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コロナ検証 長島誠一⑥新興国・発展途上国への影響 中国のゼロコロナ政策

2025年03月31日 09時12分07秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

(🍓ゼロコロナ政策は、本来は感染防御の方法だが、中国のロックダウン政策に誤用されている)

Ⅱ 新興国・発展途上国への影響

新型コロナは世界的パンデミックと呼ばれるように、先進国はもとより新興国や発展途上国にも大々的な衝撃を与えた。

中国経済の停滞

新型コロナは武漢市から全世界へと広まっていったが、中国では都市封鎖や厳しい一連の行動制限政策が共産党一党独裁政権下で実施された(🍓「ゼロコロナ政策」)。新型コロナ対策は感染症の予防・治療・撲滅の医学的措置と共に、経済活動を維持し人々の日常生活を保証するという「二律背反」的な全世界的に共通の課題を背負っていた。

ゼロコロナ政策と2020・21年経済成長  中国ではコロナが発生した2020年第1四半期にはGDP成長率がマイナス 6.8%と低下したが、それ以降は上昇に転じ、2020 年全体では主要国で唯一プラス成長した(年間 2.2%成長)。引き続く 2021年にも 8.1%成長し、世界経済の落ち込みを下支えした。しかしマクロ的な経済成長にもかかわらず若者の失業率は 20%に達し、過度のゼロ・コロナ政策は企業と消費者の行動を委縮させてしまっていた。

ゼロコロナ政策の行き過ぎ(2022 年) ゼロコロナ政策は最初の 2 年間はプラスの経済成長を達成して成功したが、企業や消費者に極端な行動制限を強制していたために生活が大攪乱され、消費者の消費行動を極端に減少させてしまった472。そのために企業活動を制限し、不動産バブルを崩壊させる危険が生じてしまった。しかし中国政府は4~6月の成長率がプラス0.4%でありコロナそのものの影響だと主張したが、現場では強制的な隔離政策によって旅行が萎縮し旅行業に大打撃を与えたり、消費者一般の節約志向と貯蓄率上昇をもたらした。都市外への外出制限や原材料の輸入コスト増が地方の日系部品メーカーを操業停止に追い込んだりして、製造業の購買担当者景況感指数(PMS)を 49.0 に押し下げていた(2022年 7月)。

このようにコロナ禍と「ゼロコロナ政策」で悪化する中国経済に対して、共産党中央の「ゼロコロナ政策」と国務院の「目標経済成長」達成との水面下の政治駆け引きが始まった。地方政府は、共産党中央の政策徹底指令と国務院からの経済成長維持要請の板挟み所帯のおかれていた。

ゼロコロナ政策の緩和  習近平国家主席は「ゼロコロナ政策の堅持こそ勝利」と号令して膨大な予算が投じられてきたが、そのために全土の疲弊を招いていた。地方政府の負債総額はコロナ以前のGDP20%前後から 2022年には 29%と急上昇し、地方政府の歳入に対して 100%以上になった。そのために人々の生活も打撃を受け、武漢市では医療補助減額に対する高齢者の大規模な抗議デモが起こった。河南省商丘市では財政難の影響で路線バスが運行を停止してしまった。「ゼロコロナ政策」に協力してきた人々にも影響し、隔離施設に指定された広州市内のホテルでは 2023 年 2 月になっても、部屋代や食事代の大半が政府から支払われていなかった。

中国では2022年に61年ぶりに人口が減り少子高齢化は加速すると予想され、医療費や社会保障費はさらに膨らみ、経済刺激のための財政出動などと重なって財政難が鮮明になった。2023 年 3 月に開催された全国人民代表大会では習近平政権が強化され、習側近の李強が新首相に選出され、経済成長率の目標値は最近では最低の7.0%と抑えられたが、新首相は7.0%達成も難しいと発言している。ゼロコロナ緩和政策はそのまま継続し、コロナ対策と絡んだ経済政策はほとんど取り上げられなかったようである。

発展途上国への打撃

新型コロナは中国から欧米の先進国に瞬く間に広まっていったが、やがて全世界的なパンデミックとなり新興国と発展途上国を巻き込み、世界的な経済停滞をもたらした。特に発展途上国の多くは資源と観光に依存し、さらにドル債務を抱えているから、経済的リスクが集中していた。ワクチン薬・検査薬の分配や発展途上諸国の保健システムの整備のためにWHOが提唱したパンデミック条約は、先進国と途上国の対立によって2024年5月末に採択が断念されてしまった。

