くない。

・表面上は順調に事が運んでいるのに、三人の思惑がどんどんすれ違っていく描き方がうまい。

・弟の「悪い奴ではないんだけど、積極的には応援しようとは思いにくい」の加減が絶妙。特に説明がなくても、物語の進むべき方向はそっちじゃないとわかる。

・気持ちが離れたことを表現するキスと、遊び人だからこそそれを読み取れるというぴったりな着地。

・少女マンガならナレーションで説明が入ると思うけど、言葉がなくても伝わる。

・父親が絶望的に不器用。敵役になるには弱々しくてなんだかかわいらしい。

・古い映画だけど、意外なほど嫌なやつがいない。ちょっとした擦れ違いでハラハラして最後に収まるべきところに収まる。ストレスなく見られる。

・帽子の小道具演出がワイルダーっぽい。最後のほうにひと手間いれてくる。

・サブリナが父親の洗車を手伝っているところが好き。

・二人にとっては、たぶん大事なことなんだということもわかる。親子としての歴史が垣間見える感じ。

・事業の損失より(他者の)愛の成就を取ろうとする感じは『真夜中の出来事』にも通じる。

・テンプレっぽいけど、やっぱり効果的ではある。

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木下麦監督『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』

2022-04-21 22:56:15 | 映画を見てきた

2022/4/21

タクシードライバーの小戸川が、女子高生の失踪事件に巻き込まれていく話。

テレビシリーズはほとんど時系列順に話が進んでいたけど、映画版では登場人物の証言を追うことで事後から事件を語り直している。

なので、サブタイトルは芥川の『藪の中』の感じっぽい。そういう劇場化もあるのか。

ただ、事件の全容はある程度見えているので、ただの総集編っぽくもある。

白川さんが小戸川への気持ちをきちんと語りなおしてくれたのはよかった。あそこが結構謎だった。

劇場版にしかないシーンの意味はよくわからなかったけど、とりあえずこの劇場版はテレビシリーズのメイキングみたいな感じだと解釈した。

ああいう証言を集めて、テレビシリーズのオッドタクシーを作ったという。それでラストにもつながるかなと。

単純に「その後」が描かれているのはうれしいけど、それを見るために我慢して見てたところもあるので、もうちょっとサービスしてほしかったような気もする。

(札幌シネマフロンティア)

※劇場特典はステッカー。かっこいい。

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濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』

2022-04-16 23:07:13 | 映画を見てきた

2022/4/15

・ある演劇祭に演出家として参加した男が、稽古期間中の様々な出会いやトラブルを経て、妻の死にきちんと向き合おうとする話。

・地方の主催者が、おそらく文化事業的な感じで東京の演出家を招いて公演を行う。

・自分もあまり経験があるわけじゃないけど、おそらく内部はこんな雰囲気だろうと思える程度に生々しい。

・お仕事映画としても楽しめると思う。絵的に地味な読み稽古で映画のシーンを作れるのがすごい。

・演出家の家福は西島秀俊さんが演じる。特に話の方向性が見えない序盤は、彼の存在感が頼もしい。

・舞台上で不調になり変な間ができても実力のある舞台俳優らしくギリギリ乗り越える…という演技。大変。

・劇中の上演予定作品は『ワーニャ伯父さん』。

・家福の演出は、外国から俳優を招いて、それぞれの母語で会話をする形式。

・最初は意義がわからなかったけど、会話から言葉を抜き取ったときに何が残るのかを検証する感じ、なのかな。

・手話の話者が入っても違和感なく成立するのがすごい。

・舞台用の発声があるように、舞台用の手話ってあるんだろうか。なんとなく映像サイズに見えた。

・正しくない人の描写なのはわかるけど、オーディションのあれは別のことでやってほしかった。兆候はあったんだから演出家が止めなきゃいかんと思う。他の描写をきちんとやってるだけになおさら。

・屋外での読み合わせのシーンが楽しい。映画ならではの絵の美しさもあったし、演じていた二人の間で本当に演劇らしい何かが起きていたようにも見えた。

・三浦透子さんが演じる運転手のできるスタッフ感。寡黙で腕があって無茶ぶりにも対応している。

・だからって、演出家のメンタルケアのために広島から北海道までの運転をお願いするのはどうかしている。

・終盤のほうになると、できるスタッフを通り越して、彼にとっても、作品にとっても、とても便利な存在になっていた。せめてそれなりのギャラを貰ってほしい。

・上十二滝村って地名があんまり北海道っぽくないような。色々検索すると元は中頓別町だったらしい。

・『パターソン』の時も思ったけど、映画のなかだと、安全に自動車を運転するという行為だけで、結構な緊張感が生まれる。

・何気にワンコ映画でもある。フリスピー投げてもらえるところ好き。

・中盤くらいまでは映画と演劇がいい緊張感で両立していたけど、最後のほうは急激に小説というか、村上春樹っぽさが前面に出てきた感じだった。

(ユナイテッドシネマ札幌)

