備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『謎の変奏曲』

2017-09-18 04:09:43 | 国内ストプレ
※ネタバレ注意。





ある屋敷の一室。

突然鳴り響く銃声二発。
そして、走り込んでくる若者。

撃ったのはこの屋敷の主で、
ノーベル賞作家のズノルコ。
狙われたのは地方新聞記者のラルセン。

所定の手続きを踏んで、取材に来た
ラルセンにズノルコは聞いてないと相手にしない。
それに対し、取材依頼の書類を見せ、取材を進めるラルセン。

インタビューの対象となる作品は、
最近出版されたズノルコの最新作『心に秘めた愛』

それはズノルコの作風には珍しい、
ある女性との往復書簡を綴った内容だった。

お決まりである『この女性にモデルはいるのか?』
という問いに対し、哲学的に返すズノルコ。

取材は平行線を辿り、一旦は帰るラルセン。
帰ろうとする処をまた狙撃され、
怒って戻ってくるラルセンに、
取材を許可したのは、ラルセンの
居住地にズノルコが興味を示したからだった。

この最新作には、風景描写が出てきて、
その風景はラルセンの居住地と似ていた。

その街に行ったことはないというズノルコだが、
その街に住むある女性から
ファンレターを貰った事があると話し出す。

そして、その女性に手紙を
渡して欲しいとラルセンに切り出す。


その女性、エレーヌは、
ある学会でズノルコと出会った。
その後、一緒に暮らしていたが、ある契約を結ぶ。
それは、これからは会わずに手紙の
やり取りのみの関係になることだった。

エレーヌを信仰的に扱う度に不機嫌になるラルセン。
遂には、エレーヌは自分の妻だ、と告白するラルセン。

二幕。
さっきまでと一転、突然、
余裕を持って対応するラルセン。

疑うズノルコに、
結婚の証拠を次々と出すラルセン。
12年前に結婚したとエレーヌについて話す。

ズノルコの知っているエレーヌと、
違うエレーヌについて語り出すラルセンに、
動揺を隠せないズノルコだが、
何故、エレーヌは会いに来ないのかと怒り出す。

そんなズノルコにラルセンは、
3年前にエレーヌが死んだ事を話す。

死後、往復書簡を見つけ、
ズノルコとの関係を知る。

ショックを受けるズノルコに、
墓参りに一緒に行こうと話すラルセン。

滅多に島を出たことがないズノルコに、
何故か、嬉しそうに荷造りを手伝うラルセン。

そんなラルセンに、
『君とエレーヌを共有し、
思い出を分かち合う事はない』と
言い放つズノルコ。

ラルセンはズノルコに、
エレーヌが死んだのは、
本当は10年前であったことを話す。

エレーヌの死後7年間は、
ラルセンが代わりに書いていたことを告白し、
何故、突然、この往復書簡を出版したのか、と問いつめる。

ズノルコはエレーヌに
会いたい事情が出来たが、
会うことは契約上出来ないので、
この往復書簡を出版すれば、
怒ってやってくると思ったから、と。

その理由はさっき渡した
手紙に書いてあり、それを読むラルセン。
そこには、癌に冒されていると書かれていたが、
いつ間のにか、その癌は消え、生き延びていた。

それぞれの秘密が明らかにされ、
それでも一緒にエレーヌを共有出来ない、
ズノルコはラルセンに帰るよう促す。

帰路につくラルセンだが、突然の発砲音。
慌てて戻ってくるラルセンに、
話したい事があると切り出すズノルコ。

ただし、『手紙で』、幕。


井上@ラルセン
基本、ミュージカルでもストプレでも、
台詞廻しが独特なので、歌わない場合、
脚本によっては避けるけど、今回は
相手役に惹かれ、二人芝居だけど観劇。

台詞を話す時に、どうしても、
えなりかずきを真似する清水ミチコの
話し方っぽさみたいなモノを感じ、
ちょっと、コント風味に見てしまう。
(一種のワザトらしさ、不自然さ)