コロナ・パンデミックにより途上国への資本緊急資金は、支援国100カ国におよび、そのうちサハラ砂漠以南にあるサブサハラ諸国が 39 カ国も資本の流出が起こり、ドルへの集中のリスクが顕在化した。

しかし中国は「ゼロコロナ政策」が成功して 2020 年に実質 GDPが 8.4%成長し、世界経済を牽引した。ASEAN 諸国はデジタル技術を活用し、コロナ感染経路追跡アプリの開発が加速化し、デジタル化が一足飛びで進んだ。ASEAN 諸国の多くは着実に経済が発展してきたが、都市と地方との経済格差の拡大に苦慮している。アフリカや中南米諸国は経済の回復が遅れた。

新興国・発展途上国はすでにグローバル・サプライチェーンに組み込まれているから先進国の製造業不振が伝播し、中位所得国を中心として工業部門の雇用を押し下げた可能性がある。2022 年にロシアのウクライナ侵略戦争が勃発したが、2020 年の世界の小麦輸出はロシアが 17.7%(第 1 位)ウクライナは8.0%(第5位)、トウモロコシ輸出はウクライナ13.3%(第4位)・ロシア1.1%(第11位)であった(2019 年)。中東やアフリカ諸国を中心として発展途上国はウクライナとロシアへの食糧輸入依存度が極めて高く、深刻な食糧危機に直面した。

ウクライナ戦争以前から世界の食糧危機は発展途上国を中心としてはじまっているが、コロナ禍によってさらに促進されている。異常気象の影響か東アフリカのケニアでバッタの大群が襲い、またたくまに東アフリカから南アジアの農作地帯の食料生産に大打撃を与えた。東南アジアではコメの輸出規制が始まった。多くの発展途上国では国内での「農村部での過剰」と「都市部での不足」が併存し、「国産高級食材の過剰」と「輸入に依存した業務用の安価な食材の不足」が起こっている。特に危険が高い国はイエメン、コンゴ民主共和国、アフガニスタン、ベネズエラ、エチオピア、南スーダン、シリア、ナイジェリア、ハイチの10カ国である。貧困ライン以下で暮らす世界の子供たちは6億7200万人になる可能性があり、その3分の2はハラ以南のアフリカと南アジアに集中しており、食糧危機の集中地帯と重なっているといえる。

 


コロナ検証 長島誠一⑤世界経済への衝撃

2025年03月30日 09時23分38秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

第3節 新型コロナ・パンデミックの衝撃

コロナ感染症のパンデミックは3年以上が経過した2月11日時点で依然として猛威をふるっており、世界の類型感染者6億7,268万4,379人・死者685万1,559人にのぼり、日本の累積感染者3,296万158人・累積死者 7 万 579 人になっている。コロナ・パンデミックが与えた経済・社会・生活への影響(打撃)は世界金融危機以上であり、世界大戦に匹敵する大惨事である。以下、その打撃(衝撃)を概略しておこう。

 

Ⅰ 世界へ衝撃

2020 年の新型コロナ・パンデッミックは、第1 次世界大戦のときのスペイン風以来の約100 年ぶりに人類全体を襲ってきた感染症である。それは 21 世紀初頭の現代資本主義体制にとってのショックでもあり、さまざまな現代資本主義の諸矛盾を露呈もした。以下、新型コロナが与えた世界的衝撃をさまざまな視点から概略していきたい。

世界経済の動向(2020年~22年)

新型コロナ感染のショックは「リーマン・ショック」(世界金融危機)を上回り、1929 年大恐慌以来最悪の経済危機をもたらした。しかし新型コロナ感染は過剰蓄積や金融の暴走(「システミック・ミス」)が引き起こしたのではなく、感染症という自然的病理により発生し、その対策として取られた人為的な経済活動の制限や停止による経済水準の大幅減少である。しかし経済恐慌も世界金融危機も新型コロナ危機による経済の縮小も「再生産の攪乱」としては共通している。

2021年になると感染率が低下した国々を中心として世界経済は前年の実質GDP落ち込み幅を取り戻す勢い(成長率 6.0%)を示したが、感染率が低下しないアフリカや中南米諸国では回復が遅かった(不均等回復)。しかし 2022 年2 月24日から本格化したロシアのウクライナ侵攻は世界経済全体の成長率を押し下げてしまった(4.4%→3.6%)。

