新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

総裁続投に向けた岸田文雄の冷酷なしたたかさ

2024年01月21日 11時54分57秒 | 岸田文雄

その昔、「結局南極放送局・・・」というテレビCMがあった。
 
単なる語呂合わせなのだろうが、なぜかむなしさを感じる記憶がある。
 
こんなことを思い出しながら、さんざん期待させた検察特捜部の安部派幹部(患部)の立件は見送られ、「大山鳴動して鼠一匹出ず」という言葉が散見された。
 
それにしても一般国民と比較するとあまりにもの政治家の過保護ぶりが際立った今回の裏金事件の顛末であった。
 
過去にも小渕優子氏、安倍晋三氏らが「不起訴」に…裏金捜査でまた分かった自民党政治家の「過保護」ぶり
 

昨年11月から政界を揺るがしてきた自民党各派閥の政治資金パーティー事件。しかし、松野博一前官房長官ら議員本人の立件は見送られ、各派閥の会計責任者らの立件止まりで、東京地検特捜部の捜査は事実上、終了するとみられる。大山鳴動して…と言いたくなる結果だが、改めて国会議員の刑事責任上の「過保護」ぶりが浮かんだとも言える。今すぐやるべき「政治とカネ」問題改革とは。(西田直晃、山田祐一郎)
◆キックバックを自白した「うっかりさん」もいた
「全く中途半端。国民の怒りが分かっていない」
特捜部の捜査終了についてこう憤るのは、自民5派閥の政治資金パーティーの収入明細を調べ、刑事告発した神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)。
「こちら特報部」は昨年11月、上脇氏が体調の悪い中、「地べたを這(は)いつくばるようにして」3カ月間かけて調査し、年末年始返上で告発状を書いたことなどを報じた。「どう考えても事務方だけで行えるわけがない。仮に安倍派だけに限っても、7人の幹部の携帯電話を押収し、事務方との通信記録を精査するべきだった。証拠がなかったわけではなく、捜査を尽くしていないだけだ」
今回、特捜部の捜査が始まって間もなく、安倍派の塩谷立座長が昨年11月末、パーティー券の販売ノルマ超過分のキックバックを「あったと思う」と記者団にうっかり”自白”。派閥の所属議員にかん口令が敷かれる中、政治資金収支報告書への不記載疑惑が浮上し、翌月には二階派、岸田派にも飛び火した。
◆一般国民だったら罰せられるあやまちに見えるが
年が明けると、安倍派から約4800万円のキックバックを受け、裏金にしていたとされる衆院議員池田佳隆容疑者(57)が政治資金規正法違反容疑で逮捕された。捜査の広がりに注目が集まったが、通常国会召集を1週間後に控え、捜査はあっけない幕引きを迎えた。
19日午後、JR新橋駅前で待ち合わせをしていた会社員村上彰啓さん(41)は「政治家本人までは伸びず、やはりトカゲのしっぽ切りになってしまった。大物になればなるほど、その傾向が強いように思える」と落胆し、「裏金づくりの温床の派閥政治を変えるには、政治家本人が自身の疑惑を語る場を設けてほしかった」と突き放した。
 キックバックされた金額の多寡により、捜査の行方が左右された感が否めない点に失望の声も。団体職員小沢康成さん(55)は「民間なら脱税。金額が10万円だったとしても、報告なしは許されない。この違いは何なのか」と語気を強めた。「捜査が終わっても国民が納得しない。キックバックを受けていた議員を記憶しておき、次の選挙で投票しないようにする」。駅近くの居酒屋に客引きをしていた女性(21)は「有罪にならなくたって、何百万円とか、何千万円とか想像すらできない大金。レモンサワーは299円ですけどね」と皮肉った。
◆「検察は本当に中立・公正なのか」
 組織的な裏金づくりの慣行が明るみに出たものの、一部の政治評論家や元国会議員からは「議員本人の立件はない」「政治にカネがかかるのは当然」といった開き直るような発言も聞こえてきた。
 冒頭の上脇氏は「誰かさんがたまたま犯した罪ではなく、みんなで一緒に赤信号を渡ろうとした事件。キックバックが少なかった議員がいても、全体で計算すると億単位だ。金額で線引きするのはおかしい」と強調し、こう続けた。
「一般市民は安い商品を万引しただけで、窃盗罪で起訴される。検察は本当に中立・公正なのか疑問が残る結果だ」
