「おいしい惣菜パン買って来て!」と妻は言う。これまで何度も言われてきた。2日に1回は朝食のためのパンをパン屋に買いに行く。そのパン屋は、朝7時半に開店し、色々なパンが次々に焼き上がって商品棚に並べられていく。多少、季節によってパンの種類は変わってくるし、新商品も並べられる。なるべく色々なパンが出揃うように食べる直前まで買いに行く時間を遅らせて、行くのだが、並んでいるのはほとんど変わらない。アンパン、カレーパン、メロンパン、フレンチトースト等々、でも、これだというパンは出てきたためしがない。妻が何をイメージして惣菜パンというのか私には分からないのが一番の原因なのだ。
「おいしいパンを買って来て!」、「甘いパンは嫌い。」、「カツなど揚げたものは朝はやめてほしい。」等々、妻の注文は多い。私から見ると、パンは甘いものという先入観がある。甘くなくておいしいパン?そんなものがあるのだろうか?私には大きななぞである。そして、ずっと悩まされてきている。
そこで、昨日、美容院に行った帰りに、駐車場からマンションに戻る車椅子を押しながら、「今日こそパンの問題を解決しよう!」と思い立ち、住んでいるマンションを通り越し、パン屋に向けて進もうとした。「どこへ行くの!」と妻が言う。「惣菜パンが分からないから、パン屋まで連れて行くから、教えてくれよ!」と返答すると。妻は、「疲れから、すぐに帰りたい。」と言い続け、それ以上前に進めなくなった。しぶしぶマンションに戻った。これじゃ、私に妻の食べたい惣菜パンなんて見つけられない、見つけられるはずがない。まさに「地頭と泣く子には勝てない」だ。私の意を決したたくらみはあえなく頓挫した。