大恐慌以来最悪の経済危機(2020 年) コロナショックで激変した世界経済を IMF は「大封鎖」(グレート・ロックダウン)と表現した。事業停止やサプライチェーン寸断による供給リスクと、対人サービスや耐久財の需要が蒸発するリスクのダブル・リスクに直面して、四半期GDPの先進国の落ち込み予想(1月時点)をさらに引き下げ(6 月時点)、新興国・途上国のプラス成長の予想をマイナス成長と訂正した。コロナ・ショックによる人と人との接触が制限されたり、サプライシェーン寸断による経済活動が制限され、2020年第 1四半期には中国では 1992年以来初めてマイナス成長となった。欧州諸国も 10~20%近くのマイナス成長になり、新興・途上国でも経済停滞が見られはじめ(メキシコ、マイナス 4.9%)、全世界で経済が低迷するという異次元の経済危機になった。都市封鎖や営業自粛によって、不要不急のエンターテイメント・サービスやレストランなどのイートイン営業が停止され、供給が制約され需要が満たされない状況が発生した。需要面では外出制限・自粛や渡航制限は対面サービス需要を急減させ、観光・宿泊・航空などに打撃を与えた。

また耐久消費財需要が急減し輸出・生産を大幅に減少させ、特に自動車の需要が世界的に蒸発した。供給と需要のダブルショックの影響で雇用が大幅に低下し(アメリカでは 2020 年 4 月に失業率が 14.7%に上昇)、先行き不確実性・失業増大・所得低迷によって消費と投資の手控えが生じた。コロナ関係品目(医療・衛生用品やステイホーム品目)が貿易の縮小を下支えした。コロナショックは資源や金融にも影響し、原油価格は4月中旬に急落し、各国の株価も3月中旬に急落した。

不均等回復(2021年)世界経済の実質GDP成長率は6.0%と前年の落ち込み幅を取り戻す勢いになり、米国は 6.0%中国は 2.3%(2020 年)・8.4%(2021 年)であり、両国が世界経済の回復を牽引した。しかしアフリカや中南米の回復は鈍かった。各国の経済政策やテレワークなどにって耐久消費財(自動車・家電)の需要が戻り、先進国の製造業が早期に回復したが、対面・接触型サービス業の回復は鈍く今後の感染状況とワクチンの効果・普及に左右された。世界貿易も、世界経済の回復とともに回復した。

米国経済の回復のスピードは「リーマン・ショック」からの回復より早く、従業員雇用を前提とした起業が増加した。中国経済は世界に先駆けて回復したが、生産年齢人口が減少しており、特殊出生率の低下が予想される。欧州では雇用維持に重点を置いた財政出動を実施して失業率の大幅上昇を回避し、EU の復興ファシリティを設立した。各国とも政府の役割が増大し経済安全保障が強化され、中央銀行が「禁じ手」をやぶって政府の積極的財政主導を助け、アメリカでは 1.9 兆ドルの新型コロナ救済法を作った。また、人権や環境などの「共通価値」への関心が高まった。

累積の財政赤字額はアメリカでも増大しており、コロナ後の経済運営に影響するだろうことは当然予想されるが、先進各国の中央銀行は各国政府のコロナ対策の積極的財政出動を金融面から支えた。

コロナ・ショックに対応して中央銀行は「異例の政策」を取り、企業の直接支援や無制限の国債購入に走った。FRBは2.3兆ドルの資金を供給し、ハイリスクの社債やETF(上場組み合わせ投資信託)買い入れた。ECB は新たな資産買い入れ枠を広げ、日銀は CP・社債買い入れの上限を拡大した。こうした各国政府のコロ ナ対策の積極的財政出動によって先進国の経済は回復したが、アメリカや欧州の中央銀行は異常緩和政策での低金利政策を転換し始めた。ところが日銀は依然として超金融緩和政策を固持しているので、欧米との金利差が拡大し急激な円安と輸入物価の上昇に日本は見舞われている

ロシアのウクライナ侵略の影響(2022 年)ロシアは 2022 年 2 月 24 日ウクライナに侵略したのに対して、G7 を中心とする先進国は大規模な経済制裁を実施し、経済的分断の懸念が生まれた。新興国や発展途上国は経済制裁を控え、ロシアとの経済・政治関係で中立的姿勢を示している。