◆秘書は起訴、議員は不起訴
これまでも政治とカネを巡る事件で秘書や会計責任者が責任を負った一方で、政治家本人が自身の責任追及を免れた例は枚挙にいとまがない。
1988年に発覚したリクルート事件では、竹下登元首相の金庫番だった秘書が自殺。竹下氏は立件されなかった。2014年に判明した小渕優子元経済産業相の資金管理団体を巡る事件は、会計責任者の秘書らが在宅起訴されたが、小渕氏は不起訴に。安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用を補填(ほてん)した問題では、20年に公設第1秘書が略式起訴されたが、安倍氏は不起訴。今回も虚偽記入で立件されたのは、派閥の会計責任者で、幹部議員は共謀が認められなかった。
1980年代に自民党の国会議員秘書を務めた経験がある政治評論家の有馬晴海氏は「議員の指示でやったとしても会計責任者や秘書が『自分の一存』と捜査機関に説明すれば、それ以上は議員を追及できない。そのために秘書がいるというのがかつての常識だった」と明かす。時代とともに、議員の身代わりにという意識は薄まっているというが、番頭や金庫番など側近秘書や会計責任者ほど議員と一蓮托生(いちれんたくしょう)という思いの人は多いという。「議員と秘書の関係は密接。自分がしゃべると大変なことになる。秘書の代わりはいても議員の代わりはいない」
◆金額で立件の可否の線引きか…問われる「市民目線」
そんな関係なら、議員が意図しない報告書作成は考えにくいが、議員本人の共謀を立証できないのはなぜか。元特捜検事の郷原信郎弁護士は「長年続いてきた派閥の虚偽記入の最後の1年分について、あらためて共謀があったと認定するのは難しい」と説明する。
その上で「政治資金規正法が禁じる政治家個人への寄付行為として立件できなかったのか」と検察の捜査の進め方に疑問を呈する。個人への寄付の罰則は禁錮1年以下と罰金で時効は3年。虚偽記入の禁錮5年以下と罰金、時効5年よりも軽く、対象にできる裏金が限定される。「検察は裏金の額の大きさで虚偽記入を対象としたのだろう。その結果、国民の期待と現実にギャップが生じた」
今回、国会議員で立件されたのは、いずれも4000万円以上の還流を受けたケース。金額の多寡で線引きされた形だ。「金額によって立件を決める検察の『相場観』に法的な根拠は全くない」と阪口徳雄弁護士は批判する。「立件されていない議員についても個人への寄付違反で告発することが必要。不起訴であれば検察審査会に審査請求し、市民目線で立件の『相場観』を判断するべきだ」
◆派閥解消でさらに裏金の実態が見えにくくなる恐れも
同法では、政治家の責任が問われるのは会計責任者の「選任及び監督」に相当の注意を怠った場合と、かなり限定的だ。だがこれまで議員の監督責任強化を求める動きがなかったわけではない。公明党は民主党政権時代、選任と監督のいずれかを怠った場合に責任を問えるとする改正案を提出したが実現しなかった。立憲民主党は今回の事件を受け、虚偽記入の際に議員本人も処罰の対象とするよう法改正を目指す方針だ。
 郷原氏は「国民は今回、税を免れて自由に使える多額のカネに対して反発を抱いている。脱税の視点からの責任追及も必要だ」と強調する。岸田首相は、出身派閥の「宏池会」の解散を表明したが「問題の本質は派閥ではない。政治資金制度全体の改革が求められている」。
前出の上脇氏も「派閥がなくなると、今までより見えにくい形で裏金が流れる」と危ぶむ。その上で上脇氏個人の告発で支えられる現状から脱却する必要性を訴える。「行政監視機関のような公的な監視の仕組みが理想だ。中立性・公平性を担保できるのかという問題があるが将来的にはそのような第三者機関があってしかるべきだ」
◆デスクメモ
岸田首相が2022年に開いた自身の政治資金パーティー6回分の利益率は約9割に上っていたという。ぼったくりバーさながらだが、それでもカネを出す側は当然、見返りを期待するし、出させる側もそれに応じざるを得なくなる。パー券問題は、裏金だけが問題なのではないのだ。

 

 
裏金疑惑の「諸悪の根源」のごとく岸田文雄は率先して(?)宏池会の解散を宣言したのだが、それに関して、政治評論家の紀尾井啓孟と政治ジャーナリスト安積 明子の2人の政局分析を紹介しておく。

