慎悟は高2の少年にして既に「マウンテン・クライマー(mountain climber) / 山男」として生きていた。山歩きが趣味の両親の影響で山をこよなく愛し、プロの登山家でも危険を伴う“冬期の富士山”の登山を可能とするスキルを有する「山男」である。筋肉はそれほど必要ではなく、むしろ筋肉は脂肪よりも重いのと、酸素の消耗を抑えるために体重は“60kg”くらいがベストである。登るための力と装備に耐え得るのに必要なだけの筋肉を、そして酸素をそれほど消耗しなくて済むのに適した体重に整えることが大切なのである。
『9番目のムサシ』には本当に呆れる。主人公の篠塚高(No.9)が身も心も結ばれた生涯の伴侶である橘慎悟に“山男”という設定を与えたが、難易度はエベレスト級で9月以降はベテランの登山家でもゴロゴロ事故死する危険な冬だと知らない!親友の冬富士の記念写真の慎悟の親友の格好は、そこらの低い山の帰りにしか見えないから、もう腹が立つぞ。
しっかりとした事前準備、約10時間の運動に耐えられる体力、服装、装備があれば初心者でも登頂しやすい夏の富士山だが、冬になると毎年死者を出すほどその様子は一変する。冬富士は見るには美しいが、登山においては「白い魔境」、「恐怖の雪山」、「難易度はエベレスト級」などと呼ばれている。冬富士は、安易な挑戦はせず、挑戦するならそれ相応の準備と覚悟を持って挑むべき山である。富士山は冬期になると冬山訓練で賑わうが、冬はそういう人達の死亡事故が最も多い季節でもある。富士山登頂の達人と呼ばれる登山家「實川欣伸(じつかわ・よしのぶ)」氏も語っているが富士山は1年を通して幾度か登らないと「冬富士」に登る際の突然の変化に対応できないため、データ収集も怠ってはいけない。實川氏曰く「真冬の富士山は夏の7大陸最高峰より難しい」とのことである。
山梨県では9月から翌6月までの冬期、どうしても登りたいなら自己責任でどうぞ!我が県は一切関知しません!!と登山道を閉鎖する。つまり“この期間は死ぬなり何なりと勝手にして。”とするくらい“冬富士”は非常に危険である。特に9月20日以降は最も危険となる。難易度はエベレスト級であり“白い魔境”と恐れられている。山は非常に厳しい世界である。
いつ危険が襲い掛かるかわからない、映画『127時間』で有名なラルストンは幸いにも右腕を失うに留まったが命すら失うかもしれないのだ。
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