ロシアとウクライナは世界のGDPに占める割合は合わせて2.0%(2021年)であるが、食糧やエネルギーの主要な供給国であり、それらの貿易依存度の高い国には深刻な影響を与えている。また供給制約や価格高騰によって、コスト・プッシュ型のインフレが世界経済全体で起こっている。ロシアの侵略戦争によって侵略されたウクライナの実質GDPの落ち込みは35%であり、侵略したロシアも8.5%の低下であり、世界経済全体の成長率を 4.4%から 3.6%と 0.8%押し下げることが予想されている(IMF予想)。

コロナ検証 長島誠一④日本政府の場当たり的対応 五輪開催の強行


新型コロナ重症化メカニズム、マウスで解明 東大研究施設チーム

2025年03月26日 15時11分00秒 | コロナ検証

新型コロナ重症化メカニズム、マウスで解明 東大研究施設チーム

Yahoo news  2025/3/26(水) 毎日新聞

 

 新型コロナウイルス感染症で重症化するメカニズムをマウス実験で明らかにしたと、東京大新世代感染症センターの河岡義裕機構長らの研究チームが発表した。肺の血管内に白血球の一種が異常に接着することで血流が滞り、重篤な肺炎を引き起こす可能性が示された。

 新型コロナは、高齢者や基礎疾患がある人で重症化しやすいことが知られている。要因の一つとして、肺に血栓ができることで重い肺炎となることが知られるが、その形成過程などのメカニズムは不明だった。

 研究チームはまず、さまざまな基礎疾患のモデルとなる7種のマウスを用意。それぞれにウイルスを感染させたところ、肥満・糖尿病モデルで重い肺炎が起き、著しい死亡率の上昇が見られた。

 このモデルの生きたマウスで、肺炎を引き起こす様子を確認した。その結果、白血球の一種「好中球」が肺の血管の壁に異常に接着し、それに伴って血小板が集まり、血流が阻害されることが示唆された。好中球の表面には、接着を促す因子が通常よりも多く出ていたという。

 重症患者でも、好中球の表面に接着因子が多く出ていることを示すデータがあり、重症化の一因であると考えられる。このため研究チームは「異常接着を防いだり、異常な接着を引き起こす好中球を除去したりすることで、重症化を予防できると期待される」とする。

 河岡さんは「肺などにできる血栓は、新型コロナ後遺症の一因とも言われている。今回の研究で見いだしたメカニズムは後遺症にも関わっていると考えられる」と強調した。

 成果は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。【渡辺諒】


コロナ検証 長島誠一④日本政府の場当たり的対応 五輪開催の強行

2025年03月15日 17時33分25秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

第2項 日本政府の場当たり的対応

第1項で紹介したコロナ対策は厚生労働省と専門家たちが中心となって進められたが、本稿では最高司令部となるべき政府の対応を検証する。

Ⅰ 変異ウィルスの高波

2020年9月16日安倍晋三は場当たり的なコロナ対策のままに内閣総理大臣を辞職し、忠実に安倍政権を宣伝していた官房長官の菅義偉に交代した。そして官邸は入国制限を緩和した。岡田春恵は政府の対策が後手に回り続けたことを告発している。

感染の危険が高まる冬を控え欧米で流行している変異ウィルスが日本に入ってくる危険性が高い中での入国緩和を政府はしてしまった。変異ウィルスの特徴は、そのSタンパク質の構造がヒトの細胞側の受容体にはまり易く結合力が強く、感染率が高まりかつウィルスの増殖が速かった。政府は検査拡充に渋ぶり、monitor の拡充や入国検査の厳格化すべてが後手に回された。こうした悪い予感は的中し、2020年のクリスマス前に感染者は1日3,000人を超えてしまった。この変異ウィルスは底知れず、発端から1年にしてコロナ感染の第3波が始まった。感染の中心は家庭・職場・各種施設に移行し、病床の確保・抗ウィルス薬の評価・ステロイドなどの治療薬の確保・緊急酸素吸入施設の確保などをしなければならなかった。しかし、「飲食の時短」のみでゲノム検査は低迷していた。