岸田首相、唐突な『派閥粉砕』は続投に向けた戦略、麻生・茂木派は切り捨てか

岸田文雄首相が2024年1月18日、岸田派(宏池会)の解散検討を表明した。これを受けて翌19日、二階派(志帥会)、安倍派(清和政策研究会)も相次いで派閥解散を発表した。
わずか数日前まで夢物語と思われていた「派閥の解消」が現実のものとなったのはなぜか。派閥をこよなく愛し、派閥のトップに居続けたはずの岸田首相が、なぜこれほど大胆な行動に出られたのか。
■麻生・茂木両派切り捨て
1月18日午後7時20分過ぎ、防災服姿の岸田首相が報道各社の取材に応じ、岸田派の解散検討を表明した。「政治の信頼回復に資するものであれば、そうしたことも考えなければならない」。さらに、半信半疑のメディアにダメ押しをするかのように、岸田首相は19日午前9時30分過ぎ、「政治の信頼回復のために『宏池会』を解散するということを申し上げた」と明言した。
首相発言に鋭く反応したのが二階俊博元幹事長である。二階氏は19日午後、自らが率いる二階派を解散する意向を表明した。同派の武田良太事務総長が一貫して派閥の必要性を訴えていたこともあり、突然の二階氏の表明は永田町をさらに震撼させた。同日夕、安倍派も正式に解散を決定した。6つの派閥のうち、最大派閥の安倍派(98人)、第4派閥の岸田派(46人)、第5派閥の二階派(38人)が消えることになる。 
国民世論は派閥を認めていない。だから、派閥を解散して国民世論の支持を取り戻す。岸田首相がそう考えて決断したのならば、「自民党をぶっ壊す」と叫んで長期政権を築いた小泉純一郎元首相に匹敵する。9月の総裁選での再選のために、派閥を捨てたといっていい。
■「道連れ派閥解散劇」で入れ替わった主流派と反主流派
総裁に向けた数の論理において、今回の「岸田首相主導の道連れ派閥解散劇」には、一定の合理性がある。結果的に、主流派と反主流派の入れ替えにつながっているのだ。
岸田首相は自らが率いてきた岸田派と、第2派閥の麻生派(56人)、第3派閥の茂木派(53人)で、いわゆる主流3派体制を構築してきた。これに対し、安倍、二階、森山の3派がいわゆる反主流派とみられてきた。数の上では主流3派が155人、反主流3派は144人だった。互角とはいえないまでも、おおむね拮抗している数だった。
 それが今回の「道連れ派閥解散劇」で構図が変わった。派閥解散に慎重な麻生・茂木両派の合計は109人。これに対し、「旧」安倍、「旧」岸田、「旧」二階の、いわゆる<刑事処分を受けた旧3派>を合計すると182人。79人の現無派閥を加えれば、党内の3分の2を上回る261人が無派閥議員になる。
 皮肉なのか、ジョークなのか、それぞれの本音はともかく、<刑事処分を受けた旧3派>と、麻生・茂木両派に分断されることになった。岸田首相は、いまだに派閥にこだわりを見せている麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と手を切る決断をしたともいえる。
■派閥に愛着なし、菅前首相の影も
2023年10月30日の衆院予算委員会で、岸田首相は奇妙な言い間違えをしている。日本維新の会の和田有一朗氏が質問に立ち、第3代宏池会会長の大平正芳元首相の話題を振った。その際、岸田首相は「おおはら…大平総理は」と言い間違えた。
 これまで宏池会への愛を繰り返し語ってきた岸田首相である。宏池会を代表するビッグネーム、「大平」を言い間違えるだろうか。岸田首相の派閥への愛着は、その程度なのかと思わざるを得ない場面だったが、不思議なことにこの言い間違えはほとんど知られていない。
