泰西古典絵画紀行

オランダ絵画・古地図・天文学史の記事,旅行記等を紹介します.
無断で記事を転載される方がありますが,必ずご一報下さい.

伊予大洲の志ぐれ

2016-03-26 21:45:46 | 行ってきました(美術展以外)

 営業も兼ねて四国松山に行ったのですが,1泊して翌朝「伊予灘ものがたり」というJR四国の企画列車に乗って伊予の小京都・大洲へ行ってみました.天候に恵まれ,列車からの景色は2時間飽きることがありませんでした.

 大洲では重文の櫓の残る復元された大洲城や,城主の残した遺構に明治期建築された臥龍山荘などを訪問しましたが,とくに山荘の断崖に立つ不老庵は槙の生木を捨て柱にして肱川の淵を見下ろし圧巻でした.ここの臥龍茶屋で戴いたぜんざいには丸餅が入っていて美味しかった.

 道ですれ違う中学生の皆さんが必ず「こんにちは」と挨拶してくれるのに感激しました.なかにはHelloと言われて,どこの外国人に間違われたのかと....

 土産には大洲名物のしぐれという和菓子を買って帰りました.ゆでた小豆と米粉を蒸したもので,もちもちした触感でほどほどに甘く,東京でも百貨店などで富永松栄堂のものが販売されています.今回はうっかりして同店のものは買い忘れたのですが,ほかの四社のものを食べ比べてみました.

(左上)二葉屋・・・・8切が竹皮で包まれていてそのためかえぐみ?があり好みが分かれる.甘さは控えめ.
(左下)ひらのや・・・小豆の香ばしさ,中では甘い.やや固めか.最小単位は3切れ分くらい.
(右上)丸星藤樹堂・・柔らかくもちもちで甘さ控えめ.大好物のおこう饅頭の味でした.最小単位は2切れ分くらい.
(右下)山栄堂・・・・最ももちもち,甘さは普通.個包装で食べやすく,梅や柚子味など多種類もあり,もち麦志ぐれがおすすめ.洋菓子もありましたが商品開発に余念がないようです.

 むかし中学生のころ夕刻にこの予讃線の上りに乗っていると,上灘あたりでしょうか,海に映る夕陽が感動的で,こころの原風景となりました.死ぬまでにまたぜひ見てみたいですね.


紙の博物館at飛鳥山・王子

2011-04-10 18:17:00 | 行ってきました(美術展以外)

 都知事選の投票のついでに足を伸ばして花見の名所・飛鳥山に行きました.新都知事には有事にぶれない対応ができて,平時に不適当発言の少ない方になっていただきたいと思います.

 旧渋澤邸についてはまたの機会として,王子製紙の流れを汲む紙の博物館は,今日は満開の桜に囲まれていました.


紙の博物館          飛鳥山には一本しかないという御黄衣という桜が館の近くにあり,この花は淡緑色からピンクへと色が変わってゆくとのこと.


写真左・入り口のある2Fと3Fの展示は小学生にも分かりやすい「様々な紙の出来るまで」を中心とした展示 
写真右・4Fは「和洋の紙の歴史」百万塔の陀羅尼の実物や金唐(革)紙の制作工程見本,紙で出来ているとは思えない婦人服など様々な紙製品の展示もあります.また,隣には企画展の展示室があります.


写真左・紙の歴史の中では,パネルの展示でパピルスの作り方を初めて知りました.茎の中身を押し伸ばし水を含ませた帯状のものを縦に並べた上に横に並べて重ね乾燥させて作るそうです.
写真右・中国で蔡倫が発明(改良)した紙は12世紀の半ばに西洋に伝わりました.展示物の紙をすく簾には針金のマークがありますが,ここが透かしになります.書籍は1728年のケンペルによる英文「日本史」と,上海で出版された19世紀の聖書など.



 興味深かったのは,江戸期以降の主要な和紙の産地から,伝統の和紙が集められていました.最近紹介したレンブラント展での銅版画における和紙の使用について,繊維を分析すれば,調べ方によっては原産地をかなり特定できるのではないかと期待してしまいました.

 4Fの休憩コーナーの窓からは,満開の桜がそれはもう素晴らしい眺めでした.日本人なら,この花からきっと元気をもらえるだろうと確信しました.早く桜前線が北上しますように.




神奈川県立近代美術館・葉山館

2010-10-31 15:53:34 | 行ってきました(美術展以外)

 最近不快なことが続き心身ともに疲れがたまっているのですが,気を取り直して,過ぎ去った季節を偲び月の初めに訪問した神奈川県立近代美術館・葉山館の写真でも.


同館はJR逗子駅・京急新逗子駅からバスで20分足らず,風光明媚な三浦半島の西側にあります.

海に面した館内レストラン「オランジュ・ブルー」は新鮮な海の幸が売り物 (食べ物で遊ぶと撥が当たりますよ)

シェフお勧めのブイヤベース           食事が終わると屋外のテラスでコーヒータイム

美術館のゆったりとした休憩室からは,中庭を通して,とんびの舞う小山が見えます

美術館から小道を抜けて浜辺に下ると....

犬を連れて散歩する人の向こうに,カモメに先導されてヨットが見えます.そういえば,マリーナの近くでしたね.

 のんびりした一日でした.美術館には美術図書室が併設されていて,久しぶりにバーリントンマガジンのバックナンバーなども読むことが出来ました.


旧古河庭園の薔薇

2010-10-12 22:01:41 | 行ってきました(美術展以外)
連休だと毎日毎日学芸員(wife)に連れ出されてしまいます.10月16日から「秋のバラフェスティバル」が開催されるというので,混む前にと思って昨日行ってみたのですが....