私的会話で会長・尾身は、ゲノム検査の基礎データ不足で変異ウィルスの感染状況が分からないと答えていた。コロナ第3波はピークを終えて、緊急事態宣言の解除の議論が報道された。菅総理や小池都知事が集団感染防止に向けての検査の拡大の発言をし、尾身たち専門家の発言も対策強化へと舵が切られた。しかし科学的根拠のないままに「解除やむなし」という「雰囲気報道」が出てきて、緊急事態宣言は予定通り2021年3月21日医に解除された。

Ⅱ 五輪開催の強行(2021年7月)

2020年開催予定の東京オリンピックは 2021年に開催されることが強行に決定された。変異ウィルスが高いのに東京の感染者が少なかったことには違和感があり、オリンピックの強行開催のためなのかという疑問が生じていた。mRNAワクチンが登場し、ワクチン接種の迅速化と変異ウィルスのmonitorの強化が必要となったが、体内にできた抗体によってかえって感染や症状が促進される ADE(抗体依存性感染増強現象)の恐れもあった。ワクチン学会は ADE の可能性を認めたが尾身は知らなかった中で、地方自治体が無症状感染者の検査を始めようとした時に国交省は GoTo 代替としての自治体の旅行割引に国が支援することを決定した。

しかしイギリス型ウィルスが一気に拡大し、第4波が関西圏から火を噴き医療逼迫が生じ、一般医療が受けられない事態が起こってしまい緊急救命に支障が生じ、4 月 25 日に 3 度目の緊急事態宣言が制限付きで4都府県に出された。さらにイギリス型より感染力の高い想像を超えるインド型に置き換わり、死者が急増した。5 月 15・16 日の ANN世論調査では内閣不支持率が 45.9%、「ワクチン接種うまくいってない」が85%、五輪は中止すべきは45%となった。5月12日に緊急事態宣言が6都府県に「まん延防止措置」が8道県に拡大され、沖縄県は緊急事態宣言を出した。尾身会長は「今の感染状況での開催は普通ではない」と発言し(6月3日)、東京都は4回目の緊急事態宣言を出した。

 このようにコロナ感染の第4波が爆発し、世論もオリンピック開催反対の声が強いにもかかわらず、五輪開催は政府の決定事項であったから 7 月 23 日に無観客で開催された。そして第 5 波になり、なし崩し的に自宅療養が増えて、酸素が必要な人が自宅で療養するという異常事態になった。テレビ局のスタッフにも感染者が増加したが、五輪報道一辺倒であり、競技場周辺の感染症病棟は悲惨な状態にあった。

Ⅲ 政府の新方針

政府はオリンピック開催中の8月2日から東京に加えて首都圏の3県と大阪府に緊急事態宣言を拡大すると発表したが、政府の新方針は「重症リスクの高いものは入院」させそれ以外は自宅療養させる「入院制限」であり、菅内閣の支持率は急落した。8月 5 日時点で東京都の自宅療養者数は過去最多の1 万 6913 人で調整中は 1 万 543 人にのぼった。強行開催された東京オリンピックのただ中で東京で感染爆発している中で、厚労省では新型コロナ症を「2 類から 5 類へ」緩和し「自治体や医療機関の負担を軽減」しようとしているとする報道があったが、それではかえって感染を加速化するようなものであった。8月20日に全国で第5波最多の新規感染者が2万5,000人を超え、8月27日には自宅療養者が11万人を越してしまった。

岡田は田村厚生労働大臣に、「コロナワクチン接種の効果は限定的であり、発症や重症化を阻止し死亡者の割合を減らす効果はあるが、ワクチンによって感染阻止はできない」、「コロナ感染した妊婦のための病院」の設定を提案した。感染が拡大し「医療逼迫」が起こっている最中に豪雨災害が襲い、「感染しない避難所生活」マニュアルの全文無償で公開を岡田は決心した。

コロナなどの感染症の本当の怖さは、致死率が低下しても感染者が増えれば死者が増えてしまうことにある。内閣官房参与の岡部の総懺悔論が飛び出し、尾身会長は責任転嫁するような発言を繰り返し、厚労省は田村大臣に従っているが東京都は小池知事の言う通りに動かない、などの状況が続いた。そして、「日本の医療現場の強さが何とか社会を維持している、自治体や医師会の頑張りも現場の強さの表れだ」と大臣に最後の電話をかけた。菅総理が9月3日午後に突然「総裁選不出馬」を表明したので一挙に政局となり、田村大臣の残留を岡田は願った。

