B&B&B

回り道を全力疾走

豚の屍を越えていけ

2008-10-18 02:11:59 | 未分類
そういえば、一時期『俺の屍を越えていけ』というRPGゲームにはまったことがある。

主人公が余命が2年となる呪いをかけられ、主人公が次々と死んでいくのだが、死ぬまでに女神様らとひたすら交わってより強い子孫を作っていくことで、強い敵を倒していき呪いを解く。
というストーリー。

まぁ、そんなこたぁどおでもいい。





今日、独自企画の『ピッグがポークになるところ』見学に行きました。始めは和NiGiRiのメンバーで行こうと思っていたのですが、平日ということもあり、皆さん都合が悪いようでした。
それでも、どこから聞きつけたのか、他大学の7人が一緒に行きたいということで総勢8人で、市の管轄である全国に10箇所しかないという食肉衛生検査所に行きました。

施設内は、これでもかというくらいきれいなところで、出来立ての病院を思わせるものでした。BSE問題からは特に衛生や検査が厳重になり、隅々まで配慮がしてあるようです。

1時間ほど衛生士の方の説明を受け、とちく解体現場を見せてもらうことに。

見学も、衛星の観点から完全に別部屋からのガラス越しの見学。
よくニュースとかでもあるように豚や牛が吊り下げられて運ばれる光景がそこにありました。(吊り下げることでより衛生的に保たれるという)

殺して血がドバーっとでるところから、手作業で皮をはがし、首を切り落とし、内臓をえぐりとるところなど、見ましたが、僕はある程度は映像で見たことがあったためそこまで衝撃的ではなかったですが、それでも獣のにおいと、動物の叫び声、ライブ(生)でしか味わえない空気がそこにはありました。

とちくうんぬんよりも、包み隠さず見学させてくれるこの施設の方に一番驚きました。

但し写真は禁止で、せりの会場くらいしかOKが出ませんでした。

これは職業差別の問題で、作業の方の顔が映ると困るからだそうです。

(そこには深く納得)

とさつ現場の見学はもちろん興奮しましたが、それ以上に楽しかったのは衛生士の方の裏話で、BSE検査がいかに無駄な作業で、これこそ税金のムダ使いだということを専門的なデータと技術者の知識をもって説明してくれました。

とさつはとさつ法によって法律で検査等が定められており、これに該当しないのが、いのしし、鹿で、これらは検査無しでさばいて食べれる。
それだけに怖い。

きちんと肉の隅々まで検査する豚、牛に比べ、鶏肉は危険度が増す。
単価が安く、数量も多く小さいためザッとしか検査しないらしく、鳥刺しなんかは免疫力の低い老人や子どもには絶対に食べさせないほうがいいと。

あと、家畜は結構病気もちのものが多く、興味深かったのが、『高度の水腫』という症状で、肉牛は高級な霜降り肉にするためにあえてビタミンAを欠乏させるような食事を与えるそうです。そこに濃厚飼料を与えることでうまくいけば最高級の霜降りの出来上がり。
失敗すれば、廃棄処分となる高度の水腫の肉ができる。

ある意味、生物を使ったギャンブルだ。


特にかっこつけるわけでもなく、引け目を感じるわけでもなく、ただ事実をそのまま伝え見せようとするその施設に、迷いの無い職業観なるものを感じました。

殺す人も、さばく人も、検査する人も、皆職人でそこには『動物を殺してかわいそう』(当然ながら僕はそんなことは考えませんが)なんて奇麗事を考えたり言ったりする雰囲気を与えさせないものでした。

食を楽しむために行なう水面下の仕事。
決して表舞台には現れないが、肉を好む人間には無くてはならない『とさつ』という仕事

理想と現実とを割り切って、牛を手で殺しながらも肉を食べるその生き方に自然の中で生きる生物としての器の大きさを感じた。


命の重さは愛情の大きさ。

愛情抜きにただ肉として無理やり育てられた命は軽く扱われる。

そこに少しでも愛着が発生すれば、殺せなくなるだろう。



今回の企画の自分なりの落としどころは難しかった。
消費者視点か、生産者視点かとさつ業者目線か、家畜目線か。
切り口はいくらでもある。

僕は、結局落としどころをとさつ業者目線で行なった。

楽しく安心安全な食をサポートする、難しい現場で働くことの感動と衝撃でとりあえず今日は幕を下ろす。



その後、かみさんとマックにいって食べたり、
しかちゃんと黒豚食べたりして楽しい食の空間を満喫した。




現実から目をそむけず豚の屍を越えていこう。