備忘録

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『ピローマン』小川演出

2013-03-24 11:28:47 | 国内ストプレ
ストーリーのネタバレ注意




ある国の取調室に童話作家のカトゥリアンが拘束されている。そこに刑事のトゥポルスキとアリエルが取り調べにやってくる。実は作家の作品と同じ手口で子供が殺され、その容疑がかけられたのだった。しかし身の覚えのないカトゥリアンは、白を切るが、自宅から証拠が見つかる。そして、カトゥリアンの兄ミハエルに容疑が掛かる。
ミハエルはカトゥリアンの兄だが、ある年齢まで別々に暮らしていた。それは二人の親の仕業で、カトゥリアンを童話作家にする環境作りのために、ミハエルを虐待していたのだった。その事実を知り、親を殺害するカトゥリアン。
しかし、その虐待から精神に問題が出るミハエル。そんな状況下で二人は暮らしていたが、ミハエルの告白により、事件の犯人だった事を知り、ミハエルを殺してしまうカトゥリアン。

全ての事件を自分の犯行として、警察に出頭するカトゥリアン。最後の少女誘拐で、埋められたとされている現場に行くと、カトゥリアンの作品で唯一の救いのある作品(子供の死なない作品)"緑の豚"になぞらえて、監禁されていた。ミハエルが少女を殺害していなかった事に安堵するものの、カトゥリアンは銃殺刑に。
自分は死んでも構わないが、作品だけは残してくれるように、嘆願し、射殺されるカトゥリアン。その意志はアリエルが引き継ぎ、作品は50年の保管期間の保証付きで証拠物件として、押収され、幕。

作品タイトル絵本『ピローマン』あらすじと本作との繋がり。

枕男のピローマン。彼の仕事は、悲惨な人生を送っている人の子供時代に戻り、悲惨な人生を迎える前の子供時代に殺害する事。そして、ミカエルの前にも、ピローマンは現れるが、カトゥリアンが童話作家になるために、自分は犠牲になると宣言して、おしまい。


寺十@カトゥリアン
この台詞量なので、噛んだり、間違えたり。ただ、疑いを掛けられた事件の否定、犯人だった兄の殺害、そして、三人目の被害者が無事だった事の安心感という一連の流れをこれでもかっていうくらい熱演。
最後まで自分の作品を守りたいという作家としてのプライドを前面に。


高橋@カトゥリアンが事件と共に自作に対しても他人事(我関せず)となり、何処か飄々としていたのに比べて、その辺の感情の流れをストレートに表現。特に、自作への固執が淀みないキャラ設定。


斎藤@トゥポルスキ

基本的には物分かりの良い、理性的な刑事。それを貫き通していたのに、自分の書いた作品を否定された事により、段々と感情が表に。実は一番、仕事に忠実だった人間というオチ。


近藤@トゥポルスキがかなり裏表の刑事であったのに対して、コチラは比較的ストレートに表現。



田中@アリエル

飴と鞭のムチ。幼児に対する虐待に嫌悪感を持ち、その容疑の掛かった作家をいたぶる。その一方で、"緑の豚"から作家の作品に興味を持ち、作家の作品を保管する。
ビジュアルからなかなかの強面。ひたすら暴力担当なのに、ラストでの心変わりがアリアリと。

今回、一番、長塚版出演者の影がチラついた役。中山@アリエルの、小動物的弱さのあるキャラなのに、拷問による破壊衝動とのギャップとか、あの挙動不審な口調が脳内再生。
実は、悪人から善人(極論だけど)への振り幅がある美味しい役。


渡辺@ミハエル

この手の障害者役は遣りすぎても、イマイチだし、加減してもダメだし、と。
そう考えると、ちょっとズレたキャラ設定。その一方で、変な事に固執するという特徴は維持。

殺人という行為は人道的には許され無いが、あくまで、弟の書いたモノと同じ事をしただけ、という無邪気さの残る演技。

山崎@ミハエルはその辺の一線が秀逸だった印象が。あの何処を観ているのか分からない視線による演技が、普通か異常かの一線スレスレ。



Y字の舞台で客席が挟む座席配置。小劇場の使い方を把握している演出家なのか、客席と舞台の距離が丁度良い。特に、暴力シーンでの臨場感は半端ない。

長塚版ほどの派手さは無いのに、台詞を聞く事により、ジワジワとくるグロさ。演出家自らが翻訳することで、役者に言わせたい単語を選んで居るため、こう、ストレートにジワジワと。


八年前に長塚版で観ているが、細かい処を忘れ、自己の記録も見つからず。それでも、メイン4人のキャラ立ちが著しく、救いのあるラストなのに、後味の悪さが残った印象の長塚版。
ただ、今回はアリエルの作品を残すという行動がストレートに感動を誘うので、やはり演出の問題か?

ハワイで観た劇団TAGが、自分の行く1ヶ月前まで、上演してたらしい。今回の小屋も良かったけど、あの小屋で、あの演出家の『ピローマン』が観たかった。

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