遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』13.「なが・みじか ちんばの番附」

2024年03月20日 | おもしろ古文書

面白古文書『吾妻美屋稀』の13回目、「なが・みじか ちんばの番附」」です。

長い方(上欄)と短い方(下欄)を競わせています。

今回の面白対決は、これまで紹介してきた対決よりも、上欄、下欄の対応がはっきりしているので、上欄(長)と下欄(短)を対で示します。

「なが・みじか ちんばの番附」

右半分と左半分に分けて載せます。

勧進元 京 山鉾の真木
差出人 大阪 だんじり引人気

 長いかた(長) 
 みじかい方(短)

大関
(長)ごくらくのミちのり(極楽の道のり) 
(短)しやかによらいのかミのけ(釈迦如来の髪の毛) 

関脇
(長)ゑどまでとゞくお市のけ(江戸まで届くお市の毛)
(短)びつくりしたきんだま(ビックリした金玉)

小結
(長)いぬのしり津ぎ(犬の尻つぎ)
 【犬の尻つぎ】犬の交尾結合、4、50分続く 
(短)とりのいろごと(鳥の色事)・・・天敵に襲われるのを避けるため、一般に短い(スズメで1,2秒) 

前頭 
(長)せんごくぶねのほばしら(千石船の帆柱) 
(短)三十こくのかしふとん(三十石の貸布団)
【三十石船】淀川を往来して、大阪ー京都間で多くの人を運んだ船。船内で、火鉢や布団を貸し出した。 

(長)よまいぼしのふんどし(四枚干しのふんどし) 
(短)ゑつちうふんどし(越中フンドシ) 

(長)よたんぽのとこ入り(よたんぽの床入り)
【よたんぽ】酔っぱらい 
(短)いろざともんびのせんかう(色里紋日の線香)
【色里紋日】遊郭で花代が倍になる特別の日。【線香】色事。 

(長)江戸仕立大つうはおり(江戸仕立大つう羽織)
【大つう】遊里の事情や遊興の道によく通じている人。【江戸仕立て】江戸人の好む着物の仕立て方。 
(短)ちんづきつきのづきん(賃搗つきの頭巾)
 【賃搗つき】賃搗屋。杵、臼、蒸し器などの道具を持参し客の家に出向き、台所を借りてもち米を蒸し、家の前で餅を搗く商売。 

(長)かねもちのわげ(金持ちの髷)
【髷】まげ 
(短)やつこのつぶわげ(奴のつぶわげ)
【つぶわげ】無造作にねじって巻き上げた髪。 

(長)太夫道中のかさのゑ(太夫道中の傘の柄) 
(短)まハしおとこの丁ちん(回男の丁ちん)
【回男】遊郭で、遊女や芸妓の送り迎えや雑事をする男。 

 

(長)でがらしたものヽはな(出涸した者の鼻)
【出涸した者】面白みのない人 
(短)おたふくのはな(お多福の鼻) 


(長)女郎のむしんしやう(女郎の無身上) 
(短)かねつかふ手代(金使う手代) 

(長)でつちのじやうだん(丁稚の冗談)
(短)せつきのぜに(節季の銭)
【節季】盆と暮れの年二回の決算期、借金もこのとき精算された。 

(長)こヽろなしのひるね(心無しの昼寝) 
【心無し】思慮分別のない人 
(短)あさがほのさかり(朝顔の盛り) 


(長)へたのながだんぎ(下手の長談義)
(短)上手(じょうず)のおとしばなし(上手の落し噺)

(長)とこずれのできたびやう人(床ずれのできた病人) (短)やふゐしやのわきざし(ヤブ医者の脇差) 

(長)むまのおちん(馬のおちん) 
(短)そうかのとこ入り(総家の床入り)
【総家】上方で、路上で客を引いた最下級の売春婦。夜鷹。 

(長)かめ井の水のしやくのゑ(亀井の水の杓の柄)
【亀井の水】大阪、四天王寺亀井堂にある湧き水。汲むのに長い柄杓を使う。 
(短)ほうのうの手ぬぐひ(奉納の手拭) 