ご近所の方は自転車で集う       館からみた中庭(実際には中央付近に遠方のビルが見えるのですが消してみました)


まだこの程度しか咲いていませんでした.


ただ,中には三部咲きの品種も

 この調子だと盛りはまだまだかもしれません....



別件ですが,猛暑だったためか,うちのイチイに赤い実が沢山ついていました.雌雄異株なので,五本のうちの一本だけなのですが.

驚異の部屋 小石川植物園と東大博物館小石川分館

2010-10-11 21:50:37 | 行ってきました(美術展以外)

「レーゲンスブルクのディンプフェル家のWunderkammer」ヨーゼフ・アルノルト1668年
 ここには"芸術と骨董"として,絵画や彫刻に加えて,カップなどの金属工芸品,地球儀・天球儀,時計などの科学機器,自然界からはオウム貝やサンゴに頭蓋骨まで,さらに信仰の対象となる十字架,武具としてミニチュアの大砲,右下にはたぶん日本の鎧兜まで集められている.

 以前天球儀の紹介記事のコメントで,小林頼子先生の「フェルメール論」からの引用で,天球儀は『17世紀に紳士たる者がもたねばならぬとされていた「ウォンデルカーメル」(驚異の蒐集室)に収められるべきコレクターズ・アイテム』のひとつで『蒐集品を主題にした絵画には、必ずといっていいほど天球儀、地球儀が描かれているのである』(増補版209頁より)とご紹介しましたが,東京大学総合研究博物館小石川分館で,2006年3月から,ロングランの企画展(=常設展示でないとしたら,そろそろ?)「Wunderkammer驚異の部屋」が開催されていて,一度行ってみたいと思っていたところに,昨日,当館の学芸員(wife)から,「運動不足なのだから,お散歩!」とお尻をたたかれて,小一時間の行程を徒歩で,隣接する小石川植物園ともども訪問しました.

 じつはもうひとつ背中を押されたことがあります.地図と星図を調べていて,天文古玩という玉青さんのサイトに行き着き,ヴンダーカンマー関連の記事を拝読させていただいたこと.博物学者を思わせる氏の深い造詣があふれたサイトで,個人的には天文の懐古趣味も手伝って,虜になってしまいました.


植物園は入園するのにチケットを前のたばこやさんで買わなければなりません.右はヒマラヤスギの大木(若者よ,木に登ってはいけません)


ニュートンのりんごの木 生家に生えていた木から接ぎ木されて,1964年に英国物理学研究所から贈られたものだそうです

 途中,温室は日曜は閉室とのこと.案内が悪いと文句を言っているご老人がいらっしゃいましたが,東京大学大学院理学系研究科という研究機関の附属施設なので,しょうがありません.


菩提樹は幹の根元から若枝が親を取り囲むように生えていました. 池に下ると右手に博物館.いまは敷地は別になっています


博物館の建物は旧東京医学校本館です.ようやく青空が見え始めました.

 さてさて,博物館の紹介記事には「大航海時代の西欧諸国においては、『驚異の部屋』と呼ばれる珍品陳列室が王侯貴族や学者たちによって競ってつくられたことが知られています。」(初めて目にするものに対する新鮮な驚きの感覚は)「体系的な知の体得へ先立つものであるとともに、新たな知の獲得へと人々を駆り立てる潜在的な原動力ともなっているものです。(中略)東京大学草創期以来の各分野の先端的な知を支えてきた由緒ある学術標本をもとに、『驚異の部屋』が構築されることは、次世代の知を担うべき人々にとっても少なからぬ意義を持つことと思われます。」「国内有数の自然史標本コレクションへ加えて、お雇い外国人教師E.モースの直弟子らの動物標本コレクション、医科大学初代学長三宅秀の学術標本コレクション、工部省工学寮ゆかりの工学模型・機器のコレクション、そのほか本学の教育研究を担ってきた博士らの肖像のコレクション、本学の教育研究の現場を支えてきた標本・図画・模型・機器・什器のコレクションがあります。」とのことでした.


入り口 正面の奥に天体望遠鏡が見えます. 向こうはお池とお庭
 

右手が1階のメインルーム 中央の地球儀は以前二つあったらしいのですが,いまはひとつだけ.1937年ブリュッセル製でした.周囲に剥製と,ホルマリン漬け?の生物標本の並んだキャビネット


2階に上がって右手裏が動物の骨と亀や鰐の剥製のある部屋 奥の人体模型などの部屋は画像的に遠慮します


左手が貝類や鉱物標本の並ぶ部屋


その奥が理工学機器の展示 中には顕微鏡群の展示ケースも 階段室には人骨標本....

 博物館の入館料は無料です.ただし,月~水が休館(祝日は開館)なのでご注意ください.帰りは後楽園方面へでて,地下鉄で帰りました.途中,岡埜栄泉の和菓子屋さんがあったので,豆大福とうさぎまんじゅう(かぼちゃ餡入り)を買って....

 美味でしたが,胸焼けしてしまいました.  Wunderkammerは,確かに現ドレスデン城の美術工芸品展示室「緑の丸天井」に代表されるように,かつては王侯貴族のものでしたが,時代が下るにつれ,紳士のたしなみとなっていったはず.レンブラントも骨董美術品の蒐集に熱を入れ過ぎたといわれますが,レンブラントハイス美術館の確か二階にもその名残を見ることが出来ます.

 私も自然界の事物以外なら(結構石好きだったりもするので生物の遺物以外か)細々と蒐集してもいいかなと思ったりもしますが,先立つものと天命が足らないかもしれません.Kunstkammer「美術品展示室」とも呼ばれますが,そちらを目指しましょう.