この展覧会は昨年10月から今年1月までスペインのGuggenheim Museum Bilbaoで開催されていた.シュテーデルから130点が貸し出されていたというからさすがである.リンク先ではシュテーデルのヨッヘン・ザンダー副館長兼部門長が見どころを英語で語ってくれていた.
これが,日本では微妙に変更されて「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」として今月から渋谷で開催されている.タイトルではシュテーデル美術館所蔵は付け足しの状態,日本でのフェルメール人気にあやかるとしても企画者側からこのタイトルはあまりに露骨だろう.本来は「シュテーデルの黄金期オランダ・フランドル絵画展」であるべきだ,などとフェルメール・フリークではないオランダ絵画好きには思えてしまう.展示点数も95点とかなり減ってはいるが,国内でのこのような展覧会規模として,油彩画だけでこの点数はむしろ多いくらいだ.スペインでの展示リストが無いので詳細は不明ながら,スペイン展でマスターワークとして紹介されている中では,一応レンブラント派とされるヤン・フィクトゥルスの旧約聖書主題の作品が残念ながら来日していない.
シュテーデルは04年・05年とこれまで二回訪問しており,ベルリンほどではないとしてもエイク,ウェイデン,クラーナハなどの初期ネーデルラント~北方ルネサンス絵画に良品が多く,続くエルスハイマーのフランクフルト祭壇画,レンブラントの「目を潰されるサムソン」や今回のフェルメールに代表される17世紀オランダ・フランドル絵画がとくに充実している美術館である.「サムソン」は02年の「大レンブラント展」の際に京都で公開されたこともあるが,シュテーデルも改装中とはいえ一部開館しているため,目玉の全てを貸し出すわけには行かない次第であろう.できれば,やはりレンブラント派のデ・ヘルデルの「ゼウクシスに扮した自画像」の大作も,また見ておきたいものではあるが.
さて,楽しみにしていたのだがなかなか出向けないので,図録をBunkamuraオンライン市場で購入して宅配してもらった.図録で予習をすると実物を見るときの楽しみも増える.これによれば,シュテーデルもこの巡回展にはかなり力を入れていることが分かる.たとえば,同館の17世紀ネーデルラント絵画のハイライトのページには23点が上がっているがこのうち19点が来日しているのだから.あるいは,キーホールディングの一角と考えられるヤーコプ・ファン・ライスダールやホイエンの風景画は出品点数としては異例ともいえる各5点(出来ることなら巨匠の画業を辿れるように年代別の展示があればもっと素晴らしいのだが).また,07年に研究成果がまとめられたルーベンスの原画に基づく共同制作の「竪琴を弾くダヴィデ王」や09年にユトレヒト派の企画展で披露された新収蔵品のバビューレン「歌う若い男」なども展示されている.展示点数が多いのでいろいろなジャンルの作品があるが,小画面で家具に嵌め込まれていたキャビネット画も多そうだ.これについては輸送しやすいというメリットもあろうし,展示スペースやコンディションなどのチェック作業の手間も削減できる.
図録でひとつ気になったのだが,画家の和名表記が最近の流れからはやや離れているように感じた.編纂者の先生方にはできるだけ標準化を期待したい.
レンブラント派の個々の作品などについては,作品のコンディションなど実物を見てからまた機会があれば書いて行きたい.
これが,日本では微妙に変更されて「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」として今月から渋谷で開催されている.タイトルではシュテーデル美術館所蔵は付け足しの状態,日本でのフェルメール人気にあやかるとしても企画者側からこのタイトルはあまりに露骨だろう.本来は「シュテーデルの黄金期オランダ・フランドル絵画展」であるべきだ,などとフェルメール・フリークではないオランダ絵画好きには思えてしまう.展示点数も95点とかなり減ってはいるが,国内でのこのような展覧会規模として,油彩画だけでこの点数はむしろ多いくらいだ.スペインでの展示リストが無いので詳細は不明ながら,スペイン展でマスターワークとして紹介されている中では,一応レンブラント派とされるヤン・フィクトゥルスの旧約聖書主題の作品が残念ながら来日していない.
シュテーデルは04年・05年とこれまで二回訪問しており,ベルリンほどではないとしてもエイク,ウェイデン,クラーナハなどの初期ネーデルラント~北方ルネサンス絵画に良品が多く,続くエルスハイマーのフランクフルト祭壇画,レンブラントの「目を潰されるサムソン」や今回のフェルメールに代表される17世紀オランダ・フランドル絵画がとくに充実している美術館である.「サムソン」は02年の「大レンブラント展」の際に京都で公開されたこともあるが,シュテーデルも改装中とはいえ一部開館しているため,目玉の全てを貸し出すわけには行かない次第であろう.できれば,やはりレンブラント派のデ・ヘルデルの「ゼウクシスに扮した自画像」の大作も,また見ておきたいものではあるが.
さて,楽しみにしていたのだがなかなか出向けないので,図録をBunkamuraオンライン市場で購入して宅配してもらった.図録で予習をすると実物を見るときの楽しみも増える.これによれば,シュテーデルもこの巡回展にはかなり力を入れていることが分かる.たとえば,同館の17世紀ネーデルラント絵画のハイライトのページには23点が上がっているがこのうち19点が来日しているのだから.あるいは,キーホールディングの一角と考えられるヤーコプ・ファン・ライスダールやホイエンの風景画は出品点数としては異例ともいえる各5点(出来ることなら巨匠の画業を辿れるように年代別の展示があればもっと素晴らしいのだが).また,07年に研究成果がまとめられたルーベンスの原画に基づく共同制作の「竪琴を弾くダヴィデ王」や09年にユトレヒト派の企画展で披露された新収蔵品のバビューレン「歌う若い男」なども展示されている.展示点数が多いのでいろいろなジャンルの作品があるが,小画面で家具に嵌め込まれていたキャビネット画も多そうだ.これについては輸送しやすいというメリットもあろうし,展示スペースやコンディションなどのチェック作業の手間も削減できる.
図録でひとつ気になったのだが,画家の和名表記が最近の流れからはやや離れているように感じた.編纂者の先生方にはできるだけ標準化を期待したい.
レンブラント派の個々の作品などについては,作品のコンディションなど実物を見てからまた機会があれば書いて行きたい.
ただ,いろいろな意味で心の疲れを感じました.一線で活動されている方々には本当に頭の下がる重いですし,罹災された方々のために深く祈りたい心境です.