先日ディスカバリーチャンネルで,「出エジプト記」を科学的に解明する番組が放送されていた.これはすでにケンブリッジ大の自称アマチュアColin J. Humphreys著The Miracles of Exodus: A Scientist's Discovery of the Extraordinary Natural Causes of the Biblical Storiesとして'03年に出版されている仮説を中心に制作されている.番組の内容は基本的に推論であるが,かなりの部分はなるほどと思わせるものがあった.
冒頭の燃える柴の話は見落としたのだが,神の与えた10の災厄は,9月頃にナイル川に溶出した赤土が増え有害な赤い藻が異常発生したため赤染して魚が死に,カエルが陸に上がって巷に溢れ,死んだカエルについたブヨが増え,サシバエが増え,それによるウィルス感染で家畜が死に,翌年に入る頃ヒトには皮膚炎が起こり,さらに加えて雹が降り,イナゴの大発生,砂嵐のため太陽が隠れ,貯蔵していた穀物の表面に菌が繁殖してマイコトキシンが生じ,長男から食事をするという習慣のため,長子が死んでいったということらしい.そういわれると,超自然現象とも言えないようだ.
紅海渡渉も古くから考えられていたスエズ湾側ではないとのこと.当時のエジプトの都はRamesesラメセス(いまのQantir)だったらしく,当時シナイ半島もエジプトの支配下であったため,エジプト王の領地から逃れるのは最短距離でシナイ半島の北部を通ってSccoth,Ethamを通り,yam suph(葦の海:Aqabaアカバ湾)で紅海を渡ったと考えられるとのことである.このとき強風によってwater set-down現象で海が割れた(水位が下がって底の隆起した部分が現れた)ということらしいが,映像の説得力はなかった.風速30mほどの横殴りの強風の中を荷物を持って歩くことが出来たかどうかの説明が欲しい.
十戒を授かった神の山はシナイ山ではなく,昼は煙が立ち夜は赤く光り民を導いたとあるので火山と考えられ,申命記に都から10日の距離と記述されていることから600km圏のアラビア半島の西部にあるMidianの火山しか考えられないとのことだった.
同書にはモアブの岩など他の奇跡の記述もあるので,ぜひ一読してみたい.