・・・と、友人が
「ロミオとジュリエットって、フランスものなの?」
シェイクスピアはイギリスの戯曲家ですが、
舞台となっているヴェローナはイタリア。
有名な『カルメン』も、舞台はスペインですが、
作曲したビゼーはフランス人なのでフランスもの。
お話の内容ではなく、音楽のスタイルで決められているんですね。
明日歌う『ロミオとジュリエット』は、グノーの作曲です。
フランス音楽の特徴は、ハーモニー。
和声が発達した国なのです。
ドビュッシーの音楽を思い浮かべていただければ分かると思いますが、
ドミソだけではない、様々な和音が心地よく響いています。
前衛的な、訳の分からない和音ではなく、
なんとなく良い雰囲気を醸し出す、心地よいハーモニー。
1小節ごとに転調している?と思うほど変化していく和音。
それによって緊張感が増して行きます。
あるいは幸福感が増大していきます。
季節がちょっとずつ移り変わるように、
少しずつ、素敵に変化を続けているのです。
・・・歌うのは、ちょっと大変だったりしますが(笑)。
でも、ジュリエットが演じられるのがとても嬉しいです。
明日歌う曲は3曲です。
アリア『夢に生きたい』
キャピュレットの屋敷での仮面舞踏会。パリス公爵にエスコートされたジュリエットの姿が見えます。やがてパリスと結婚を、と両親は考えているのですが、ジュリエットには全くその気がありません。「お嫁になんか行きたくない、まだまだ娘時代を楽しんでいたいの!」と青春の喜びをワルツに乗せて歌います。そんなジュリエットの姿を見て、舞踏会に忍び込んでいたロミオは恋に落ちてしまうのです。ヴェローナの町を真っ二つに分けてしまうほどの宿敵、キャピュレットの娘ジュリエット、モンターギュの息子ロミオと知らずに・・・。
デュエット『バルコニーのシーン』
夜。運命の恋に落ちた二人が、人々の目を盗んでバルコニーで会っています。「もしも、私を妻に迎えて下さるおつもりなら、明日使いをやりますから、いつ・どこで式を挙げるつもりなのかをお言付けください。そうすれば全てを投げ出して、どこへなりともお供しましょう!」恋する若い二人にとっては、明日の朝までの僅かな時間でさえ待ち遠しいのです。「アデュー、さようなら。明日になれば、私達は結ばれて幸せになれるけど、明日までの時間を離れて過ごさなければならないのが耐えられない。いっそ、明日が来るまで、こうして“さようなら”を言い続けていたい。」乳母の声で、ジュリエットは別れを惜しみながらも部屋に戻ります。ロミオは一人、愛の余韻にひたっています。
アリア『神よ、私はおののく』
ロミオはヴェローナの町を出なければならなくなりました。親友メルキューシオを目の前で殺され、怒りに任せてジュリエットの従兄弟ティバルトを刺し殺してしまったのです。一方ジュリエットは、パリス公爵との結婚を父親から命じられます。誰にも言わずに、二人っきりで結婚式を挙げたとはいえ、今ではジュリエットはロミオの妻。パリス公爵と結婚することなどできるはずもありません。事情を知る神父ローランスは、一時的に仮死状態に陥る薬をジュリエットに与えます。人々にジュリエットは死んだと思い込ませ、その隙に愛するロミオと逃げろと言うのです。仮死状態から目覚めることなく死んでしまうかもしれない。墓場には死んだ従兄弟のティボルトの亡霊がいるかもしれない。冷たく暗い墓場の中で一人待つなんて・・・、ロミオが迎えに来る前に気が狂ってしまうかもしれない・・・そんな不安を払いのけようと、ジュリエットは薬の瓶を手に決意を歌います。「愛よ、私を勇気付けてちょうだい!」
しかし、目覚めたジュリエットが目にするのは、ジュリエットが死んだと勘違いして毒薬を飲んだロミオの姿・・・。