最後の瞽女、小林ハルさんの伝記映画です。
「瞽女」さんには昔から興味がありました。
目の不自由な女子が、親方に弟子入りして三味線と歌を修行し、
声のかかった地方へ巡業して廻ることを生業としました。
昔は目の病気で視力を失うことが現在より多かったと想像されます。
その人たちの職業としていくつかの道が用意されていました。
青森県のイタコさんもそのひとつです。
皆さん、イタコ=シャーマンというイメージをお持ちかもしれませんが、
そうではありません。
目の見えない女子が弟子入りして経文を覚え、
一人前になると独立する職業です。
実は、青森県(津軽)には“ゴミソ”と呼ばれるシャーマンが別にいます。
巷では「カミサマ」と呼ばれていました。
なぜこんなことを知っているかというと、
私は30年以上昔、青森県の弘前大学の学生で、
民俗研究部というサークルに所属していたのでした。
イタコさんの口寄せも間近で見たことがあります。
話を戻します。
瞽女さんは男性と性的関係を持ったり妊娠したりすると、
村八分にされて“離れ瞽女”と呼ばれるそうです。
昔、映画化された物を見たことがあり、
その中でも、この映画でも触れられています。
本作品の中でクローズアップされるのは、目の見えない娘を“鬼”と化して厳しくしつける母。
一人で何でもできなければ、自分が死んだ後にこの子は生きていけない、
という思いからの厳しさ。
それを子どものハルは理解できずじまいのまま、
母は肺病(おそらく結核)で亡くなりました。
そして臥薪嘗胆・波瀾万丈の人生を送り、
自らが親方になった際に、
弟子に同じことをしている自分に気づき、
母の愛を初めて知ったのでした。
小林ハルさんはなんと105歳まで生きて寿命を全うしました。
★ 5点満点で3.5点
旅をする際に歩く田舎道に見覚えがあります。
越後(新潟)のたんぼ道って、両側に木が植えてあるのですね。
私の母親の出身地が新潟なので、
幼い頃連れて行ってもらった風景を思い出しました。
瞽女さん達が列を組んで田舎道を歩く風景、
瞽女さん達も自然に溶け込んで一体化し、
古来からの日本の情景に見えてきます。
私は瞽女さんを知っていたので、
このストーリーは想定内で新鮮味はありませんでした。
実は小林ハルさんの本も、CDも持っています。
演出として、
来る日も来る日も、
夏の暑い中も、吹雪の冬も、
桜舞い散る春も、落ち葉舞い散る秋も、
ひたすら歩き続けて巡業する瞽女さん達の姿の描写があれば、
もっと日本人DNAに訴える映像ができたのではないかと思いました。
三味線を奏で、語り物などを歌いながら、各地を門付けして歩く、盲目の女旅芸人・瞽女(ごぜ)。国の無形文化財保持者でもある最後の瞽女、故・小林ハルさんの半生を描いた人間ドラマ。生後3カ月で失明したハルは2歳の時に父と死別し、盲目のために7歳で瞽女になる。ハルが瞽女になると、それまではやさしかった母のトメは、心を鬼にしてハルを厳しくしつける。それは、母親が子を思う愛情の深さだった。そんな母親のやさしさに気づかぬまま、ハルは8歳でフジ親方とともに初めての巡業の旅に出る。瞽女として過酷な人生を歩んだハルは、意地悪なフジ親方からは瞽女として生き抜く力を、サワ親方からは瞽女の心を授かり、一人前の瞽女として成長していく。国民的美少女コンテスト出身の吉本実憂が成年期のハル役で主演を務めた。監督は劇場版「名探偵コナン」シリーズのエンディング実写パートなどを手がけた瀧澤正治。
2019年製作/109分/G/日本
<スタッフ>
監督:瀧澤正治
脚本:加藤阿礼 椎名勲 瀧澤正治
<キャスト>
ハル(子ども):川北のん
ハル(成年):吉本実憂
母トメ:中島ひろ子
フジ親方:冨樫真
手引き:クニ木聖奈
親しょ:宮下順子
塩野町瞽女宿お婆様:草村礼子
サワ親方:小林綾子
占い師シン:小林幸子
佐々木医師:本田博太郎
父豊三:渡辺裕之
下田村萱森家萱森大輔:国広富之
伊藤眼科医師:嶋田久作
齋藤医師:田中健
米沢の瞽女宿片倉家主人:寺田農
爺様:綿引勝彦
婆様:左時枝
ハル(現在):渡辺美佐子