1月16日、自民党本部9階で、全議員を対象にした政治刷新本部が開かれた。岸田首相出席の下、3時間以上にわたって議論が行われ、無派閥議員を中心に派閥解消、派閥解散を求める声が相次いだ。
 刷新本部をめぐっては、水面下でも動きがあった。ある若手の無派閥議員は、菅義偉前首相から事前に電話があり、刷新本部に出席するようにくぎを刺された。刷新本部の会合に、この若手は、急きょ予定を変更して上京している。菅前首相はこの会議がヤマ場になるとみて、事前に動員をかけていたのだ。  
さらに1月11日の刷新本部初会合前、菅前首相は二階派幹部に「派閥解消」を主張していくことを伝えている。「派閥解消」に向けて狼煙を上げることは、安倍派にも間接的に“通告”していたもようだ。
■岸田-菅ラインで総裁選を乗り切る算段か
岸田首相は17日以降、急速に派閥解散に舵を切っていく。菅前首相や79人もいる無派閥議員を引き入れて総裁選を乗り切る――。戦略をどこかの時点で転換したのだ。派閥の解散表明について、麻生・茂木両派に事前説明しなかった理由もこのあたりにある。
繰り返すが、岸田首相はもともと派閥に愛着がなかった。たとえ寝言でも「大平」の名前を言い間違えたりはしない。本音では「宏池会」なんてどうでもいいのだ。どうでもいいからマキャベリズム的判断が可能となる。
岸田首相は、菅前首相が先頭に立って旗を振ってきた「派閥解散」を率先して実行した。国民世論の派閥への嫌悪を岸田首相はわかっていた。これは極めて考えにくいのだが、「岸田-菅」ラインで総裁選を乗り切る可能性が突如として浮上してくる。
■夏までに衆院選
派閥の解散で内閣支持率が大きく持ち直せば、奇襲攻撃のような衆院解散が現実味を帯びてくる。3月末の予算成立後、ただちに岸田首相が衆院解散に打って出ることは十分可能だ。
気になる日程もある。バイデン大統領との日米首脳会談が、4月10日前後に行われる公算が大きくなってきたのだ。当初、3月中といわれていた米国訪問が先延ばしになった。相手側の事情によるものではあるが、訪米前の4月初旬に衆院を解散すれば、4月16日公示、4月28日投開票の日程が組める。衆院解散後の訪米となり、選挙対策としては有効だ。派閥解散が果たして支持率回復に直結するかどうかはもちろん不透明ではあるが。
現時点で4月28日には、衆院の島根1区の補欠選挙が予定されている。議員辞職の意向を固めている谷川弥一氏(安倍派)の長崎3区の補欠選挙も同日になる見込みだ。自民党は不戦敗になるとみられているが、衆院選になれば事情は変わってくる。
通常国会の会期末は6月23日。日曜日なので実質的には6月21日の閉会となる。東京都知事選が6月23日公示、7月7日投開票と決定しているので、衆院選と都知事選の「タブル選」という選択肢も取れる。その場合、6月上旬の衆院解散となるだろう。現在、大マスコミが本命視しているのが、6月解散説である。所得税の定額減税が6月からスタートするのも補強材料だ。
9月の総裁任期満了前の衆院選で自民党が勝利すれば、岸田首相の無投票での再選が見えてくる。党内基盤が弱い岸田首相は、総裁選に持ち込みたくないのが本音だろう。無派閥で知名度の高い石破茂元幹事長が立候補すれば、岸田首相の再選は難しくなる。
今年前半の衆院選の可能性が高まってきた。最短は4月28日投開票、この風向きならば夏までに衆院選が行われるだろう。岸田首相が大勝負に出ている。政局は大きく動いている。