(長)ミやのまへの大こん(宮の前の大根)
【宮の前大根】大坂天満の天満宮鳥居前で栽培されていた長大根 
(短)てんわうじのかぶら(天王寺の蕪) 

(長)いなかものヽくわんざし(田舎者の簪) 
(短)せちめんたび乃つヽ(せちめん足袋の筒)
【せちめん】ケチくさい 


行司
(長)唐うちわのひも(唐団扇の紐) 
(短)とびつきのたち合
【飛び付き】前相撲で仕切りをせずにいきなり立ち合って取り組むこと。前相撲や前相撲力士のことも「飛び付き」と呼ぶ。 

 

頭取
(長)とうぼうさくのいのち(東方朔の命)・・・ 
中国、前漢の文人、東方朔は、西王母の桃を盗んで食べ長寿を得たという伝説
(短)につぽんじんき〇(日本人き〇) 

(長)三十三間堂のむな木(三十三間堂の棟木)・・・長さ117mの巨木が使われたという
(短)りきしのせい(力士の背)

(長)くすのきのらうじやう(楠木の籠城)・・・
楠木正成は千早城で3ヶ月の籠城戦を戦い抜き、20万の幕府軍に対し千人の兵で勝利した
(短)たいかうの城ぶしん(太閤の城普請)・・・豊臣秀吉による短期間での築城 

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面白古文書『吾妻美屋稀』12.「芝居好旅ず記 へんくつ論」

2024年03月18日 | おもしろ古文書

芝居好き(上欄)と旅好き(下欄)が、自分たちを褒め、相手をやっつける、かけ合い口論です。

横書きブログでは、上欄、下欄の配置をこのまま書くのは難しいので、先回と同じく、上欄、下欄を4分割して載せます。

読者各位で、上下を突き合わせてみてください。最後の欄などは、上下の内容が対になっていて面白いです。

「芝居好旅ず記 へんくつ論」

 

○芝居ずきのいふにハ

・芝居をミれバ物知りになつて 一生のうちに徳多し

・よし野高雄の花も紅葉も しんどなしにミる道具立

・二の替りハかんばんの花やかさ これより芸めく物が有らふか   【二の替り】江戸時代、京坂地方の歌舞伎で、顔見世興行(十一月)の次の興行。十二月下旬より始まった。

・女子の旅やつれ日にやけた 顔にハ三年の恋もさめる

・野道のにハか雨にあふとき 雨具のないは見ぐるしいもの

・山坂のなん所をこうりめし一トツ たよりとは心ぼそいもの(山坂の難所を行李飯一つ頼りとは心細いもの) 【行李飯】携帯に便利なように、竹で編んだ容器に入れた飯。

・幾日も/\川どめやふね乃 風まちたいくつにあらふ(幾日も/\川止めや舟の風待ち、退屈にあろふ)

・芝居へつれて行といへば 子どもがやいとをすへる

・こんにも叶はぬ遠道にうまれも つかぬのにちんばひく人(今にも叶はぬ遠道に生れもつかぬ野にちんば引く人)
  【今(こん)】本日 、【生れもつかぬ】事故・病気などで障害をもった

・なぐさミの旅へ出て馬駕籠ニ よふたもくるしいものじや(慰みの旅へ出て、馬駕籠に酔ふたも苦しいものじゃ)

・船に乗るから小便をめんじる 女子の心づかひは気のどく(船に乗るから小便を免じる女子の気遣ひは気の毒)

 

〇旅ずきのこたへにハ

・可愛子には旅をさせいといふ たとへありてたびハ身の為なり

・ぶら/\した銀箔の置いた月で 須磨あかしのけしきかなふか(ブラブラした銀箔の置いた月で、須磨明石の景色叶ふか)

・長閑なそらに伊勢まいり はるのたのしミハ是が第一(長閑な空に伊勢参り、春の楽しみは是が第一)