岡田はこの2年間を振り返り、日本のコロナ対策の失敗は専門家たちがリスク回避したことにあり、失敗を繰り返さないためには「発生時から最悪事態を想定し、リスクを取り、医療と経済を守り抜くこと」が大切だ。田村大臣も田代眞之も岡田自身も人の死に敏感だったのだと思った。21 世紀はグローバル化した高速大量輸送時代の「感染症の時代」であり、それへの事前準備と対策の国民理解の醸成を急ぐべきだと思った。

コロナ検証 長島誠一③日本の感染症対策の失敗 岡田晴恵・児玉龍彦vs尾身茂・岡部信彦


コロナ検証 長島誠一③日本の感染症対策の失敗 岡田晴恵・児玉龍彦vs尾身茂・岡部信彦

2025年03月14日 21時24分55秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

第 2節 日本の感染症対策の失敗

白鴎大学教授の岡田晴恵は、日本政府のコロナ感染症対策をマス・メディアにおいて精力的に批判し、国民のコロナ克服のために啓蒙活動をしてきたてきた。日本政府は後手後手の対策を取り続け、ありえないようなミスをたびたび繰り返してきた、と総括している。以下時期を追ってその実態を追跡しよう。

岡田晴恵『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』新潮社、2021年12月)

第1項 初期対応の失敗

Ⅰ コロナ感染症を軽視した厚労省の初期対応

厚生労働省は武漢市での非定型肺炎発生と発表したが、ヒトからヒトへの感染なしと誤って発表した。そして厚労省の選んだ専門家たちは、リスク評価や政治家へ説明するネゴシエイションにたけた平時の指揮官たちだった。岡部信彦は 30 年近くの厚労省の感染症対策をうまくやってきたが、専門家筋は楽観的な解説をし、政治家たちは日本に新型ウィルスが侵入しないようにするための水際の検疫を重視した。しかし新型ウィルスは潜伏期間が長く、感染していても無症状者もいる検疫で見逃す危険性があったにもかかわらず、検疫体制の強化、陰性者の保護・隔離施設、専用病床の確保、専門病院の選定などの次の対策を遅らせてしまった水際対策の検査体制の杜撰さもあって、日本各地で集団感染(クラスター)が発生し、厚生労働省の専門家として岡部は表面から消え、尾身茂が登場してくる。

モーニングショーでの警告

政府は中国便を停止せず中国人観光客が殺到したが、テレビ朝日の「モーニングショー」で岡田は武漢からの帰国者に症状がなくても感染すると指摘し、ホテルの相部屋対策を警告した。さらに岡田は BS 生放送「報道 1930」において、「新に感染症に指定し、特措法の枠内で対応できる道をつけておくべき」と発言していたが、政府の対応は遅かった

しかし報道の方が反応が早く、「モーニングショー」の現場に岡田は1月13日にすでに登場した。元国立感染症研究所インフルエンザウィルス研究センター長の田代眞人(WHO での感染症パンデミック対策の実質的トップ)は「テレビ出演」を拒否したが、岡田へ情報は送られ続けた。モーニングショーの注目度が上がり、玉川徹や岡田春恵の発言が内閣調査室の中枢にも上がるようになった。「モーニングショー」の番組スタッフの取材能力・理解力は素晴らしく、パネルの完成度が高く聞き取りの意図が台本に反映しているし、司会の羽鳥慎一やコメンテーターの玉川は相当に勉強していることが分かった。

Ⅱダイヤモンド・プリンセス号の感染、専門家会議発足

2020年 2月 1日、政府は新型コロナウィルス感染症を指定感染症の 2類にする。中国国家衛星健康委員会は中国全土の類型感染者1万1,791人・死者259人と発表したが、武漢だけで感染者35万人と推定された。2月 2 日未明に香港政府は、豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号下船者の新型コロナウィルス感染を伝達した。2 月 3 日に横浜港に入港した乗客乗員 3,711 人の検疫が開始され、岡田は「モーニング・ショー」で全員の PCR 検査と上陸不可とすべきだと答えた。指定感染症を 2 類指定にし厚生労働省のみのマターとしたのは、大きな失敗ではなかったか。2 月 14 日政府は「新型コロナウィルス感染症対策専門家会議」を組織したが、内閣ではなく厚生労働省直属であり、設置の理由説明は一切なく議事録も作成されていなかった。

