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西洋美術関連ブログ 思索の断片
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“絵画と食”スペシャル フェルメール「牛乳を注ぐ女」

2013-12-07 23:21:41 | 番組(美の巨人たち)
2013年12月7日放送 美の巨人たち(テレビ東京)
“絵画と食”スペシャル フェルメール「牛乳を注ぐ女」

二週連続「絵画と食」スペシャル。
前回のロートレック「ムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ」に続き、
今回はフェルメールの「牛乳を注ぐ女」が特集された。

いきなり本筋とは少しそれてしまうのだが、私はてっきり、
フェルメールの「牛乳を注ぐ女」は、アメリカにあるものとばかり思っていた。

それゆえ番組冒頭で、「アムステルダム国立美術館(オランダ)所蔵」とテロップが出て、少し驚いた。

私がアメリカにあると勘違いしていた理由は、ひとつには、2009年にメトロポリタン美術館(アメリカ)でフェルメール展が開かれ、その展覧会を訪れた(という)友人から、「ミルクメイドをみた」と聞き、それが私のなかで印象に残っていたことによる。

いま調べてみると、そもそもフェルメール作品の約1/3はアメリカにあるそうだ。
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~usami/vermeer.html

アメリカの美術館の主要なコレクションとなると、どうしても印象派以降の作品を思い浮かべてしまうところだが、意外にもフェルメール作品を多く所有している。

理由は詳しくは知らないが、いくつか考えられることがある。

ひとつには、ジャンルの問題だろう。
いくらフェルメールといえど、「風俗画」に分類される以上、17世紀のオランダではともかく、その後のヨーロッパ大陸におけるアカデミーが確立した「ヒエラルキー」のなかではあくまで下層に位置する。

歴史画や神話画の陰に隠れて、もしかしたら再評価まで時間がかかった画家なのかもしれない。
それゆえ、アメリカにも「チャンス」があったとも考えられる。

詳しいことに関しては、また調べてみないとわからない。

閑話休題。

今回の放送では、この有名な絵画に関する「新たな発見」として、「牛乳を注ぐ女」におけるフェルメールの絵画技法と、のちの抽象絵画(モンドリアン)との関連を紹介していた。

前回のこのブログでも書いたように、19世紀後半に誕生したいわゆる「印象派」の画家たちは、「筆触分割」という技法を用い、純色を重視して絵画制作を行った。
その「筆触分割」の考え方が発展して生まれた、ひとつの「究極形態」が、モンドリアンの抽象画である。

フェルメールの「牛乳を注ぐ女」にも、パンの描き方をはじめとして、のちの「筆触分割」の萌芽とも思える技法が用いられている。
また画面全体を見渡すと、確かに、女中の衣服(黄・青・赤)が真っ白な背景に映えているように、「純色」が際立っていることに気付く。

のちの抽象画を思わせる、純色を大胆にブロックごとに配置するという技法が、「牛乳を注ぐ女」にもみられるのだ。

しかし、当然のことながら、フェルメールが生きた17世紀のオランダには「抽象画」といった観念はなかった。
それゆえ、彼と、20世紀のモンドリアンとを単純に関連付けるのは危険であり、少なくとも学術的というよりは、現段階では「印象論」にすぎないようにも思われる。

今後、両者の関連性について、どこまで詰め切れるか、というのが見どころである。



http://en.wikipedia.org/wiki/The_Milkmaid_(Vermeer)

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