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シアン・ヘダー監督『コーダ あいのうた』

2022-04-01 21:31:40 | 映画を見てきた

2022/4/1

・聾者の家族のなかで一人だけ聴者として生まれた女子高校生ルビーが歌を唄うことを通して自立していく話。

・コーダ(CODA:Children of Deaf Adults)は聾者の親を持つ聴者の子供のこと。この映画で初めて知った。

・中型の漁船。使用感たっぷりの船体と網を引き揚げる機械のかっこよさに、ルビーが魚を分別しながら歌っている様子、最初から情報量が多くて楽しい。

・もう少し堅苦しい話なのかなと思ってたけど、下ネタはくだらないし、退屈なシーンもないし、素直に感動させられる。エンタメとしての完成度が高い。

・手話はわからなくても、手話が第一言語だからこそできる複雑なやり取りを感じることくらいはできる。英語は話せなくてもカタカナ英語の拙さはわかる感じの逆。

・聴者であるルビーも、育った環境から、手話のほうが複雑な感情を表現できるというシーンも納得だし、クライマックスへの前フリにもなっている。

・先生が人前で声を出せない彼女をリラックスさせようとする手際。演技指導にも通じる。

・パートナーの彼、簡単に許されすぎのような気もするけど、まだ若いからあんなものかもしれない。

・生まれ変わりの儀式としての飛び降り。

・欧米の人は自然の沼や湖に平気で飛び込む人が多い(偏見)。

・合唱部の生徒たちの素人っぽさが絶妙。歌の天才が才能を開花する話ではなく、あくまで熱意を持った素人が一歩踏み出すところに焦点を当てているところが上品。挑戦は一部の天才だけが持つ権利ではない。

・ただの恋愛話にも思える歌詞が何重にも意味がある。

・自分は聴者だけど、最後のほうに少しだけ聾者の世界にお邪魔するシーンがあって、「ああ、こういう感じだったのか」と納得。なんだか感動的だった。

・特殊な家族を描いているようで、父親、母親、兄、妹とそれぞれの役割で家族を愛そうとする様子は、ごく普通の恵まれた家族の関係性だった。

・特に憎まれ口叩きながら「家族の犠牲になるな」と妹に言っている兄。

・あの調査員、手話わかってたの意地悪すぎる。

・本作は見ていて気持ちよい作品だったけど、実際には、家族と共依存になって抜け出せなくなっているコーダの人もいるんだろうなということは頭に置いておきたい。

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スティーブン・スピルバーグ監督『ウエスト・サイド・ストーリー』

