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玉飛接近

右玉&左玉、ときどき詰将棋

米長の右玉(1)

2013年04月21日 | 右玉
今回は昨年12月に逝去された米長邦雄永世棋聖の右玉(米長流右玉)を紹介。
米長永世棋聖といえば玉頭位取り・鷺宮定跡・米長流急戦矢倉を得意とされていた居飛車の本格派(新鬼殺しや角頭歩戦法も忘れてはいけません)ですが、私の調べでは1980年代後半から右玉を指し始めています。
米長永世棋聖の右玉の将棋は序盤巧者(本人は下手と言っていますが)らしい駒組みの序盤、泥沼流が発揮される中・終盤と見所が多く、とても勉強になります。右玉の採用は意外と多く、相性が良い戦法だったのかも知れません。
今回紹介する将棋は、森内俊之八段戦(1995年11月・JT将棋日本シリーズ準決勝第2局)。

▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲6六歩△6二銀▲5六歩△6四歩▲7八金△6三銀▲4八銀△4二銀▲2六歩△4四歩▲6九玉△7四歩▲5八金△7三桂▲6七金右△4三銀▲7七銀△3二金▲2五歩△5二金▲7九角△6二玉(第1図)

長手数進めましたが、ここまでのポイントは2つ。
1.2手目△8四歩
 早々と居飛車宣言をすることで矢倉模様に持ち込み、▲2五歩を遅らせるとともに引き角に誘導できます。
2.3三角と上がらない
 簡単に飛車先を切らせるうえ負担になる角を手持ちにできないというデメリットがありますが、それを補って余りある構想がこの後明らかになります。

▲3六歩△4五歩▲2四歩△同歩▲同角△8一飛▲1五角(第2図)

△4五歩が米長流右玉ならではの一手。引き角にさせたことにより4筋の歩が突かれることはないため指せるわけです。
先手の▲1五角ですがこれは妥当な手で、▲3七角と引き玉頭攻めを見ています(次回に続く)。

右玉ニュース

2013年03月12日 | 右玉
右玉ニュースという名の穴埋め記事。

1.千田翔太三段が四段昇段
 森信雄七段門下の千田翔太三段が2月23日に行われた第52回奨励会三段リーグ戦で最終日を待たずに四段昇段を決めました。
 千田三段は右玉を得意としているそうなので、活躍が楽しみですね。

2.右玉本、発売
 かつて「level.8」という右玉専門サイトを開設されていたレベル8さんが、電子書籍で右玉本を刊行されます。
 発売は3月27日(予定)。

3.細川大市郎さん、GPS将棋に勝ち100万円獲得
 ニコニコ動画で電王戦記念企画「人類vs最強将棋ソフト 勝てたら100万円!」が行われていましたが、3月3日に細川流右玉で有名な細川大市郎さんがGPS将棋に勝ち100万円を獲得。
 △6三玉というバグ手があったとはいえ、GPS将棋の最新版fishに勝つとは凄い!
 因みに、中川慧梧さんと下平雅之さん(高田流で勝利!)も100万円を獲得されています。

開始日時:2013/03/03
先手:細川大市郎
後手:GPS将棋
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7八金 △8八角成
▲同 金 △3二銀 ▲3八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲5八金 △5四銀 ▲3六歩 △3三銀
▲2六歩 △6二玉 ▲6六歩 △6三玉(第1図)

