窓に映った部屋 

小さい頃、叱られては、窓に映った部屋に逃げたいと思っていました。同じ部屋なのに別世界に見えて。

おかぐら

2004-08-10 14:08:27 | 日記(カテゴリ外)
あまのじゃくな性格で、休日出勤が好きだ。
休日のオフィス街は建物も道路も、本来の容量を遥かに下回るモノだけを抱いて、余裕ありあまるところがものすごい贅沢感だ。

もともとこの時期、だんだんとこの街はスカスカになっていくこともあって、普段の日曜よりももっと静かなかんじだ。

そんな折に、夏祭りなのか、おみこしの一団が通過していったりして、それもちょっと嬉しかった。そして「和もの」関連で思い出したのが、

お神楽

もう4年くらい前になるのだろうか、その朝私は彼氏の部屋で目覚め、
隣でまだ眠っている人を眺めた。自分が先に目覚めたとき、片ひじを枕について自分の頭を持ち上げて、隣の人を眺めるのが当時の癖だった。

そうして眺めて、幸福感に浸るのかといえばそうでもなく、ただ鼻や口もと、まぶた、髪の毛、背中、手…もう少し下までを眺めて、この人は本当の本当のはどんな人なんだろう、これから自分たちはどうなっていくだろうと考えをめぐらせていた。そうしているときは、得体のしれない不安感とせつなさが自分の胸をしめあげるのだが、頭の方はその行為を必要としていた。

その日もしばらくそうしたあとで、眠気に勝てずにウトウトとしていたら、外の方から太鼓と笛の音が聞こえてきた。
「ああ、お神楽が聞こえる」
起きているか起きていないのかわからない相手に、それほど大きくない声で言ってみた。相手は起きていたようで、予想よりもしっかりと同意の返事をした。

私は懐かしむべき故郷の神楽の音などもっていない。神楽と書いて「かぐら」と読むことだって学校か読書で得た知識だ。それでも太鼓と笛の音が嬉しく、また不思議と「お」をつけたくなって「おかぐらがきこえる」と言ったのだった。

言いながら、「岡ぐら」と聞こえてしまうかなと思ったが、隣にいた人は何の注釈も必要とせずに頷いてくれた。

私は、(ああ、この人は神楽が読める人だったんだ)と嬉しくなって、そのまま寝入ったのだった。

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