 岸田総理、「万事休す」と見せかけて…岸田派解散で「逆襲」が始まりそうなワケ
  

■名門派閥の終わり
岸田文雄首相は1月19日、自身が会長を務めた宏池会の解散を宣言した。派閥事務所も廃止するため、故・池田勇人首相によって1957年に設立され、4人の首相を輩出した保守本流の名門派閥は、その歴史に幕を閉じることになる。
一昨年11月のしんぶん赤旗の報道をきっかけに、自民党派閥のパーティー券をめぐる一連の問題は、自民党の全ての派閥に広がった。最大派閥である清和会では、4000万円以上もの高額のキックバックを受けた3名の議員のうち、1月7日には池田佳隆衆院議員(自民党を除名)が逮捕され、19日には大野泰正参院議員が在宅起訴、谷川弥一衆院議員が略式起訴された。谷川氏に至っては、議員辞職を仄めかしている。
もっとも東京地検特捜部はさらに上層部を狙い、「5人衆」と呼ばれる清和会の幹部にも迫ろうとしたが、会計責任者の責任を規定する政治資金規正法では因果関係の立証は困難なために、やむなく断念したようだ。
なお6億円の裏金が発覚した清和会の会計責任者と2億円の裏金が発覚した志帥会の元会計責任者は在宅起訴、3000万円の裏金が発覚した宏池会の元会計責任者は略式起訴された。志帥会会長の二階俊博元幹事長の秘書も、3000万円の裏金問題で立件されている。
結果的には大山鳴動して鼠一匹という印象だが、岸田首相はなぜいま、宏池会の解散を決意したのか。それを解くキーワードは、岸田首相が繰り返して口にする「信頼回復」だろう。
■まさかの支持率回復
新年に入り、岸田内閣の支持率が上昇している。共同通信の調査によれば、前回比5ポイント増の27.3%となり、NHKの調査でも26%と、前回比3ポイント増えている。個別面接方式で行われるため、よりきめ細かな数字が出るとの定評がある時事通信の調査でも、内閣支持率は18.6%と、前回から1.5ポイント増加した。しかもいずれの調査でも、不支持率は減少している。
だがこれらをもって、「岸田内閣の支持率が下げ止まった」と即断するわけにはいかない。
理由はこれら調査の数字には、1月1日に発生した能登半島地震の影響が見られるからだ。一般的に危機の際には、政権の支持率は上昇しやすい傾向にあるようだ。たとえば2011年3月に発生した東日本大震災を境にして、NHKによる調査を見ると、当時の菅直人内閣の支持率は2月には21%だったが、4月には27%、5月には28%と上昇している(震災が発生した3月のデータはない)。
しかしすでに始まっていた「菅降ろし」は止めることができなかった。西岡武夫参院議長(当時)が5月に読売新聞に菅首相の退陣を求めて寄稿し、与党・民主党内からも菅政権への不信任の動きが活発化。7月の内閣支持率は16%まで下落し、菅首相は8月27日に退陣することを表明した。
政権の延命を望む岸田首相なら、これと同じ轍は踏みたくないと思うはずだ。だが政治刷新本部を結成してみたものの、前述の時事通信での世論調査では68.3%が「期待しない」と回答。自民党支持層でも58.6%が「否定的」という結果が出ている。
何をやってもダメならば、いっそ派閥を解消した方がいいと岸田首相は決意したのではないか。ちなみに昨年12月13日の総理会見で、筆者の「派閥を解消すべきでは」との質問に対し、岸田首相は「自民党に対して、政治に対して、様々な厳しい声があることは承知している。
そうした声に応えて、自民党の信頼回復に務めなければならない」と述べたが、「事実の確認、説明のプロセスが求められると思っている」と明確な回答を避けている。
■肉を斬らせて骨を断つ
それから1か月余りを経て、岸田首相が宏池会解散を決意したのは、9月の総裁選に向けて自らを引き下ろそうという勢力を牽制する意味もあったのではないか。
実際に党内では2024年度本予算が成立後、岸田内閣が総辞職して次期政権と交代すべしとの声が出ていた。「岸田総裁では、自民党は衆院選は戦えない」というのが彼らの主張だが、岸田首相が自ら辞任するはずがないし、そもそも自民党には総裁を辞任させる規定が存在しないのだ。
要するに岸田首相は総裁任期が満了する9月までその地位に居座ることができるが、問題はその後だ。もし権力を維持し続けたいのなら、自分の側近を後継者に据えるという策もある。森喜朗元首相はそのために、総裁選での地方票の比重を重くし、2001年4月の小泉純一郎首相のドラマティックな誕生に一役買ったのだ。
だが岸田首相にはそのような考えはなく、自ら続投することしか頭にないのではないか。昨年12月に宏池会を離脱すると宣言したが、岸田首相が事実上の宏池会のトップであることに変わりはない。そして派閥への批判が強い中で宏池会を解散すれば、他派閥も解体せざるをえなくなる。
人事とカネを握る派閥がなくなれば、党への権力集中がいっそう進む。自民党の総裁でもある総理大臣は、外部の声を聴くことなく自由に人事を行える。
「総理になったら、人事をやりたい」と述べた岸田首相は、ある意味で権力の真髄を熟知しているといえる。その権力のために先人たちが育て上げ、自らを育んだ宏池会ですら解消しようという岸田首相は、歴代最高にしたたかさと非情さを兼ね備えた総理大臣ではないだろうか。

 
かなり昔の話では「派閥」では若い国会議員の政策検討の場であり、将来の出世(閣僚)にもつながるといわれてきた。
 
しかし、「総理大臣にしがみつくことが最大の目標」と揶揄されていた岸田文雄にとってがは派閥などは眼中になかったのかもしれない。
 
安倍晋三の下ではひたすら従順ぶりを発揮しながらついに「禅譲」がかなわなかった岸田文雄。
 
その希薄な存在感から「昼間の幽霊」などというネットブロガーもいたのだが、この2年余りで「権力の真髄を熟知し」、「歴代最高にしたたかさと非情さを兼ね備えた総理大臣」という褒め殺しは岸田文雄に届くのだろうか、とオジサンは思う。    
 

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