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同人戦記φ(・_・ 桜美林大学漫画ゲーム研究会

パソコンノベルゲーム、マンガを創作する同人サークル

ロックスターに、俺はなる! 【律氏】

2011年08月07日 | 短編小説

 ――――俺は、ロックスターを目指す男、グレン。
 ロックスターを目指すには、ロックな生き方をしなければいけない。
 俺は、家を出た。無一文で飛び出した。
「衣食住なんて、そんな非ロックな生き方、ロックンロールじゃねえぜ」
そう言って、親に別れを告げた。
しかし、現実は考えているほど甘くはなかった。

家を出て、一週間。
俺は、ノラネコのような生活をしていた。
神社の軒下では、ノラネコにすら小馬鹿にされた。大けがを負ってしまった。まさか、奴らの爪があそこまで凶悪なものだと知らなかった。
たぶんボスだろう、大きな猫に重い猫パンチを食らった。
「待ってよ、オーバーキルだよぉ」
 そう叫んだ記憶がある。

「グレンさん」
 俺は、猫との死闘の後、総合病院を訪れていた。
初診と言うことで、三時間も待たされてしまった。
「二番で先生がお待ちです」
「はい」
 ナースのお姉さんに案内された通りに、眼科の角を曲がり、耳鼻科を通り過ぎた。
そこにあった「2」と書かれた引き戸を開ける。
「来たようだね、グレン君」
「あんたは誰だ」
「私は医者だ」
 医者は白衣を着た、俺よりも若いかもしれない女性だった。青ブチのメガネの奥には、妖しい煌めきが照っている。
「そうか、医者か。医者がなんのようだ!」
「君は、ここに何をしに来たんだ!」
 無論、治療だ。
そんなこともわからないのか、医者のくせに。
「まぁ、閑話休題だ。率直に言おう。君は、あと三時間の命だ」
「なんだと」
「ノラネコの爪には細菌がたくさんいるんだ。残念だが、もう君を治す手段はない」
「なんだと」
「そこでだ、一つ提案がある。君は、ロックな生き方をしたいらしいな。その命、地球のために使ってみないか? 今、世界は破滅の危機に瀕している。宇宙から小惑星イトカワが、地球を目がけて飛んできているのだ」
「なぜ、イトカワが」
「はやぶさばかりが注目されて嫉妬したらしいのだ。自分も擬人化されたかった、萌えっ子フィギュア化されたかった、と」
 イトカワのやつ、地球に突っ込むなんてバカなことをォ。
「わかりました。俺の命、ロックに散らせてみせます」
「やってくれるか。では、このNIZT爆弾をイトカワに設置してきてくれ。亜光速ロケットはこちらで用意する」

