没落屋

吉田太郎です。没落にこだわっています。世界各地の持続可能な社会への転換の情報を提供しています。

キューバ農業を評論する

2010年08月09日 23時50分11秒 | インポート

評論家という肩書を考えたわけ
 ブログの続きです。この「評論家」という肩書について、さる知人から「キューバ農業と21世紀の日本の農研究所代表」という肩書はどうか、というアドバイスをいただきました。

 とはいえ、それはあまりに重すぎる肩書です。まず、私は学術研究者ではありません。市民活動家でもありません。このブログをはじめ、いささかの活字は書いていますが、それだけで生計を成り立たせているわけではないので「著述業」という肩書もあてはまりません。

 有機農業にはかなりの思い入れはありますが、熱烈な「信者」というほどでもありません。日本農業も広すぎて研究するだけの力量もありません。

 「キューバ農業アジテーター」というのも、いいかなとも思っていますが、アジテートするだけのカリスマ性もありませんし、活動や運動論に熱意もありません。どちらかといえば、「真実を知りたい」という個人的オタッキーな趣味の延長線上でやっています。そこで、「評論家」。少し古くはなりますが、筒井 康隆氏の小説に「俗物図鑑」というのがあり、盗聴、横領、出歯亀、放火、カンニングなど多様な「評論家」が登場しています。ということで、「評論家」でお願いします。



お願い

2010年08月09日 23時22分51秒 | キューバの農業
 このところ、ブログ更新をすっかりサボっています。予定外の授業が入ったり、試験に落第した生徒の再リポート用の基礎資料を作成したり、色々と忙しいかったためです。

 さて、久しぶりにブログを見ると、「農夫」氏から、「ばかかあんた!共産主義者が農大の先生ですか?あんた農業したこと無いだろう。うちに来て1年働いてみろ。考え方が180度変わるぞ」とのコメントを寄せていただきました。
どのような方か、ネットで検索したところ、「極左集会で長野県の公務員が講演:イザ!」というサイトが見つかりました。

「こんな共産主義者が農大の先生だなんて。コメント欄で一括【一喝か?】しときました」

 という方が該当するのではないかと思います。この件については、先日も学校側からお叱りを受け、反省したところですが、若干誤解を招いている点もあると思うので、この場を借りて「釈明」させていただきます。

私は共産主義者ではありません
 第一は「共産主義者」として、「偏向思想教育を」行っているのではないか、というご懸念です。私は「共産党の党員」ではありませんし、恥ずかしながら、マルクスもレーニンの著作も一切読んだことがありません。「赤旗」も取っていません。では、なぜ、私は、昭和天皇を侮辱するが如き、かかるポスターの講演に出演したのでしょうか。実は、このような画像に講演内容が掲載されていることについては私を招聘した「キューバ連帯の会」も知らなかったのです。勝手にリンクが張ってあったのです。ネット社会の怖さです。

私は農業は一応体験したことはあります
 第二に、「農業をやったことがないのではないか」との点について。長野という農地に恵まれた絶好の環境に居住しながら、恥ずかしながら今はまったく農業をしていません。

 以前に都内で暮らしていたときには、自分で山を切り開き、開墾した7aほどの小さな畑で自家野菜はほとんど作っていましたが、今は鍬を捨てています。というのも、忙しいからなのです。

 キューバをはじめとする情報発信は、「趣味」と「道楽」でやっています。とはいえ、この道楽もかなり「世間性」を帯びています。メール・アドレスを公開しているため、読者からのメール等での問い合わせも多くあります。この回答は、公務時間以外にやるしかないのですが、真面目に答えたりしていると、たちまち深夜をすぎてしまう。以前は、かなり睡眠事件を削ってもなんとかなっていましたが、最近は歳を取ったためか、体力も落ち、睡眠不足が翌日にひびくようになってきました。畢竟、土日に集中して作業をすることとなります。堕落といえば堕落ですが、結果として、土から離れた生活をしています。

 また、「一年という単位で仕事をすれば180度世界観が変わる」との御示唆ですが、おそらく、「染み付いた世界観は変わらない」と私は思います。というのは、大学院生の時ですが、かなり長期にわたり、日本を代表する埼玉県の有機農家、金子美登氏の下で研修をさせていただいたことがあるからです。

 美登氏は一方的な押しかけを不快に思うこともなく、快く受け入れてくれました。とはいえ、研修評価はかなり低く「君は農業には向いていない。はっきりいって迷惑だから出て行ってくれ。とはいえ、親から学費をもらって大学まで出してもらったのだろう。せめて、学んだことを私ども農民の役立つことに役立てて欲しい」と言われたのです。

