カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

制裁

2005-10-19 16:36:44 | 行動
 「制裁を加える」と言うと何か政治的なニュアンスで捉えられるかも知れない。しかし約束事や決まりを守らないと時として制裁を加えられる事もある。それが国際レベルになると戦争へ発展してしまうのだろう。

 もうすっかりレギュラーになってしまったいじめられっ子一家の続報である。この家族の行動は本当に面白い。他にこんな家族は見た事がない。 水飲みボソ一家とはまた違った良さがある。

 相変わらず出戻り雛は親の縄張りを頻繁に出入りしている。縄張りにいない時は数百メートル離れた住宅地や商業地にいる。カラスにとって非常に都合の良い状態のゴミステもあるので食べる物には困っていないようである。見た目も痩せていないし羽の色艶も良好だ。

 ある朝の出来事なのだが、親といじめられっ子が地面をうろうろと歩き回っていた。その時出戻り雛が入って来た。親はすぐに気が付いたようで出戻り雛のいる近くへ飛んで行き様子を見ている感じだった。出戻り雛の方は親の姿を見た途端に「おねだり」を始めたのである。最初は親も無視していたのだが、おねだりの声を聞くとホルモンの関係なのか未だに給餌したい衝動に駆られるらしい。貯食しておいた食べ物を発掘して少し低い枝へと移動した。その姿を追うように出戻り雛も移動して来た。そして羽をバタつかせながらより激しくおねだりを始めた。給餌したい衝動に駆られているのはやはり♂の方だった。♂が出戻り雛へ給餌しようとしたその瞬間に物凄いスピードで一羽のカラスが飛び込んで来て、雛を蹴り飛ばしたのである。そのカラスは♀の方だった。出戻り雛は「カァーアッ!」と叫びながら縄張り外へ飛び去った。
 
 いじめられっ子時もそうだったが♀は厳しく♂は甘いのである。最後の最後まで給餌をしていたのは♂の方である。いじめられっ子が独り立ちを出来ずに繁殖期を迎えた年に「赤ちゃん返り」してしまった時も積極的に給餌に励んでいたのも♂だった。♀はおねだりをされても無視するかあまりしつこいようなら威嚇鳴きをして追い払っていた。ただ今回の出戻り雛といじめられっ子では状況が違うだろう。いじめられっ子は冬目前まで全く飛べなかったが、出戻り雛は足がそっくり返ってはいるものの生きていく上でほとんど支障がない。この辺りの事情が関係しているのではないだろうか?

 いじめられっ子に関しては特に追い払う気配はなくたまに食べ物の取り合いで軽く蹴りを入れられる程度である。いじめられっ子自身も逃げるような事はしない。先日変化があってから今まで鳴き声というものを出さなかったのだが、違う場所でブトの威嚇鳴きなどが聞こえるとちゃんと鳴くようになった。大躍進である。

 時々若ガラスが数羽縄張り内に入って来る事がある。その時はいじめられっ子も優位に立っている。若ガラスはいじめられっ子が食べている物が欲しくて近寄ると威嚇をするのである。数年前までは輪になっていじめられていたとは思えない勇ましさである。こんな感じで気の合う仲間が出来たらちゃんと独り立ちが出来るかも知れない。先日の感じから行くと♂かも知れない・・・・・・確信はないのだが。

画像:出戻り雛(ハシブトガラス)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする