備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『ジキル&ハイド』石丸版ジキハイ

2012-04-01 15:12:54 | 国内ミュージカル
"闇の中で"
何が衝撃的って、ジキル父が立ち上がる演出。基本、寝たきりなので、父親は死んでいるのか?と思うので。そして、最後にジキルが話し掛けるので、そこで始めて二人の関係がハッキリするのか。今更、気付いた演出効果。しかし、ジキル、『父上』でなく、『父さん』呼び。

"知りたい"
この曲は石丸氏の中低音にかなり合う。サビ後の転調時にスローテンポで切り替わっていく照明演出がスゴい綺麗。ただ、サビの部分、『I need to know』を『知り~たい』とする翻訳に関しては若干間延び。韓国版の"カンラーヤヘ"とかドイツ語の"イッヒ モス~"というメロディーと語呂の合う翻訳に慣れているからか?

"嘘の仮面"
冒頭からシルクハットとステッキ捌きが華麗な方に釘付け。いや~、ステッキ捌きがスゴすぎ。シカネーダとか思い出すし。そして、初めてここにダンヴァース卿のソロパートがあることを知る。で、その後すぐにソロパートもあるが、ここはジョンというよりは市民。

このシーン、上層階級と下層階級という二つの階級が舞台に登場する。韓国版では上層階級は上の階に一列に並び、下層階級はステージギリギリに並ぶという、階級社会の線引きをより鮮明にした演出が好みだったため、東宝版の混然とした演出はイマイチ。そして、今回のプロダクションは迫力あるアンサンブル曲がイマイチという事に気付かされた一曲。

"理事会"
ストライドは司会進行なのだが、この辺りから、やたらとジキルに突っかかる。そのネチネチ感が妙に目につく。

"真実を追えば"
CDのなるしー@ジョンもかなり冒険キャストだが、吉野@ジョンもそれに負けないくらいの…。ジキルとの音域の違いがあまり出ない。声質が全く異なるため、判別は出来るが。

"婚約パーティー"
貴重なストライド、ソロパート。何故かハイライト版なのに、収録されている韓国版で、聞き馴染んでいたが、ここのストライド低音はやはり良い。

"ありのまま"
笹本@エマへの期待値が高すぎたため、石丸@ジキルに負けるエマの声量にちょっとビックリ。裏声そのものに問題は無いのだが。

"別れ"
ダンヴァースとエマのデュエットになると、ちょっと残念な事に。エマが加減しているのか?

"連れてきて"
セリフでの"合いの手"から始まり、ジョンのはしゃぎっぷりがピークに。踊りもかなり参加。ジョンって、ここまで歌い踊る役だったのか。
ジキルが帰った後、スパイダーが上からずっとルーシー見つめているのだが、雇用者の関係以上のモノがあるのか?あの二人。

"時が来た"
研究室の電気設備が結構、充実。レバー一つで電気が灯る。歌う前に謎の風車のスイッチを入れる。
器具セットがバックから登場するのだが、その際、跳ね橋が上がるセットがなんかツボ。
語尾をのばさず、結構、ぶちぎる歌い方。

"変身~生きている"
ショッパイが不発。というか、あそこはコミカルシーンではないのか、実は。この時の踊る指揮者の振り方がスゴかった。ルーシーやジキルソロよりもハイド曲の指揮が一番ノッテいる。

"仕事をするだけ"
この歌に入る前に、エマがプールに渡してくれと、赤頭巾ちゃんのようなコートから花を渡すのだが、その際、花がコートに引っかかり、プールが執事らしく『失礼しました』と一言。
何、この役に入ったアドリブと衝撃。ちょっと、執事の行動にツボった。

ジキル、エマのハモリ、ダンヴァース卿の微妙さ(でも、あの微妙さは結構好き)、そしてジョンが高音、な気がした。
低音を効かす曲なイメージだったのだが、意外と高音が綺麗な曲だったのね。

"あんな人が"
治療後、ルーシーにキスをするジキル。しかし、その時の"ハイドの左手"演技が細かい石丸@ジキル。

演歌調のコブシが入っていないこの曲を日本語で聞けたのが何よりも収穫。しかし、歌謡曲に聞こえるのはワイルドホーンのためか。

"生きている・リプライズ"
"あんな人が"を歌っている最中に船着場のようなセットになり、大司教殺害のセッティング。マジシャンの如く、荷物を操り、荷物を落とし、間接的に司教の動きを止めるハイド。どうやら、韓国版のウィーサージャ×3+頭部を床に強打シーンは取り入れられなかった模様。その後、導火線のように火がついて、焼き殺す。ここも、韓国版の直接、体に灯油を撒き散らし、焼き殺すシーンが衝撃だっただけに、ただ熱さを感じるのみ。こちらのハイド上げはあり。

"事件、事件"
相変わらず、市民と一緒に歌い踊る弁護士に釘付け。その一方で傘群舞のアンサンブルシーンは好み。素朴な疑問としては雨なのだろうか、ロンドン。
CDを聞いていた時から気になったビーコンズフィールド婦人からの贈り物。あれは浮浪者に上げていたのね。
サベージ伯爵の殺害が、新聞紙から手が出てきて絞殺。こちらはCDと違い、手を下した模様。しかし、後ろに捌けていくが、加害者が見えないため、ハイド・マジック発動。

"あれは夢"
エマのソロナンバー。前任者、CD役者に比べられば、断然良いのだが(ファンの贔屓目)、劇中ソロとしてはイマイチ。何故だろう?

"その目に"
お互いウタウマなため、負けないデュエットに。ただ、地声で歌っている分ルーシー有利。

"罪な遊戯"
悪声でも綺麗にメロディーに乗せる石丸@ハイド。鹿賀@ハイドがかなり唸り路線だっただけに余計。ルーシーは良いカンジにドスを効かす。
噂のポールでの恍惚ハイドの振り付けは無くなった模様、残念(笑)
そして、この時の指揮者がまた派手に振る。やはり、ハイド曲での思い入れが強いらしい。

"苦悩2"
上演の度に毎回思うのだが、1はどの曲なのだろうか?
そして、明らかに、そこでハイドが戻る必要性が無い為、理由付けが発生する某シーン。
やはり、注射をブサッに比べるとインパクトが弱い。また、髪を縛らないのが残念。あそこは『どこから髪を止めるゴムを出すのか?』というの私的注目シーンなのに。

"ルーシーの死"
ハイド、窓から登場。ストーカーなら窓から入るのが基本だが(類友、LNDのファントム、TDVのクロロック等)窓が開かないのに、シルエットが出てくると、どうやって侵入したのかが気になる。
一応、韓国版は暗転後に登場のため、分かるのだが、『ルーシー、後ろ、後ろ』が無いと。一番シュールな妄想は壁をよじ登るハイドという図なのだが(ルーシー、屋根裏で暮らしている設定)。

で、殺害方法はサクッと視殺。その前に、躊躇いの"ジキルの右手"が出てくるけど。血糊は前演出のシーツにベッタリの方が派手。

"対決"
私的ベスト3の対決ソング(他はレミゼ、M!のヴォルフ・コロ対決ソング、)。
鹿賀版はアシュラ伯爵で、右左で分けていたものの、今回は声色+照明で分ける。この後ろに途中でフェイドアウトするプールの亡霊(死んでないし、正確にはハイド父)登場。
実はハイド氏はジキル父の人格?的演出とか好意的解釈。
勿論、ここの指揮者も派手だった。もう、観る箇所多数なシーン。
"結婚式"
最後の踊る弁護士、注目シーン。ハイド登場し、突き飛ばされて気絶とか、面白すぎ。
で、銃殺するのだが、その時はどちらの人格なのか?結構、重要だと思う。実は、ジキルが撃ってもらいたくて、ハイドの振りをして襲いかかったのか、それともハイドとして飛びかかったのか(ジョンに撃たれたくてだと、それはそれで別妄想)。
その後、ジキルを抱きかかえるエマの呆然とする表情がまた切ない(ファンの贔屓目その2)。その後、すっとジョンを見つめる(睨む)エマ。


石丸。
想像通り美声ジキルに思ったよりも悪声ハイド。全体的に観ると普通。やはり爆音ジキルを昨年、某国で観ているので、演技派なジキハイを観たかった。実際、ジキルに関しては演技派なのだが、ハイドとなるとどうしても前任者がチラついて。ワイルドホーンなら『モンテクリスト』のエドモンドか『スカピン』のショーブランあたりを。或いはジャベで新境地か。

濱田。
ジキル邸に押しかけた時のぶりっこ演技にボニーが頭を過ぎったが、娼婦役そのものには違和感なし。元々、地声が生かせる役なのかと。

笹本。
エマは結構、ハマり役だと思うけど、歌い方に難があるのか思ったより、イマイチ。むしろ、RHS後の今ならルーシーの方が合いそう。

吉野。
前回の戸井@ジョンはそれほど、印象に残らなかったのに、今回のジョンはスゴかった。流石、脇役俳優(笑)。歌に関してはいつもの吉野氏だけど、"仕事をするだけ"でジョンが高音域というのが、かなり新鮮過ぎた。

畠中。
前回の舞台(ニューブレイン)では吉野氏ポジション(関係は友人以上)だったのに、今回は一転、悪役。それでも、目につく役者なのだが、今回は同じ舞台に踊る弁護士が居たため目立たず。
実は四角関係の一端を担うのだが、それは別の話。

花王。今回は地味過ぎた。歌もないし。でも、あのアドリブに持っていかれた。さり気なく、ダンヴァースでも良いのでは?

中嶋。
相変わらず耳に残る声。ダンヴァース卿としてのキャラ付けとしては結構好み。歌は単に一本調子なだけだし。何故に投げやりに歌う?とは思うけど。
今回、どの感想ブログを読んでも、やり玉に上げられるが、特にそんな言われる程では?正直、CDのダンヴァース卿も結構、シンドイし。前評判で期待値を下げていたのもあるし、脇で結構、観ているからか?
(そもそも、四季の日下氏は演技もあの唄も好きなタイプ・笑)

ワイルドホーン作品ではダントツに好きな作品だと再認識。基本、ワイルドホーンはソロ曲かアンサンブル曲どちらかが印象に残るというイメージだが、両方とも残るし。ただ、舞台上で"World has~"が聞けるのはいつの日になるのやら。

演出自体は前回の鹿賀版の記憶が断片的で、主に韓国版やDVDのBW版と比較。そのため、なんか色々とゴッチャになった。

それでも、一番の特徴は"時が来た"だと思う。鹿賀版に比べると、かなりさっぱり。英語ならBrad Littleの歌い方が一番好みなのだが、日本版は石丸氏になるかと、思いきや、やはり鹿賀版の歌い方の方が好み。いい加減、日本語で、今井氏に歌わせる機会を与えて欲しいのだが。(英語版はCDとコンサートで聞いているがイマイチ発音が…)

舞台の役者が観る指揮者のモニターが見える位置で観劇。
そのため、結構、派手な指揮をするため、曲によっては役者よりも目に付く。
さすが、踊る指揮者(笑)

今回、前楽を観劇したが、それまでに色々と偏った情報を仕入れていたため、若干、間違った見方で観劇。それにより、なんか新鮮な気持ちでジキハイを観てしまった気がする。

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4 コメント

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Unknown (yukitsuri)
2012-04-05 00:28:11
I Need to Know、韓国版も基本は「アラヤヘ」で意味「知りたい」ですね。題とか最初と最後。でも、チャジャヤヘとかアルキルウォンヘとか、いろいろ途中で代わってるので、目新しく聞こえます。Ich muss は普通のカナ表記だとムスだけど、むしろオ寄りの発音に聞こえるので、耳コピ偉い(笑)

エマ父については、あれが気にならないというのはかなり寛容ですよ! まあ、最初に比べ、多少改善した分とか、期待値がえぐれてたからとか、dachoさんはそもそも個性派歌い好み?とかもありそうですが。
エマはかなり加減してると思いますね。二重唱でも四重唱でも。

花王さんて歌える人ですか? それだったらダンヴァースと逆の方がずっと平和!だったと思います。
返信する
yukitsuri様 (dacho)
2012-04-05 00:54:59
『アラヤヘ』が『知りたい』にあたるのですか。

英語でいうI need to knowにあたる
歌詞が結構、色々な歌詞になっているので、
どれが『知りたい』になるか分からず。
でも、音足らずな感覚は無いのが不思議。

初めて日本語詞の歌を聞くと、
どうしても慣れないです。

英詞に慣れている方が、
『someone like youの最後の「loved me~」 x3が「いたら~」x3で』
残念という感想を読み、
『ほー、そういう感覚もあるのか』とは
思いましたが。


現プール役者は歌えはしないけど、
現ダンヴァース役者よりはマシかと。
東宝CD版『M!』のアルゴ役者です。

ただ、現ダンヴァース役者の声は
結構好きなタイプというか耳に残るタイプ
の声なので、そんなに言われる程では?、と。
(もっと、ジャイアン的歌唱法な想像をしていたので)

そもそも、前のジキハイ役者とかも
結構、好きなタイプですし(暴言)

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Unknown (yukitsuri)
2012-04-05 03:48:30
レスありがとうございます。
ジャイアン、ではないですね。自信なさげですから。
一本調子と音外しがあり得ないレベルだっただけです。特に最初の頃。
声質については、まあ好みの問題かと。

東宝CDのアルコ伯爵だったら、特に上手いと思った記憶はないですが、違和感あるほどではなかったです。

"I Need to Know" 私は「知りたい」だと need のニュアンスと少し違うのが残念でした。音には合ってて、そう来たかと思いましたが。
返信する
yukitsuri様 (dacho)
2012-04-05 12:38:39
直訳すると“(父親のために)知る必要がある“ですか?

そういえば、この作品、普段の東宝作品の翻訳家と
違いますよね。この曲もその方が訳したのかな?

“事件 事件“とかで東宝作品では
珍しく韻を踏む歌詞とかありますけど。
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