鏡迷宮・遠き声 序章 靄❺

　私が電話を掛けるより、若様からしてもらう方が和尚様の機嫌が良い。姉が高齢で産んだ若様を我が子のように猫可愛がりしていて、何でも二つ返事で引き受ける。今回も墓まで同乗してくれるだけでなく、自家発電設備のチェックも手伝ってくれる事になった。 　庫裏の前には、派手な色のミッドシップカーが止まっている。ランチア・ベータ・モンテカルロ。この前まではフィアットX1/9だったはず。先代のコレクションから引っ . . . 本文を読む