この間に明確な感染経路が不明な国内感染者が報告され(隅田川の屋形船でのタクシー運転手たちの集団感染和歌山県の済生会有田病院内での院内感染)、厚労省は「相談窓口」を設置し、自治体の「帰国者・接触者相談センター」への電話を指示し、保健所が窓口となって対応することになった。その際に「37・5度以上の発熱4日以上」を相談の目安としてPCR検査の数を抑制しようとしたために、早期診断・早期の医療開始という感染症の基本的対処戦略を放棄する大きな間違いだった。

Ⅲ 水際対策の強化

厚生労働省は、早期診断・早期の医療開始という感染症の基本的対処戦略をせずに、水際でコロナ感染症の侵入を防ごうとした。政府は武漢から邦人を帰国させようとして、1月28日から2月16日~17日にかけて計5便で828人を帰国させた(うち14人が感染者)1月30日政府は新型コロナウィルス感染症対策本部(政府対策本部)を設置し、指定・検疫感染症に指定し、国家安全保障会議で湖北省滞在歴のある外国人渡航者の日本上陸を拒否した。そして3月5日に習近平中国国家主席の訪日延期を発表し、中国全土と韓国からの入国を制限し、4 月にかけて欧州や北米そして全世界に制限対象を拡大した。

Ⅳ 専門家会議と行動制約政策―「3密」回避と一斉休校の政策

2020 年上旬に厚労省対策推進本部の諮問機関としてアドバイザリーボードが設置され(人選は結核感染症課職員が決定)、2月 15 日政府対策本部に移され専門家会議となった。院内感染や原因不明の感染が各地で増加した。専門家会議は 2 月 21 日に感染流行の抑制ではなく、流行の早期収束を重視していわゆる「3密」回避の行動制限を国民に要請した。2月25日に厚労省対策本部にクラスター対策班を設置した。3 月 18 日に首相官邸(災害・危機管理情報)がツイターで 3 密(密閉・密集・密接)の回避を国民に広く呼び掛けた。専門家会議は 2 月 24 日の記者会見において「コロナウィルスとの戦いは「正念場・瀬戸際」に来ていると発言し、政府(安倍首相)は突如「全国の小・中・高などの一斉休校」要請を発表した(所轄官庁である文科省にも知らせずに)。

2 月 25 日に設置されたクラスター班押谷の洞察を西浦がデータづけたが、国と専門家、国と自治体の信頼感に深い問題があった。年齢層を限定した呼びかけの反発が顕在化したが、対策班にはクラスター災害用のネットワークが使用禁止、国と自治体の長年の軋轢のために感染研や厚労省でさえ自治体の情報をすべて共有できていないという「感染情報をめぐる軋轢」があった。そして人材不足を救うための「ボランティア班」が登場した。

「WHO 事務局上級顧問/英国キングスカレッジ・ロンドン教授の渋谷健司が、新型コロナの感染防止には「検査と隔離」が基本と述べたが、日本の専門家会議はは感染集団(クラスター)対策を重視した。そのために「積極的医学調査」の枠内で検査を進め、保健所と衛生研究所の負担が増し、検査を絞り続けた方針は良くなかった、と警鐘した。

Ⅴ 桜の季節の感染拡大と遅れた検疫対策

武漢由来のウィルスは封じ込めたが、3 月中旬からは欧州ウィルスが流入し、日本の感染は拡大していった。東京都・大阪府・兵庫県に爆発的に患者が急増したが、川崎市健康安全研究所所長・岡部信彦は対策の現状維持を主張した(御用学者の本分が発揮された)。大阪・兵庫間の往来自粛が呼びかけられ、厚労省職員の大阪府庁健康医療部長・藤井睦子に専門家の資料データを見せるが、吉村府知事は厚労省資料と発言した。責任の所在をめぐって混乱し責任の押し付け合いが加速化し、文書とりまとめの文責は厚労省になった。緊急事態宣言を想定した基本的対処方針等諮問委員会に専門家会議構成員全員の参加が要請され、全員抜けなかった。

Ⅵ 緊急事態宣言

国際感染センター長大曲貴夫や防衛医科大学校感染症・呼吸器内科教授川名明彦や日本感染症学会理事長館田一博たちは、医療崩壊を心配し、医療逼迫の声が集まった。日本医師会も危機感を持ち、人出の「最低 7 割、極力 8 割削減」を打ち出したが、「人出 8 割削減」案に安倍晋三総理たちは難色を示した。政府対策本部が設置され、5月7日に緊急事態宣言が7都府県に発出された。3月25日の小池百合子都知事の「ロック・ダウン」発言は拡大解釈される恐れがあったし、無謬性を背負う官僚組織科学的見解を重視する専門家との溝は埋まらなかった。しかし緊急事態宣言によって医療調整が気に進んだ。