・湯治西國大和めぐりの留主見舞もあき内のかね(湯治西國大和巡りの留守見舞も商いの金)

・本あめ水ぶねのきやうぶんに むしろかづくも見ぐるしい(本雨水船の凶聞に、莚かづくも見苦しい)

・芝居でハ弁当くふ間もをしミ まヽより好とはなげいた事(芝居では、弁当喰ふ間も惜しみ、飯より好とは嘆いた事)

・モウ初まるか /\とまつて居る 初日の幕もはてしないもの

・國ゞのめずらしい名物名産 ミやげにすれバ人の賞観

・芝居ゆきの女子ハちょこ/\ はしりする風俗のわるさ(芝居行の女子は、ちょこちょこ走りする風俗の悪さ)

・気ばらしにミる芝居の中で 気をつかして難義するもの

・長い場のまくのしまるまで 小べんこらへる人も気のどく(長い場の幕の閉まるまで、小便こらへる人も気の毒)   

 

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面白古文書『吾妻美屋稀』11.「のみ升よひ升 酒問答升づくし」

2024年03月16日 | おもしろ古文書

久しぶりの面白古文書です。

以前にブログに紹介していた『吾妻美屋稀 五編全』の後半を順次アップしていきます。

『吾妻美屋稀 五編全』24丁、嘉永四年。12.1㎝x」17.8㎝。

今回は、「のみ升よひ升 酒問答升づくし」

酒呑みと酒嫌いが、それぞれ、一升から九升まで、狂歌を読みます。

上下で対になっている所もありますが、そのまま4分割してのせます。

酒のみ狂歌

・世の中に楽ミにのむ酒なれバ のんでくらすが壱升のとく(世の中に、楽しみに呑む酒なれば、呑んで暮らすが一生の得)

・極楽ハしま黄金と聞なれど さけなき國ハアヽなに二升(極楽は、紫磨黄金と聞くなれど、酒なき國はアヽ何にしょう)
   【紫磨黄金】紫色を帯びた純粋の黄金。

・雨風のよはをも何のいとひなく さけと聞たらいそぎ三升(雨風の、夜半をも何の厭ひなく、酒と聞いたら急ぎ参上)

・ならハねば諸芸する事かなふまじ 酒ばかりにハゐらぬお四升(習はねば、諸芸する事も叶ふまじ、酒ばかりには要らぬ御師匠)


・あひ押へ手元ミよふとむり酒を ひとつすけるも五升なりけり(相押へ、手元見ようと無理酒を、一つ助けるも後生なりけり)
  【助る(すける)】手助けする

・花のあした月のゆふべや雪のくれ のんでくらすでおもし六升(花の明日、月の夕べや雪の暮れ、呑んで暮らすで面白くしよう)
 
・身のほどを弁へてのむさけならバ 七升までのかんどうもなし(身の程を、弁(わきま)へて呑む酒ならば、七生までの勘当も無し)
【七生までの勘当】人はこの世で七回まで生まれ変われるという、その七回の生の極限までの勘当。未来永遠にわたっての勘当。
 
・陶淵明李白がやうに酒のんで すゑの世までも名をバ八升(陶淵明、李白が様に酒呑んで、末の世までも名をば発祥)
 
・酒のんでいからずなかずきげんやう わらひ上戸をふ九升といふ(酒呑んで、怒らず、泣かず、機嫌よう、笑ひ上戸を福祥と言ふ)
  

・長命の薬ともなるさけなれバ 楽しミてのめせけん壱斗(長命の、薬ともなる酒なれば、楽しみて呑め、世間一統)  【世間一統】世間いたるところ

 

酒ぎらひ狂歌


・長命の薬になるか知らねども のまずにくらす人も壱升(長命の、薬になるか知らねども、呑まずに暮らす人も一生)


・呑ときハ口に辛く酔つぶれ 苦しきものをアヽなに二升(呑む時は、辛く酔いつぶれ、苦しきものをアヽ何にしよう)