 「そこまでは、言っていない」とその後、美登氏は笑っておっしゃられますが、少なくともその時には私にはそうとしか解釈しようがなく聞こえたのです。

 同期に研修していたK君は立派な有機農家として自立していますが、それにひきかえ、体力もなく、段取りも悪く、先を見通す力もない私は、いつも、邪魔ばかりをしている迷惑な存在であるとしか思えなかったのです。そこで、「せめて農業に関係する仕事を」という金子師匠のアドバイスにしたがって、農業関係の自治体技術職員となることとしたわけです。

農業大学校の教育には問題がない
 さて、このように書くと、「ペーパーテストだけで、そのように能力も低い人間が、公務員試験に受かってしまい、農業大学校の教授という職についていて大丈夫なのか。それこそ税金の無駄づかいではないか。能力なき人間は首にすべきではないか」と御懸念されるかもしれません。「デモシカ先生」という言葉がありますが、「先生にでもなるか」ではなく「先生にしかなれない」というわけです。

 ですが、ご安心ください。県の人事制度はそれほどアホではありません。我が長野県農業大学校には、農業改良普及員や農業試験場等でしっかり現場体験を積んできたベテランの教師陣が学生指導にあたっています。

 私が行っているのは、「生物学」「情報処理演習」とメインの農業とは関係ない授業だけです。生物学では進化論は教えていますが、そこには右翼も左翼思想も入る余地はありません。情報もワードやエクセルの操作方法が中心です。そして、私の中心となる仕事は「教務事務」です。生徒の出欠席のチェック。健康診断のチェック。成績管理。授業日程の調整、外部講師との調整等、学校運営には欠かせない大切な仕事ではありますが、基本的には生徒への「思想的影響」が少ないものばかりなのです。

 最も「地球を救う新世紀農業:アグロエコロジー計画」では「農業英語」を担当していると書いています。ですが、これは昨年度までのことです。優秀な外部講師がこの春着任したため、ピンチヒッターとしての私の役割は終わっています。したがって、「横文字経由」で偏向極左思想文書を読ませる機会もありません。

キューバ評論家という肩書きを使って欲しい
 さて、キューバは共産党が政権を運営していますが、本当に共産主義国か、というとそれよりも、愛国主義(パトリオティズム)の要素が強いのではないか、と私は思っています。

 私がキューバに共鳴を覚えるのも、マルクスやレーニンではなく、ホセ・マルティの愛国思想と世界性です。キューバ人もそれをわかっており、例えば、キューバでミゲル・バヨナ氏が新たな人に私を紹介するときには、必ず「彼は共産主義者ではないが、マルティの敬愛者だ」と説明しています。
 「なぜ、そう思うのか」とミゲル氏に聞いたところ、「あなたは、マルティが、マルティが、とマルティが語った人間の尊厳についてはよく口にされるが、マルクスの言う階級闘争とかの左翼用語を口にされたことがないから」との答えが返ってきました。
つまり、キューバも私の考えをわかっているのです。

 とはいえ、今回の件で、大変な誤解を招いたことは事実です。

 以前に、講演等で、本農業大学校の校長に相談したところ、次のようなコメントをいただいたことがあります。

「吉田君が個人的に興味を持って時間外にやっていることを禁じることはできない。とはいえ、例えていうならば、釣りキチが土日に釣り道楽にはまるあまり、釣り愛好家から、フィッシングについて話してくれと頼まれているようなものだ。話すことはかまわないが、それを農業大学校教授という肩書きで話すことは筋違いというものだろう。まして、本校においては有機農業の講座もなければ、貴君はそれを担当もしていない」

 まことにご指摘のとおりです。

 このブログやホームページでも書いてきたように「長野県農業大学校」というオフィシャルな肩書きとは、努めて「切り離す」よう努力はしてきたつもりですが、著作を含め、私の軽率な所作が、今回のような「誤解」を招いてしまいました。

 つきましては、今後、長野県農業大学校という「肩書き」は、すべて排除し、誤解のないよう努めていく旨を、先日、本校副校長並びに事務局長にも報告したところです。

 とはいえ、今後も「講演等」の依頼がある場合には、「評論家」として、公務にさしつかえない範囲で、時間がゆるす限り対応させていただきたいと思っています。役立つことであれ、役立たないことであれ、こうした情報発信が、せめて研修指導をいただいた恩師、金子美登氏への恩返しだと信じているからです。極めて個人的な思い入れではありますが、よろしくお願いいたします。