Ⅶ PCR検査こそ緊急に

無症状感染者(サイレントキャリア)が3割とも5割とも報告される状況になったが、都知事対官邸という構図ができてしまった。「接触制限ばかりの対策」であり、4 月 7 日に緊急事態宣言が出されたが、無症状感染者を取りこぼした接触制限や商売自粛要請ではコロナは克服できないことは自明だった。厚労省の方針で保健所は4割減少していたが、沖縄の群星沖縄臨床研修センター長徳田安春ら医師600 人以上が「一般医療機関の医師に PCR 検査を判断させる」るように提言した。山梨大学学長島田眞路 PCR 検査を地方の大学病院へ拡大するように訴えたが、専門家会議の押谷仁は検査を抑えるべきだと主張していた。緊急事態は宣言されたが、政府はリスク逃れであり、国家の意思決定は誰なのかが全く分からなくなった。厚労省の組織と国のガバナンスを改革する必要性が痛切に感じられた。

しかし5月14日に、8都道府県を除く39県の緊急事態宣言が解除されてしまった。感染研時代に田代眞人は「緩めたら、すぐに戻る」「市中感染を抑えてから解除だ!」とパンデミック対策を教えていたように、パンデミック対策は危機管理であり安全保障問題でもあった。高い陽性率は検査不足を意味したし、検査数を上げれば感染者減になるとの指摘が続出したが、政治家や専門家はその対策の重要性を理解しなかった。すなわち、再選された小池都知事は医療機関への損失補填を訴えたが、新宿が感染集中地となっているのに飲食店の時短・自粛要請しかしなかった。専門家会議は廃止され新型コロナ感染症対策分科会が発足したが、尾身茂はありえない「1%の偽陽性率」に拘り PCR検査を広げなかった

もちろん、無闇に PCR 検査を増やせば死亡者数が減少するとは必ずしもいえない。陽性検査率や感染者の死亡率という予見に死亡者は左右される。陽性検出率が低かったり死亡率が低ければ検査数の増加が死亡者数をあまりさげないであろうが、陽性率が高かったこの時期には当然検査数を増やして感染者事態を爆発させないことが正しい政策であった批判を恐れたり、通り一遍の解説が増え対策が遅れ、マンパワーと感染防御用品不足・病院の経営疲弊が進み、6 月前後にはエピセンター(感染が集積している場所)はスポットからエリアそして地域へと拡大していった。

岡田春恵は「モーニングショー」で集団検診を提案し、東京から主要都市そして地方都市へ拡大する」と警告していた。Go To キャンペーンが第 2 波の真っ最中に始まったが、むつ市長・宮下宗一は反対し(「報道 1930」)、山形知事・吉村美栄子や吉村大阪知事らが戸惑いをしめした。療養ホテルや病床の確保が困難化し、医療従事者の不足が続いたが、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が国会でエアロゾール(空気感染)の危険性を警告し、換気励行の推奨を明言し、さらに岡田を「ダイヤモンドになれ」と励ました。スーパーコンピュータの「富岳」のシュミュレーションによって、国民の理解が深まっていった。

東京都医師会が国の無策を批判し声明を出しはじめ、「Nスタ」はコロナ報道を続け、BS番組で大臣経験者たちに4つの提案(発熱外来、検査体制の拡充、治療薬の検証と服用、コロナ専門病院・野戦型集約病院の創設を訴え続けた。ウィルスはさまざまな地域に広がっているのに全体としてはコロナ報道は減少し、分科会は「感染は拡大しているが爆発的な拡大ではない」との見解だったが、会長の尾身や厚労省の医系技官(官僚)は医療現場を知らない「専門家」たちであった

7 月 3 日に専門家会議が廃止され、「新型インフルエンザ等対策有識者会議」と「新型コロナウィルス感染症対策分科会(会長・尾身、会長代理・脇田)」に移行した。5 月 14 日に政府は感染状況・医療提供体制・監視体制を踏まえて、3段階にかけて緊急事態宣言を解除する方針をだした。

コロナ検証 長島誠一②日本のコロナパンデミック感染の波