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同人戦記φ(・_・ 桜美林大学漫画ゲーム研究会

パソコンノベルゲーム、マンガを創作する同人サークル

初投稿!(後編)【舞夢】

2010年04月27日 | 短編小説
―聞きたい?―
「うん!」
少女の力強い返事を聞き、猫は2~3回顔を洗ってから、あることを告げた。
―その友達に、会いに行ってごらん―
「えっ……」
予想だにしなかった言葉に少女は驚く。
「でっ……でも」
―大丈夫。キミの今の気持ちを考えてみて?―
「う~ん……」
―どんな気持ち?―
しばらく考え込んでから少女は答える。
「さみしい……かな」
―そう、今キミはいつも一緒にいる友達がいなくてひとりぼっち。だから寂しい……だったらキミの友達も、おんなじ気持ちじゃないのかな?―
「……あっ!」
猫の言わんとすることに思い当たり、少女の表情が明るくなる。
―わかったかい?―
「うん、わかった! 仲直りできる気がする!」
言うが早いか、少女は駆け出した。しかし、階段の手前で立ち止まり猫の方に振り返る。
「ネコさん、ありがと! 今度は友達と一緒に遊びに来るね!」
―あぁ、待ってるよ―
それを聞くと少女は、元気良く走り去っていった……。

「とんだ手の込みようですな、若。何時の間に猫に化けられるようになったので?」
少女が去った後、突然狛犬の石像が猫に話しかけた。瞬間煙に包まれ、その姿は犬のような生物へと変わる。
「立ち居振る舞いまで、まるで本物の猫ですな」
「ボクは猫になんて化けてないよ」
しかし声は猫からでなく上から降ってきた。見ると巨大な一本杉の枝の上に男が一人座っていた。
「若、そこに居られたのですか!」
「うん、心に語りかけてただけ。猫だってした方が話しやすいと思って」
男は降りてくると、猫を抱え撫で始める。
「しかし、若も物好きですな。ここら一帯の土地神であられるのに」
「…………」
「正式な御祈念ならまだしも、情けであのような小娘にお心付けをなさるとは……」
「…………」
「大体若は……聞いておりますか?」
狛犬の言葉を無言で聞いていた男だったが、
「……狛、五月蠅い」
「なっ!」
ボソッと文句を言った。
「こっ……この狛が五月蠅いですと!?」
狛は見る見る顔を赤くして、男に説教を始める。
「この神社にお仕えして早600年! 雨の日も風の日もお守りしてきたこの狛を、五月蠅い呼ばわりとは、どういう了見でございますか! 先だって申し上げた通り――」
しかし、男に狛犬の説教は届いていなかった。ただ遠くを見つめ、腕の中の真っ白な猫を撫でながら、あの少女と友達に思いをはせるのだった……。


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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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誰の作品だかわかる! (アサヒ)
2010-06-02 22:58:20
前回の同人誌を作る際、編集しながら舞夢くんの小説作品を何度も読みました。

作者の名前を伏せたとしても小説の文体と雰囲気で舞夢作品だとわかりますよ(笑)
動的なセリフが多いのがポイントですかな?

実に個性的です!
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