・酒のんでめうと喧嘩の挨拶に おたのミならバ急ぎ三升(酒呑んで、夫婦喧嘩の挨拶に、御頼みならば急ぎ参上)

・若い衆の酒をものまずその身をバ つヽしむ人ぞ四升なりけり(若い衆の、酒を呑まずその身をば、慎む人ぞ殊勝なりけり)

 

・酒ゆへに身を持くづす人あらば ゐけんしてやれ是も五升ぞ(酒故に、身を持ち崩す人あらば、意見してやれ是も後生ぞ)

・すけませふお合いたそとのミ過し 後ハまなこをしろく六升(助ませふ、お合いたそと呑み過し、後は眼を白黒くしよう)

・我(われ)人も色と酒とにくすおれバ これ七升のかんどうのたね(我人も、色と酒とに頽おれば、これ七生の勘当の種)【七生の勘当】前述

・呑過し喧嘩口ろんなげうちを すれバ悪名世にも八升(呑過し、喧嘩口論投打を、すれば悪名世にも発祥)
  【投打】物を投げつけて相手を打つ

・上戸にも笑ふもあれバおこるあり しかしいやなる物はな九升(上戸にも、笑ふもあれば怒るあり、しかし厭なる物は泣く性)

・酒のミといへども多くそのさけに のまるヽ人ぞ世間壱斗(酒呑と、言へども多くその酒に、呑まるヽ人ぞ世間一統) 【世間一統】前述 

 

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古面50 南方の面3 のんきな父さん

2024年03月14日 | 古面

この面も出自不明です。全体の様子から南方系と考えました。

幅 12.4㎝x 長 27.5㎝ x 奥 8.1㎝。重 680g。産地不明(南洋諸島?)。20世紀。

裏側に彫りが無いので、面とは言えないかもしれません。かといって、像でもない。

大きな目と鼻、口。愛嬌のある顔です。

この素っ頓狂な木彫りは、どこかで見たような・・・・けれども、どれだけ図録を繰っても出てきません。

マンガに登場したキャラクター?

それとも、いわゆるデジャブでしょうか?

憎めない表情から、「のんきな父さん」と名付けました。

分厚い板を彫っています。横はそのまま。

顔は、良く彫られています。滑らかに処理した後、黒漆のようなものを塗ってあります。

口の中も、なぜか、きれいに磨かれています。

チョコンと立ちます。

何か言いたそう。

なになに・・トイレ美術館の方がいい!?

そんなわけで、ここに納まりました。

 

 

 

 

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五年越し、能管「真の寝取り」が上がりました

2024年03月12日 | 能楽ー実技

コロナで、能もすっかりご無沙汰でした。

遅まきながら再開して半年、ようやく能管の難曲が上がりました。コロナでの中断があったとはいえ、五年もかかってしまいました。

「寝取り」とは、能楽の笛の特殊な奏法の一つです。「寝取り」には、「真の寝取り」、「恋の寝取り」などがあります。

今回の「真の寝取り」は、小鼓とともに演奏される場合は、「置鼓」ともよばれます。翁付の能や老女物の能の始まり、ワキの登場の場面で演奏されます。

笛方にとって、重い習い事で、いわば一子相伝の秘曲です。師匠と私とは、丁度、親子の年齢差、でも一子相伝の親と子が逆転しています(^^; 

素人の手におえる曲ではありませんし、何かにつけ形式や慣習を重んじる伝統芸能界では、たいそうな手続きが必要です。が、そこは能楽界のヌーベルバーグ(古い言葉(^^;)の師匠、先の知れている私に一花咲かせるとの心遣いなのでしょうか、とにかくやってみようということになりました。

始めてみると、さすがに難曲、まず息が続きません。拍子が無いようで有るようで、つかみどころがない。さらに、緩急や間のとり方が難しい。特殊な指使いはもとより、口使い(そんな言葉はないのですが)も忙しい・・・・何とかのりきり、今日を迎えました(^.^)

よかったら、Youtube聞いてみてください。

 

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