どんぴ帳

チョモランマな内容

はくりんちゅ425

2009-04-12 05:05:26 | 剥離人
 私の前に立った大きな白人兵士は、じっと私の回答を待っていた。

「あー…」
 先ほど私は、『ヘッドスライディング大会』という国際的な親善の機会を、無下に断ってしまっている。今回の質問に対する回答如何では、我々日本の作業員とB海軍の兵士との間に、大きな(下らない)溝が出来てしまう可能性があるのだ。
 私は瞬時に熟慮すると、今の日本にとって最も重要な答えを導き出し、それを口にした。
「ワタシハぁ、スッケベデぇええええす!」
 一瞬で兵士の表情に変化が現れる。
「ホォオオオウ、スッケベデぇスカ?」
「イエス、アイアムア スッケベ!」
「ヤァアアアア、スッケベ、スッケベぇえええ!」
 兵士は大喜びをすると私の肩を両手でバンバンと叩き、そして力強い握手を求めて来た。
「アーユーア スッケベぇ?」
 私は握手と同時に、その兵士に質問を返した。
「ヤァアアアア、ミーツー!」
「おー、スッケベ、スッケベェ!」
「ヤァ!」
 兵士は半分口元を歪ませてニヤリと笑うと、力強く右手の親指を突き立て、その拳を何度もプルプルとさせながら、仲間の元に戻って行った。
「うひゃひゃひゃひゃ、何だかねぇ木田さん」
「ええ、何だか分からないけど納得してくれましたね」
 ハルと大笑いをしていると、兵士たちからも笑い声が聞こえる。
「スッケベ、スッケベェ!」
「スケーベ!」
「ホォオオウ、スッケベ、スッケベェー!」
 兵士たちは口々に『スケベ』という単語を連呼しながら、右手の親指を突き立て、私に向かって叫んでいる。これではまるで、私が『スケベ』の日本代表みたいだ。
「何だかなぁ、大体どこであんな日本語を覚えて来るんだかねぇ…」
「そりゃあ、Y町の呑み屋でしょ」
 ハルが即答して、自分で頷いている。
 
 私は兵士たちの『スッケベ!』という声援を受けながら適当に手を振って答え、常日頃、その名に恥じぬように行動しようと心に誓ったのだった。