2022-03-07 19:27:26 | 映画を見てきた

2022/3/4

・開発が進む1950年代のマンハッタン。貧困層の若者の対立によって男女の恋が悲劇的に終わる話。

・結構忘れているものの、1961年の映画も見ているし、ロミジュリだし、大体の展開を知っている状態で見る。

・理屈や話し合いではなく、暴力と体面が優先されて物事が決まっていく危うさ。

・愚かと言えば愚かなんだけど、彼らが生きてきて、考え方を修正する機会なんか与えられなかったんだろうなと悲しい気持ちになる。

・若者たちがどんなにイキリ散らかしたところで、明るい未来が全然見えてこない。

・なので、一番盛り上がる決戦前のトゥナイトも、めちゃめちゃかっこいいのに、自分の感情とうまく噛み合わず。

・ちょっと白々しいとまで思ってしまう。

・みんなどんな感情でこのシーン見てるんだろう。

・そんななかでも女性陣は結構たくましい。職場でもわりと仲良くやっている。

・というか、男性陣が全然働いていない。トニーも仕事量そんなに多くなさそう。

・彼らが家族と飯食ったり、お小遣い貰ったり、バイトしている様子があんまり想像できない。どうしてるんだろう。

・序盤からやたらと存在感がせり出している売店の店主。1961年版ではアニータ役だったそう。

・そんな調子で見ていても、中盤のマンボはものすごい迫力で圧倒される。あとから1961年版を見直してみたけど、人数も密度もスピードも全然違う。

・サブスクに出てきたらそこだけ何度も観たい。

・優劣をつけたいならそこで決めればいいのに、どうしてナイフや拳銃が必要になってしまうのか。

・トニーがあんまり悪そうに見えない。作中、説明はあるのでどういう存在なのかはわかるんだけど、かつて悪かった片鱗みたいなものは感じられず。

・『ベイビードライバー』を見てたら違ったのかな。

・ベルナルドのいかにもボクサー然とした体つき。

・拳銃まで用意しているのに、死人が出てから愕然としてしまう彼らの想像力の欠如ぶりも悲しい。

・時節柄、抑止力のための武力ってホント信用ならないなと思ってしまう。

・表現上のフィクション感は強いのに、とても生々しい肌触りの作品だった。

(サツゲキ)

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松本花奈監督『明け方の若者たち』

2022-01-13 00:22:01 | 映画を見てきた

2022/1/12

・就活が終わって付き合い始めた男女が、恋愛と自由を謳歌する話。

・監督は1998年生まれ。登場人物も若い。まさに人生の明け方の若者たちによる話。

・就職が決まった人たちの飲み会から始まる。勝ち組を宣言して盛り上がる大学生たち。

・実際には就職が決まったことより、卒論や就活のことを気にしなくていい時間を獲得したことが大きい。

・夢と現実を描いているけど、経済的に何の苦労もないところからスタートできる選択肢のある人たちの話。

・ただ、根拠のない万能感や、恋愛まわりの話とか、全然彼らと違う人生を過ごしている自分でも身に覚えがないこともない。仮にうまくいっていたほうの自分とも言える。単純な話、うらやましい。

・連中が大きなことを言ってる場所が、どう見ても学生向けの安い飲み屋というのも親近感が沸くんだと思う。

・二人は順調に仲を深めていく。しかし、二人がいちゃいちゃすればするほど、終わりの予感が強くなる。

・窓の外からセックスシーンを撮ると、誰かに覗かれているように見える。

・『6年愛』や『花束みたいな恋をした』と同じ感覚で見ていたら、うまく変化していた。景色が過去にさかのぼって刷新されていく感じ。

・それ以外は、どこにでもあるような若者の恋愛を始まりから描いていてシンプルな構成。

・最初のうちは、こんなに人生の一番いい時期を描いて、このあと落ちていくだけなのに、どうやってまとめるんだろうと思いながら見る。

・年齢を重ねるほど、人生で一番幸せだと思える可能性は減っていくものだけど、そのぶん思い出は増える。

・だから人間年をとっても絶望せずに生きていけるのかと、自分よりはるかに若い人たちに教えてもらった感じ。

・スマホをどこかに忘れてもニヤリとできてしまうんだもの。

・二人を演じていたのは北村匠海さんと黒島結菜さん。いちゃいちゃしているのがとても楽しそう。

・もう一人の重要な役、二人の友人役の井上祐貴さん。よくラブコメに出てくる「とても高校生に見えない頼りがいのある高校生」っぽくてよかった。

・後半、ヒロインが変わってたと思う。

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ロブ・マーシャル監督『シカゴ』

2022-01-12 22:26:32 | 映画を見てきた

2022/1/12

浮気相手を射殺した女性ダンサーが凄腕弁護士を雇ってもらって無罪を目指す話。

映画館で観るのは初めて。家と違って音量を気にしなくてよい。

死刑囚となりながらも野心を失わないヒロインのロキシー・ハート。背筋美しい。

ちょっとスカーレット・オハラを思い出す。

看守も弁護士も検察もマスコミも、正義とは程遠い人たちだから許される人物設定。

唯一の良心であるロキシーの夫はとにかく鈍臭い男として描かれる。気の毒。

町山智浩さんの解説によると作品全体がロキシーの脳内ボードビルショーになっているとのことだけど、全く彼女の目に入っていない夫のパートがあるのはちょっと変かも。

そのへん、あざとくなるから意図的に曖昧にしてるのかも。

もう一人、気の毒だったのが、ハンガリーの女性死刑囚。

ほぼロキシーの危機感を煽るためだけの存在。わりと露骨な差別を扱っている。後味悪い。

それでもやっぱり歌とダンスは最高で何度でも見たい作品だった。

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