イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

アラム1号 - 西アジア発

2012年11月04日 18時20分18秒 | 高橋美由紀

アラム・アーレイ・アージェリア

第2シリーズの「MISSION3」で、他国である日本で醜態を晒す西アジアのダージェ王国の皇太子
16人兄弟姉妹の末子、王位継承権を有する第6王子として生を受けたが、5人の兄達が悉く病気や事故に見せかけて殺され、王位に無縁の筈が繰り上がって第1王子となる。母国の法律では満18歳を成人と定めており、1ヶ月後の18歳の誕生日を迎えたら即位することが決まっている。甘やかされて育ったため、王位継承者としての自覚が著しく欠落している我が儘王子で、周囲や警護に当たる人々に多大な迷惑をかけている。国では彼の帰りを20人の花嫁が待っている。切羽詰まった現国王である父と重臣達により監禁されるようにして育ったため、周囲が自身を道具としか看做さずに“囚人扱い”に貶められたと思い込み、誰一人として自身を愛さず心配もしていないと“被害妄想”に囚われ、自身の軽率な行動を反省する気持ちに欠けていた。自殺を考えたことさえあると深刻ぶって連れ戻そうとした篠塚に抗議するが、自身を愛すればこそ周囲が不自由を強いてしまったことを察しようともせず、心の牢獄に自分自身を閉じ込めたにも関わらず自由がないのを当たり散らすだけで、安全を確保しつつ自由を実現する努力を怠り駄々を捏ねただけだった。

ホテルを抜け出すも赤信号に気づかず車に轢かれそうになった所を、脱走する気満々で逃亡するだろうと裏口を見張っていた篠塚に捕まり、女装するのと引き換えに彼女の護衛を承諾する羽目になる。次第に惹かれてゆくが、1日限りの自由が見せた白昼夢の錯覚でしかなかった。帰ると公安課の佐田が篠塚を怒鳴りつけたため、自身が元凶であるにも関わらず腹を立てる。ホテルを抜け出した自身を連れ戻さないという篠塚の行為は、危険回避による安全を第一とする警護に反しており、更には篠塚は警護責任者でもあるので2重に非難されて当然だとアラム自身は理解できなかった。篠塚を非難する佐田達に反発し、謝罪する篠塚に頭を下げる必要はないと憤慨した。それを含めた不平不満を爺にぶつけたため、心配してくれる人に何てことをと篠塚に殴られてしまう。女装しないと逃げると言った自身に仕方なくとはいえ女装した篠塚に欲情し、殴られたことを機に完全に恋に落ちてしまう。但し、恋に恋する幻想に過ぎない。女装しただけで途端にしおらしくなった、お調子者である。女性を護衛官に指定したものの篠塚は男性にしか見えなかったため、女装するまで護衛官の中で一番彼女を嫌悪していた。

暗殺者は篠塚により捕縛され彼らの組織「ブラックドラゴン」も壊滅し、暗殺を依頼した叔父もダージェ国内の「UB」に捕縛されたため、安心して帰国の途につくことになる。ところが空港で彼女に求婚する騒ぎを引き起こし、篠塚の心を完全に無視して一生傍にいて欲しいと自分本位に懇願した。しかし、慎悟という“実質上の夫”である恋人とUBトップナンバーの責務ゆえに篠塚に断られ、根拠も無くOKされると思い込んだだけに落胆は大きい。現実はドラマのように甘くはなく、花嫁を伴って帰国という幻想を粉々に砕かれたのだった。自身と似た境遇の“誰か”の話をした際の常とは違う篠塚の様子に、もしかしたら彼女の“恋人”ではないかと半ばは予想したらしい。が、ご都合主義の思考で意識の外に追いやったらしい。篠塚に対する想いには自身でも気づかない妄想じみた錯覚が含まれており、また篠塚が怖くも何ともないのに“怖がっている”と思い込んでいた。

モチーフは、オードリー・ヘプバーン主演の『ローマの休日』であり、ジョー・ブラッドレー→篠塚、アン王女→アラムということらしい。前の第3巻の「EXTRA MISSION~慎悟の日常~」の"慎悟がバイトしている時、任務遂行中の篠塚は?"をコンセプトに描かれた、篠塚sideの本編エピソードである。