泰西古典絵画紀行

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西洋古書の透かし

2011-02-25 22:42:48 | 古書
 透かしwatermarkとも,1790年ごろまではpapermarkとも呼ばれた西洋紙に特有の模様である.紙漉きの過程で金属線で出来たデザインマークに乗る部分が薄くなるので透けて見える.透かしのデザインは縦に張られた金属線の間隔やマークの位置とともに素描や版画の時代推定に利用される.
 13世紀末のイタリア(ボローニャでは1285年,ファブリアーノでは1293年)で使用されるようになり,14世紀のものは簡素なデザインで線は太かったが,1545年には製紙業者のフルネームが入るようになった.1750年ごろJ・バスカーヴィルがwove mouldを導入してからは縦の金属線のマークは無くなった.
 人気の出た紙のマークが他の業者に真似られることもあったり,過去に製造された紙を使用する画家もいたため,透かしによる年代推定は絶対的ではない.


左:グロティウスの星座図帳アラテア(第二版)Arataea sive Signa Coelestia(1621年)のタイトルページ
中:同 白紙ページの透かし
右:Holland,Schieland,1618年の透かしの写し No.1248 Edward Heawood,Watermarks, mainly of the 17th and 18th Centuries, 2003(reprint of the 1969 edition)より.

 この透かしは伝統的に鷲(Eagle)の紋と呼ばれバリエーションは多いが,レンブラントの少年時代にもこのような透かし入りの紙が用いられていた(レンブラントの銅版画に使用されていたかは別として).その後は双頭の鷲の紋が流行する.