▲6七銀 △7四歩 ▲1六歩 △4四銀 ▲2五歩 △9四歩
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2二歩 ▲2八飛 △9五歩
▲7七桂 △7三桂 ▲7八金 △8五桂 ▲同 桂 △同 歩
▲5六歩 △3三桂 ▲4八玉 △3五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲3六歩 △4四銀 ▲2三歩 △2五桂打 ▲2二歩成 △同 飛
▲2六歩 △2四歩 ▲3四桂 △2一飛 ▲8二角 △7三角
▲同角成 △同 玉 ▲2五歩 △同 歩 ▲7七桂 △7二金
▲7五歩 △同 歩 ▲8五桂 △7四玉 ▲8一角 △7一金
▲5四角成 △同 歩 ▲2二銀 △同 飛 ▲同桂成 △6二角
▲7二歩 △同 金 ▲6一飛 △5一金 ▲9一飛成 △6三玉
▲8一龍 △6一角 ▲9三桂成 △3八歩 ▲同 銀 △7一金
▲9一龍 △8一歩 ▲9二龍 △5五歩 ▲8三成桂 △8二金
▲同成桂 △同 歩 ▲7四歩 △同 玉 ▲8六香 △5六歩
▲同 銀 △6三玉 ▲8二香成 △5七歩 ▲4七金 △5八歩成
▲同 玉 △5五歩 ▲6七銀 △5六歩 ▲同 銀 △5五歩
▲6七銀 △5六歩 ▲同 銀 △3九銀 ▲2七飛 △2六歩
▲同 飛 △2八歩 ▲3七桂 △9六歩 ▲9三龍 △7三角
▲7四歩 △同 玉 ▲8五金 △6三玉 ▲7四歩 △5三玉
▲7三歩成 △5二角 ▲6二と △8三歩 ▲同 龍 △6三桂
▲5一と △9七歩成 ▲7一角 △4二玉 ▲5二と △同 玉
▲7二龍 △4一玉 ▲3二成桂 △5一玉 ▲2一飛成 △3一歩
▲同 龍(投了図)まで149手で先手の勝ち

中原の右玉(2)

2013年03月09日 | 右玉
前回の続き。第2図からの進行を見ていきます。


△3五歩▲同歩△3六歩▲8二角(第3図)

後手は△3五歩と弱点の桂頭を攻めてきます。それに対し素直に▲同歩と応じ、△3六歩に▲8二角と角を打ち込みます。この角打ちからの構想を可能にするために▲5六銀~▲8五歩と指したのです。
角換わり右玉では手持ちの角を敵陣に打ち込んでポイントを稼ぐのは基本。ただ、通常よりも薄い陣形のうえ先に駒損をするのでかなり不安ですが、右玉が指せる流れになっています。この後の指し手を見てみましょう。

△9三香▲7一角成△8七角▲同金△同飛成▲8一馬△8八龍▲4七角△3七歩成▲同玉△5二銀▲3六馬(第4図)

飛車を閉じ込められた後手は△9三香と逃げてから△8七角~△同飛成と龍を作り好調のように見えますが、▲8一馬が狙いの一手。銀取りのうえ、遠く自陣玉頭に利いています。
△8八龍に金取りに▲4七角と受け、▲3六馬と引いて玉頭を制圧した第4図は先手よし。

この後、玉頭攻めが炸裂し、127手で先手が勝ちました。
中原十六世名人の指し回しはとても参考になるので、ぜひ並べてみてください(棋譜はこちら)。

中原の右玉(1)

2013年02月27日 | 右玉
今回は中原誠十六世名人の右玉を紹介。
中原十六世名人は本格派の居飛車党ですが、振り飛車や右玉も得意としていました。
右玉を得意とするプロ棋士は何人もいますが、卓越した大局観を背景にした指し回しは絶品で、私は中原十六世名人こそが最高の右玉使いだと思っています。
今回紹介する将棋は、現役最後の対局となった木村一基八段戦(2008年8月・王将戦二次予選2回戦)。


第1図は右玉の陣形が完成した局面。
陣形が完成した先手はここから動きます。

▲3八玉△1二香▲6六銀△1一玉▲5五歩△6三銀▲7七桂△7四歩▲5六銀△8六歩▲同歩△同飛▲8五歩(第2図)

戦いを始める前に玉を一路右に寄り戦場から遠ざけ、▲6六銀~▲5五歩と後手の銀を払います。▲5六銀は△3五歩と弱点の桂頭を狙われるのが怖いですが、▲7七桂と跳ねた時から先手にはある構想があり、戦えると踏んでいます。
一方、後手は穴熊に囲い直してから飛車先を切り、第2図の局面に。
次の手は当然△3五歩ですが、先手の対抗策は?(次回に続く)