
【12/19「ヒロシマ・ナガサキを語り受け継ぐつどい」参加報告】
<K.Mより>
「ヒロシマ・ナガサキを語り受け継ぐネットワーク」(事務局:ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会)による12月のつどいも3年目。NHKの記者さんが継続取材にいらしていたこと、被爆70年ということもあって今日も本格的な取材が入り、夜の首都圏ニュースでオンエアされたようだ。(私は有志でお疲れ様会をしていて帰りが遅くなって見られなかったが、午後6時台と8時45分の2回オンエアをされたのを見ていた方にお聞きした。)「NHK 首都圏NEWS WEB」にもアップされていた。
まず、企画概要はノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の「継承ブログ」の最終案内の記事を参照していただきたい。
次に「首都圏NEWS WEB」(12月19日 21時24分)の記事より引用してご紹介。
被爆体験を若い世代に語り継ぐ 「首都圏NEWS WEB」(12月19日 21時24分)
原爆投下から70年の節目の年に改めて、被爆体験を若い世代に語り継ごうという集会が、東京都内で開かれました。
集会は日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会などでつくる「ヒロシマ・ナガサキ語り受け継ぐネットワーク」が開いたもので、東京・千代田区の会場には、被爆者や高校生など100人余りが集まりました。
この中で、日本被団協の岩佐幹三代表委員が、「当時、広島の自宅にいて、爆音を聞いて間もなく大きな衝撃を受け、地面にたたきつけられました。起き上がると町並みは消え、がれきの山になっていました」とみずからの体験を語ったうえで「証言を聞く時は、想像力で追体験しようという心構えで受け止めてほしい」と訴えました。
また、被爆者の子どもの世代の被爆2世として、母親の体験をアメリカなどで語ってきた田崎豊子さんが、「母親の思いや記憶を引き継ぎ、子どもたちに、核兵器のない平和な世の中を約束するために多くの人の理解と協力を得ることが私の義務だ」と話しました。
集会では参加した高校生や大学生も、「被爆者の話を聞き、日本は核兵器廃絶のために率先して行動すべきだ」といった意見を述べました。

「若い世代に語り継ごう」という表現で、被爆者側からの伝承というところに重点を置いた報道だということがわかる。ネットワークの構成団体としても日本被団協のみ紹介された。岩佐さんの開会挨拶と、リレートークの中の東京の被爆二世の会からの発言、高校生や大学生からの発言の主旨もきちんと押さえられていた。
短時間ではあるし、今の日本のマスコミの報道の自主規制の強まりの中で丸められた内容ではあったものの、オンエアされただけでもよかったのかもしれない。
しかしながら、冒頭の写真のピースボート共同代表の川崎哲さんのお話は30分の報告だったが実によかった。今回の川崎さんのお話を聞いてピースボートの活動について積極的に理解しようとしていなかったのを反省した。Wikipedhiaの「ピースボート」の項にもある被爆者プロジェクト「証言の航海」でこれまで8回、160人の被爆者を世界各地で証言してもらってきたのだという。
近著の『核兵器を禁止する』(岩波ブックレット)をあらかじめ読んでおいたので、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の取り組みに共感した。生物兵器→化学兵器→対人地雷→クラスター爆弾と、大量殺戮兵器を規制する運動は人道主義の観点から特定の兵器を禁止していくという共通の姿勢があったという指摘と、だから今「核兵器の非人道性」が焦点になっているし、被爆者の証言を聞くことでそのことがよく理解できるのだということに確信をもつことができた。また、最近の若者の意識からは「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ」が「ノーモアウォー」のシンボルではなくなってしまうおそれがあるという指摘には驚いた。継承の取り組みの中ではこういうことも勉強していかなければならないと思った。
リレートーク①で活動報告が4本続き、会場発言の中で岩佐さんが手を挙げて継承のために必要な「想像力」について補足発言をされたところが以下の写真。予定原稿を踏まえた挨拶の時よりも熱弁だった。


後半の冒頭はミニコンサートで、ハンガリー生まれのコカリナを黒坂黒太郎さんが、ミニハープを矢口周美さんが演奏。広島の高校生から贈られた被爆榎から作られた1本造りのコカリナによる「空」という曲を聞いていたら涙が出てきた。報告が続く中で楽器の音色に身を任せることで企画としてもメリハリも出た。ぜひ各地の平和の取り組みで演奏をしていただきたいと思った。(HP「コカリナの世界へようこそ」はこちら)
もうひとつのメイン企画「被爆者の証言」コーナー。千葉県原爆被爆者の被爆体験聞き取り活動実行委員会が県内の30数人のご証言を記録し、抜粋の英語版は今年のNPT再検討会議に届け、日本語版の冊子は当初の1000部は完売して増刷し、県内の小中学校に寄贈もされたという事務局からの取り組み報告がリレートークで先にあった。このコーナーでは、その中でインタビューをした生協組合員さんと証言をされた被爆者の飯田さんが対話をする形。その対話の中に相手に聞きたい、その想いに応えて語りたいという気持ちが参加者にも伝わってくる。90歳というお年に見えないしっかりとしたお話ぶりと笑顔と証言をする中でつらい気持ちがこみ上げてくる様子に「二度と繰り返してほしくない」「戦争をしてはいけない」というメッセージが重みを増した。
昨年の証言者の片山さんの証言が再構成されて、デジタル・ストーリー・テリングというミニ映像作品に仕上がり、開会挨拶の前に紹介されたが、飯田さんの証言もそのようにしてほしいとアンケートに書いてきた。

リレートーク②は5人の方々。今年はピースボートに乗った方、被爆者運動史料整理作業に参加した学生、ネットワークでのNPT再検討会議に届けた『被爆者からのメッセージ』作成に参加した会員の発言など、充実した内容が続いた。会場発言でも各地の取り組み報告を3人から。
最期は女優の岡崎弥保さんによる『被爆者からのメッセージ』からの証言モティーフ3本の朗読によって締め括られた。この冊子の作成には私も参加しており、作業がけっこう大変だったがやりがいがあったなぁと振り返ることができた。
事前の参加集約は人数が伸びなかったので私もあらゆる機会をつくってお声かけをしてきた。ところが準備した資料が足りなくなるほどの参加があり、会場が熱気にあふれたのは嬉しかった。
継承の取り組みの核になるのは二世三世の方々がふさわしいという思いがあるが、今回は二世の方の報告があったし、三世の方が司会を頑張ってくれた。そういう方々を核にして共感を広げて継承者を増やしていくことが、平和な社会を築く大きな力になるだろうと考えている。
(追記)
川崎哲さんのお話で使われたパワーポイント資料の中で以下の指摘があった。これはあらゆる「継承者」の育成の取り組みの参考になる。
「継承者」に求められるもの Qualifications for Story tellers
■被害の全体像(統計など)
Overview(Statistics etc) of the damage
■歴史的文脈
Historical contexts
■今日の核問題とのつながり
Links to today's nuclear issues
■プレゼンテーション技術(言語、IT)
Presentation skills(Language、IT)
司会をされたMさんから写真をいただくことができました。会場全体の雰囲気がわかると思います。

(追記2)
川崎 哲さんの12月19日 20:59のTwitterによると、「NHK 広島 NEWS WEB」にもアップされていたとのことです。
被爆体験を若い世代に - NHK 広島 NEWS WEB(12月19日 20時34分)