備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『黒鉄さんの方位磁石』

2015-06-28 14:34:28 | 国内ストプレ
ざっくりなネタバレなアラスジ。

昭和64年(平成元年)8月14日、
一人の老人がさまよい歩いている。
”丘を越えて”が聞こえると、
時代は一気に昭和6年にさかのぼる。

そこでは、子供が遊んでおり、
その老人は『昭一』と呼ばれる。
そこに若い頃のショウイチや、
機関士の父をもつ中村3兄弟、
東京から引っ越してきた久が現れる。

その回想では、昭一は認識されない。

そして、唐突に、昭一の娘、そして妻が。
時代は昭和33年、オリンピックを控えていた。
妻に何かを言おうとすると、再び一人現代に戻る昭一。

そして、昭和64年の現代。
一人、徘徊する昭一の元に、
見回りをしていた駅員さんが現れる。

同時進行で、昭一を探す娘達。
妻はもう故人であることが分かる。

駅員さんが身元を確認しようとしたとき、
財布にコンパスが付いているのに気づく。

と、おもむろに駅員さんが
『内鐵さんに似ている』と呟く昭一。

時は昭和10年代に。
中村三兄弟の父親は機関士で、
その家に居候している内鐵こと内田。
その博識ぶりから、子ども達の憧れで、
特に久は内鐵を慕っていた。

数年後、支那事変が勃発し、
内鐵は満州に出征することに。
ここで、久がコンパスを内鐵に渡す。

戦況が悪化し、久は東京に戻る。
久は機関士になりたがっているが、
父親は軍人で、久もまた軍人に。
別れ際、とっておきの場所に連れて行く昭一。
そこは、黒鉄さんが良く見える鉄橋だった。

鉄道省に、勤める昭一と、
同じ年で中村家の三男坊の元。
最初は黒鉄さん磨きから始まり、
石炭くべの特訓後、機関士へと、道のりは長い。

そこでは、鬼のような教官・小林、
ちょっと内鐵に似ている・山下、
それに上官の石塚が居た。

ちょうど、戦況が悪化していき、1幕終了。


昭和64年のちょっと前。
(ドリフ放映時なので、もっと前か)
次女が三女に昭一が居なくなったと泣きつく。
実はトイレに居ただけ。ただ、物忘れが激しくなる昭一。
昭一は過去の記憶をノートに書き留める。
この時点で、昭一の妻は他界している。

そして、再び、第二次世界大戦前。
機関士になるための訓練を受けるショウイチと元。

ある日、上官の石塚から夕餉を誘われるショウイチ。
そこで、石塚のちょっと軍人離れした話を聞く。

再び、現代。
居なくなった昭一を探す駅員さん。
実はこの駅員さん、過去に痴呆老人を
ハネてしまった過去があるため、
昭一を気にかけていたのだった。

そして、また戦前。
山下も出征することに。

その後、機関士の試験があり、
ショウイチも久も合格。
一方、久は骨になって、帰還。

空襲の悪化から戦後の玉音放送まで昭一のモノローグ。
同時進行で、正一の回顧録を発見する娘。

戦中~戦後と止めることなく、黒鉄さんを走らせていたが、
戦後、明るい街をみて、人の、生活の足跡にきづく。

そして、内鐵に渡したコンパス
をもって、山内復員。正一の手に。

そこまで話して、駅員は誰かを呼びにいく。

回想の人物達と再会を果たす正一。
石炭のなかで、倒れるとそこに駅員さんが
連れてきた(多分)ショウイチが現れ、起こされて、暗転。
(最後、誰を連れてきたのか、確証なし)


吉田@昭一
老け役、ウェストポーチと、
なかなかの”こーでぃねーと”で、
回想中のシーンも含めて、
舞台にほぼ出ずっぱり。

いつもの怒鳴っている(叫んでいる)役だが、
ビミョウな痴呆状態が『リタルダンド』を彷彿。
2幕ラストの長台詞シーンは独壇場。


斉藤@ショウイチ
昭一の若い頃。
特に、吉田氏と似ているわけではないが、
背後で同じ表情をしていると、似てくる。


長谷川@元
この劇団で唯一、顔と名前が一致する劇団員。
中村3兄弟の末っ子で、ショウイチと同じ年。
最初は、久にそのポジションをとられていたが、
後半からショウイチの親友ポジションに。

特に通る声ではないのだが、
顔の骨格が歌舞伎の中村勘九郎に似ているのか、
声が似ており、台詞も聞き取りやすい発声。


星@久郎
久のオジイちゃん。
えっと、父親じゃダメなの?

見事に、冒頭の『久の友達になってくれ』
という台詞のみ。あとは、客席通路で少々。
と、舞台に登場はするが、台詞なし。

最後の昭一の回想シーン(現代服装)は、
普通にスーツにガラケーを持った紳士。

ポイントは、スマホでなくガラケー。
(昭和64年設定、準拠)


大塚@虎吉
マサカの吉田氏の父親。
回想のなかの父親なので問題は無いけど。

結構、客席通路から登場。
いつもに比べると、声が疲れているような。
思っていたよりも、通る声ではなかった。
ま、常に怒鳴っている役なので、大変なのか。

で、その父親が惚けてしまうため、
これまた聞いたことないような
猫なで声で、台詞を話す。
その声の使い分けが、声の人だ、と。

最後の現代服装は、
Tシャツ、ハーパンに帽子。
これも色々とツッコミたいが、
似合ってしまうチョイ悪オヤジ。
(別にヤクザ屋さん設定では無いと
思うが、なんかテキ屋雰囲気)


基本、顔が分かる劇団員と声が分かる劇団員が
いるAUNだが、あと一人顔の判別出来る劇団員が、
同じ戦中でもドイツの方(アドルフ)に持っていかれた。



AUNのオリジナル作品、初観劇。
シェイクスピア作品と違い、
劇団員全員に見せ場を作る、今作。

仮チラシの段階では、
そこまでの観劇意欲が無かったものの、
吉田氏贔屓のフォロワーさんの感想を
読み、吉田氏出ずっぱりという
情報に釣られて、フラっと観劇。

で、見に来たら、戦後70年と
いうことで、戦争が背景にある近代モノ。
戦争がテーマな舞台はちょっと苦手なのだが、
(話の終着点がどうも苦手)今回もやはり…。

井上ひさし作品みたいに、
メッセージ性がストレートだと、
例え最後が主人公の主張で終わっても、
気にならないのだが、小劇場系の
抽象的な最後だと、どうも、後味が悪くて。

今回は回想メインで話がすすみ、
最終的にどう終着点がくるのかと思ったら、
痴呆症の主人公登場→若い頃の回想に
→記憶を追っていき、最後は死ぬ(と思われる)。
(単に、脚本家の意図を読みとれてない
だけなのは重々、承知しています)

気になったのは、昭一の奥さんの存在。
多分、男の子を産めなかったという、
エピソードを重視した結果なのだろうが、
あれだけの回想を挟み込んでいるのに、
奥さんは記号的というか、存在感が薄い。
奥さんの死因が、痴呆症のきっかけに
なったのかと思ったら、そういう訳でも無さそうだし。

という訳で、若干、消化不良なオチで、
ラストで『実は~』的なヒネリもなく、
内鐵さんのコンパスが主人公に絡むこともなく、
(タイトルにコンパスとあるので、
象徴的な何かが有るのかと期待したので)
オーソドックスな展開だけど、
つい、ラストの昭一の長台詞に、
良い話だったで、まとめてしまう吉田氏の演技力。

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