 3、2,1――――。
地球を離れたロケットは、俺を乗せたまま、亜光速に突入した。
周りが、極度に圧縮されたように見える。
「グレン君。聞こえるかい?」
「はい」
「よし。とりあえずは打ち上げ成功だ。こちらの指示通りに行動してくれ」
「わかりました。ドクター」
「むっ、そろそろ到着するな」
 ロケットが進路を変えたことがわかる。
おそらく、小惑星の周りを回っているのだ。
ドンッという衝撃と共に、ロケットのエンジンが止まった。
「ドクター、イトカワに着地しました」
「では、爆弾を設置してくれ」
「ラジャー」
俺は、ロケットから出て、黒い箱『NIZT爆弾』を設置する。
「ドクター、爆発させますか?」
「まだだ、まだ早い」
 爆発を待つ必要がどこにあるのだろう。俺は、そう思った。
だが、きっと、医者は考えなくてはいけない問題があるのだろう。倫理とかな。
「――――ぐ――グレン――さん」
 声が聞こえた。小さな少女のような、可憐な声だ。
 誰かが、俺を呼んでいる。
「誰だ! ………………まさか、イトカワ、お前なのか」
「――グレンさん、私が色々と迷惑をかけてしまったようで――すみませんです」
「すみませんって……、お前は、地球に一矢報いるために、衝突しようとしたんじゃないのか?」
「違います。天体の運行は、私の意思ではどうにもなりません。きっと誰かが操作したのでしょう」
「……誰か?」
「はい。ですから、わたしはここで、自爆しようと思います」
「だ、ダメだ! 俺は、お前が地球に衝突しようとしていると聞いてきたのだ。地球のみんなを守るために。しかし、お前が原因じゃないのだとしたら、俺はお前を救いたい」
「いいんです。わたしが、自爆すれば、地球の皆さんは救われるんです」
「いや、何かあるはずだ。……お前を救うための方法が」
「もう時間がありません。早く、わたしから脱出して下さい」
 俺は首を振った。
「ダメだ!」
 俺は、NIZT爆弾を地表から外した。宇宙空間に向かって投げる。
NIZT爆弾は、宇宙の彼方に消えた。
「俺が、お前の軌道をずらす!」
「ダメです。危険です」
「もとより、俺はもう長くないんだ。お前を助けることが出来れば、それがなによりロックなんだよ」
 俺は、ロケットに乗り込む。エンジンを再点火させる。
「行くぜえええええええええええええええええええ」
 ロケットの先端をイトカワにぶつけた。ロケットの推進力で、イトカワの軌道をずらすのだ。
「グレン君。何をしているんだ!」
「ドクター、俺、自分なりのロックを見つけました。守りたいと思ったやつを、命がけで守ることです」
 通信機を握りつぶす。
「ロックだぜええええええええええええええええええええ」
 視界が霞む。
もうちょっとなんだ、頼む、俺のロック魂。最後に力を見せてくれ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……お……ぉ……」

 ――イトカワ、お前に会えてよかったぜ。

「グレンさん、やりました! 軌道がずれました。グレンさん……? グレンさ――――ん」

 地球――――総合病院。
「作戦は失敗です。ですが、イトカワは、地球にぶつかる軌道をずれました」
 大きな猫が、医者に向かって結果を報告した。
 椅子に深く座って、背を持たれていた医者は、深くため息をついた。
「いい作戦だと思ったんだけどなー。NIZT作戦。つまり、日本以外全部沈没作戦」
「グレンという若者に、猛毒を仕込むまでは成功だったんですけどね」
「イトカワを、地球にぶつかる軌道まで誘導するのも成功したのになー」
「あとは、イトカワを爆発させて、その隕石によって、日本以外の国が全て沈没すればよかったんですけど」
「人生うまくいかないなー」
「今度は、ロックとか、バカみたいなこと言い出さない奴を連れてきましょうよ」
「しかし、バカじゃないと、この作戦バレちゃうしなー」
「そうですねぇ」
「それより、総理大臣になんて言おう。人選ミスでしたって言うかー」
「ロックが悪いと言うことにしましょう」
「そうだな。まあ、今夜は、星空観察でもするか」
 目頭を揉みほぐしながら、医者は、バルコニーに出る。天体観測が好きな医者専用の受診室には、豪華なバルコニーがあったのだ。
「星って綺麗だな。あ、流れ星。綺麗だなー」
 それは、どんどん近づいてくる。
「ほ、星? いや、あ、あれは、NIZT爆弾!」
グレンの放ったロックの魂は、日本を壊滅させるほど、大きな星(スター)だった。


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 夏っていいですね。
 白いワンピースとか、麦藁帽子とか。
 ……危うく付いていきそうになってしまった。

 しかし、小さくてかわいいものは、触れるよりも、遠くから目を細めて見ましょう。それがロリっ娘への接し方の所作です。
 そして、妄想。少女を悪漢から救い出して、そこから始まるラプソディー。名前を告げずに去るところまで想像できれば、中級者。
 それが前世からの許嫁であったというところまで想像できれば、上級者です。
 気をつけて欲しいのは、彼女たちは、絶対に触れられない存在であることを自覚することです。妄想するのみです。
 いいですか、ロリっ娘は、NOタッチ! NOリターン! ですよ。

 ――僕らが憎むべきは、児童ポルノ禁止法ではなく、少女達を脅かす悪い大人達なのです。

 以上です。