これが、外人設定のシェイクスピア作品だったり
当て書きの井上ひさし脚本だと、そこまで
気にならないのだが、今回のような、
ひたすら会話が続くタイプだとちょっと、
その話し方に不自然さを感じてしまう。


という、ナカの人を意識してしまう前提を
置いておくとして、全てを知った上で、
ズノルコに近づくラルセンという腹黒さが薄かった。

もっと、計算された演技で来るかと思ったら、
結構、行き当たりばったりで対応していた印象。


個人的にラルセンの性格が一番出るのが、
ズノルコの為にパッキングをする作業だと思う。
ここで、エレーヌに成り済ましていた時の人格が、
出てきて、女性というか、ちょっとオカマっぽさが出る。

この時の沢田@ラルセンが、妙にオカマっぽい印象で、
エレーヌの代わりに手紙を書いていた、
という最終オチ以上の”謎”が有るのでは?
と思って観ていたら、それ以上のオチは無く、
ちょっと肩透かし感が有った事を思い出した。

今回の井上@ラルセンに、
台本以上のモノを感じず、
単純に会話の主導権がズノルコ
からラルセンに移る会話劇という印象。


橋爪@ズノルコ
杉浦@ズノルコは、ひたすら愛について語りつつ、
でも、それが自然に見えてしまう外人っぽさ、
絶対、日本人には見えない前提が有った。

しかし、このズノルコは、
下町のガンコ親爺みたいな雰囲気を、
ちょっと、関白宣言しちゃいそうな勢い。

そもそもノルウェー人設定なので、
フランス人っぽい、気障な一面は必要ないけど、
居るだけで紳士っぽい杉浦@ズノルコと対称的な印象。

いつ、ラルセンを許し、エレーヌとして受け入れのかと、
思ったら、その兆しは最期の銃声シーンまで無かった。



演出を変えての再演。

観ていくうちに、前回キャストの演技、
立ち振る舞いを思い出してきた。
そして、主導権が変わることや、
手紙の主がラルセンに変わったという
大オチを観ながら思い出してはきたが、
更に、もう一つ何か有った記憶が。

実際の脚本には無いけれど、
それが沢田@ラルセンから持った印象だったと分かる。

ともかく、理想の女性像を並べていくズノルコ。
それをラルセンが崩していくが、
その根拠が別な処に有るように感じた宮田演出と違い、
普通に女性の理想を、ロマンチックに語っていく今回の森演出。

これが、男女の違いなのか、
それとも、森演出による違いなのか、
分からないが、台本以上の印象がなかった。

それが、ツイで書いた、
前回との見終わった後の印象の違い
なのだけれど、他の人の印象の違いを知りたい。


初演が仲代@ズノルコに風間@ラルセン。

”陽”な演技をしていたであろう仲代氏と、
全てを知った上で演技する風間氏というのが、
結構、容易に想像出来るけど、観たかった組み合わせ。

特に、荷造りシーンで、若干の
オネエ口調になりそうな風間氏を
想像出来るけど、そこの演技がどっち寄りだったのか。



ラルセンが実はゲイ設定で本を出版した理由を知りたい、
の後に、更にドンデン返しが有るのでは?
と思って観ていたら、そこまでのオチは無い。

ただ、カテゴリ分けで、
”やおい”と書いていたフォロワー様が
居たので、その要素は有るのかも。
→と、思ったら、"精神的な''と、レスを頂きました。

以下、追記。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「エレーヌに成り切って、手紙を書いているうちに、
段々、好意を持ち、出版を機に突発」

と言うのが、脚本なんだろうけど、
最近、更にドンデン返しと言う作品ばかり、
観ているので、プラスαの役設定を邪推して、
観てしまう傾向にあるらしい。

旅行準備の下着の件とか、
その伏線かと、穿った見方を
してたら、単なるエレーヌ代筆の後遺症。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

特に、アフタートークで井上氏本人が、
『一幕、どこまで知っている前提で、
ズノルコに接しているか、毎日変わる。
全て知ったという前提の演技か、
あくまで一記者としての演技か(意訳)』
と言っていたので、それによって、
ニュアンスが変わるのかも。
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